借主が汚したかどうかに関係なく、リフォーム代金まで貸主負担が当たり前の状況だ。
「厳密にはおかしな話で、酷い家主になると通常の2倍3倍の
見積を出してきたりする。それでも借主が文句を言わなければ
それで済んじゃうんです」
改めて腹の立った人も多いだろう。フローリングの1カ所に
タバコの焼けこげをつけただけで全面修理費用を請求されたり、
ワンルームのクリーニング代として10万も取られたらボッタク
リ以外の何物でもない。
では、どういう手順で返済を迫るのが正解か。一般的に言われるのは、
①仲介の不動産業者に交渉
②家主宛に「敷金返還を請求します」と配達証明付き内容証明を郵送
③支払い督促
簡易裁判所に申請するもので、督促状に強制力はないが、それなりのビビらせ効果はある
④少額裁判(30万以下)
手続きも簡単で審議から判決も1日で終了。敷金は明け渡しから1カ月以内に返還する
義務があるので、期間外になれば遅延賠償金や年利ももらえる
⑤本裁判
具体例を知りたければ、インターネットで「私はこうして敷
金を返してもらった」などの体験記が山ほど見つかる。
「仲介物件なら、②の段階でカタがつくでしょうね。国土交通省のガイドラインをプリントアウトして見せるなり判例を準備するなりしておけば、業者側は自分たちが悪いのはわかってますから、適当な額で手を打ってきますよ」
さらに効果的なのが、不動産業者の免許を発行する行政機関の名前を出すことだ。
「大手業者は知事免許なんで各都道府県庁の住宅課に頭が上がらないし、中小の場合は各都道府県の宅地建物取引業協会の認可で開業してる。だから、そちらに言いますよって匂わせれば弱腰にならざるをえない。ヘタしたら営業停止、免許取消もありえますから。客の苦情で都庁に呼び出されたって話はよく聞きますし」
ただし注意したいのは、不動産の管理会社が入ってるケースだ。予め契約書に特約事項を設け、明け渡し時のハウスクリーニングやクロスの貼り替えを借主負担で行うなどと明記してあうたりする。
となると、たとえ「原状回復」
越えるものであっても、賃借が署名、捺印している以上、法上は有効な契約とみなされ
、裁判で争ったところで勝ち目はない。さらに通常の2倍もの修復見積を提示されても、約書の特約事項に「貸主の指業者による」などと書かれてれば、従わざるを得ないのだ
「それでも抜け道はある」とうのは、山根氏(仮名)だ。あるワザを使い、敷金を取り返したという。
「Tって大手の管理業者だつんだけど、50万入れた敷金が10万しか返って来なかったんだ契約書を読むと、確かに小さ文字でクロスの貼り替えや畳えも借主負担て書いてある。何か向こうに落ち度はないかしたら、これがあった」
賃貸借契約に際し、不動産業者は『宅地建物取引主任者』の
免許を提示することが義務づけられている。だが、山根氏が契
約したとき、担当者は免許を提示しないどころか無資格だった。
「免許を持ってる人間が1人いれば無資格の従業員を4人は雇
ってもいいことになってるんだけど、その事務所は壁に1人の
免状が貼ってあるだけで働いてたわけ」
敷金の返還交渉に出向いた彼がさりげなく宅建免許の話を振ると、担当者は明らかに動揺した素振り。そこで「宅地建物取引業協会が開業の免許を出すんだよね」と畳み込むと「少しお待ちください」と奥へ消え、すぐに20万安くなった見積書を出してきた。
「半分脅しみたいなもんだけど、大手はバカ高い手数料を取ってるんだから少しぐらい返してもらってもバチは当たらないと思ってさ」
次の引っ越しは、返ってきた敷金をアテにしているそうだ。