取材で夜遅くまで動き回り、ホテルの机で朝まで原稿作成。
翌日の起床は、当然昼過ぎだ。
いつもそんな調子だから、チェックインの際は必ず「昼まで寝たいので、絶対に起さないでください」とフロントに申し出ることを忘れない。
読者の中には、部屋のドアノブに掲げておけば事足りると思う方がいるかもしれないが、甘い。実際のところ『起こさないでくれ』といくら頼んでも、朝10時ごろになると、ズカズカと部屋に入ってくる掃除のオバチャンが少なくないのだ。
「絶対に起さないでください」
と念を押したにもかかわらず、翌朝、掃除のオバチャンが勝手に鍵を開けて部屋に入ってきた。安眠を邪魔されたオレは怒り爆発、すぐさまフロントに電話を入れた。
「いったいどういうことですか」
「大変申し訳ありません。当ホテルのミスです」
「ミスつたって…」
「掃除の業者とフロントで引継ぎがうまく行かなかったみたいで、本当に申しわけありません」
ひたすら謝る従業員に、少し気分が収まった。ただ、オレは一度起されるとすぐに寝つけないナーバスな人間。貴重な睡眠時間を妨害されることほど不愉快なことはない。改めてそのことをフロントに申し伝え、電話を切った。その日の夜遅く、外出先から戻ると部屋のテーブル上にワープロで書かれた支配人名義の詫び状が置いてあった。内容は従業員が言っていたこととほぼ同じで、清掃業者との引継ぎの不味さが原因とのこと.最後は「二度とこのよう
なことが無いよう厳重に注意いたします」で閉められていた。
ここまで丁寧な詫び文を寄越されては、もう何も文句は言う気はない。オレは別段クレーマーじゃ
ない。わかってくれればそれでいいのだ。
しかし…。
翌朝掃除のオバチャンが入ってきたのだ。ウソだろ!
さすがにオレはキレ、支配人を呼び出した.
「アンタ、人をバカにするのもいいかげんにしるよ!」・
詫び状を上ラヒラさせながら文句を垂れるオレに「申し訳ございません」と平謝りの支配人。そりゃそうだる。前日苦心して書き上げた詫び状を完全に否定することをやってしまったわけだから…。
「あのさ’、そうやって謝られても、もう遅いの」
「申し訳ございません」
「正直言って、これ以上いたくないんだよ。もう一泊する予定だったけど、今からチエックアウトさせてもらうから」
「あっ、いや…その」
「何か文句あるの?」
「いや…あの。それでは…」
支配人はしどろもどろになりながら、一つの提案をオレに示した。
2泊分の宿泊費を無料にするので、どうかご勘弁いただけないか、と。
正直、驚いた。オレとしてはキャンセル料は払わないぞ、ぐらいの気持ちでいたのに、それが宿泊代ダダとは。現金なオレは、すぐにその申し出を受け入れた。
もちろん、宿泊費などの経費はすべて出版社持ちで後ほど領収証で精算しなければならないのだが、これを正直に申し出るほどオレは目出度くない。領収証はどこかで紛失したことにして、きっちり2日分の宿泊費1万8740円を懐に入れさせてもらった。
また別の日
「起さないでください」をかけていたにもかかわらずオバチャンが入ってきて、オレがフロントに文句を言う。すると、
「大変失礼致しました。実はお部屋の方なんですが、少し広いタイプに替えてございます。料金はシングルのままで結構ですから、ゆっくりとおくつろぎください」
このことばに、例によって態度をコロつと変身。鍵を受取り部屋に入って見ると、なんとそこはシングルより加倍は広いであろうスイートルーム!こんな高級な部屋にオレー人で泊まっていいんだろうか。なんてことは微塵も思わず、オレは最初で最後かもしれぬスイートルームライフを心ゆくまで
オレとしてはホテル側が朝起こさずにいてくれれば、何らクレームを付けるつもりなどないのだ.そこをワケのわからない対応をするから…。
皆さんもホテル側に落ち度があった場合、遠慮せずにビシビシとクレームを付けた方がいい。