会話のタネ!雑学トリビア

裏モノJAPAN監修・会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

美人の色仕掛けで宗教に勧誘され入会させられそうになった話

高齢者に対して、息子や孫、親戚などを編り金銭を振り込ませるオレオレ詐欺。

警視庁のHPによれば、被害件数は東京都内だけでも963件を超え、被害総額
は6億7200万円にも上っているそうだ。
テレビや新間で事件が報道されるたび、僕は思い出さずにはいられない。似たような
手口で被害を受けた、あのときのことを。

それは今から5年前、僕がまだ実家のある千葉県市内の中学校に通っていた頃のことだ。
卒業式を間近に控えたある日曜日の正午過ぎ、1本の電話が自宅にかかってきた(こ
のとき、家族は全員出払っていた)。
「はい、椎名です」
「はじめまして、相沢と申しますが、椎名君はいらっしゃいますか?」
可愛い女性の声に、瞬間、僕はほくそ笑んだ。ひょっとしたら中学卒業を前に、告白
するための電話なんじゃないのか。
今となっては自分の馬鹿さ加減を笑うしかないのだが、僕は寝起きの頭をフル回転させて、電話先の〃相沢″と名乗る女の.を思い出そうとしていた。
え-つと、相沢、相沢…わかんねえ。
「ごめん、相沢さんって僕と会ったことあるつけ?」
「ごめんなさい。実は私、銚子市××中学3年の相沢って言います。○○中の友達に卒
業アルバムを見せてもらって椎名君に会ってみたいなって思って、電話したんです」
おお、ついに僕にも青春がやってきたか。思わず勃起したチンコは、早くも童貞喪失まで期待している。
しかも××中と言えば、仲間内では可愛い.が多いことで評判である。どうやら楽し
い春休みになりそうだ。膨らむ妄想に、僕は即答で会う約束をしてしまう。

当日。待ち合わせ場所のセブンイレブン前に、ジエルでツンッンに髪をセットし、イ
ケメン気取りの僕がいた。約束は午後2時。まだ30分以上もある。
しかし、そんな気合いをあざ笑うかのように、時間になっても相沢さんは現れない。
教えられた彼女の携帯にかけてみようとも思ったが、こちらのヤル気が見透かされるの
も癌だ。
時計を見ること数百回、約束から遅れること30分。待望の感触が右ポケットに伝わる。
すぐさま僕は、ポケットから携帯を取り出した。ディスプレイに〃相沢″の文字。よし!
喜び勇んで、携帯に出ようとした瞬間、なぜか電話が切れた。そして、それとほぼ同時に僕は信じられない光景を目の当たりにする。
コンピニのガラス越しに、1台のセダン車と、携帯を片手にこちらに小走りで近づい
てくる可愛い中学生.いや、婆さん

え?え?どういうこと?
「椎名君ですか」
中坊の僕に「違います」と答える勇気はなく、そのまま婆さんのセダン車に。
「じゃあ、皆さん待ってますから急ぎましょう。これから本部に行くからね」

本部?なにそれ?というか、あんた、何者?混乱しながらも、僕はまだ期待していた。だから、聞いてしまったんだ。
「相沢さんが本部で待ってるんですか?」
疑心たっぷりの質問に、婆さんはただ「着いたら話すから、今は急ぐ」などと暖昧に
返すだけ。うう、どうなつちまうんだ……。
30分ほど走っただろうか、車はとある古い雑居ビルの前に止まった。
「じゃあ、一緒に着いて来てください」
言われるがまま建物の中へ入り、教室のような場所まで歩を進めたとき、僕はすべてを理解した。
部屋の奥から聞こえる念仏。数珠を持ち座禅を組む数人の男女。間違いない。ここはど
こぞの宗教団体だ!
「これを持って、正座でお経を読んできて」
悪びれた様子もなく、婆さんが数珠とお経の書かれた紙を手渡す。そして奥の部屋へと手を引かれそうになった瞬間、僕の怒りは爆発した。
「ふざんけんなよ」
婆さんの足元に唾を吐き、数珠を放り投げ、僕は建物を後にした。

「実はこんな変なことがあってさあ」
翌日、学校の友人にコトの全てを話したところ、意外な事実が明らかになった。なん
と、同じ被害に遭ったという人間が、他にもたくさんいるというのだ。僕はただただ唖然とするしかなかった。
その後、この宗教勧誘は旭市内の中学生を中心に広がり、中には半ば強引に入会費1万5千円を支払わされた直接的被害者まで出現。学校内で勧誘の手口と対策について説明
会が開かれ、ようやく事は収集へと向かう。
オレオレ詐欺ならぬわたしわたし宗教に僕たち中学生は編されていたのである。

実は、この話には後日談がある。僕の通っていた○○中学はガラのいい学校ではなく、
ヤラれたらヤリかえせ″がモットー。男たちの情けなさに決起した我が枝の誇るレディース軍団が、ある男にわざと勧誘にひっかからせ、待ち合わせ場所に乗り込んだのだ。
といっても、殴る蹴るの暴行をくわえたワケではなく、現れた婆さんに「立ち話もな
んだから」とファミレスヘ連れ込み、好き放題に頼んだ注文の品を食い荒らしたところ
でバツくれたという、可愛いもの。聞けば、婆さんは宗教について熱心に語っていたらしい
彼女らにとって、宗教など、どうでもいい話。ざまあ〜みろってなもんだ。