会話のタネ!雑学トリビア

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ご注意!内職商法や悪徳商法の手口やり方

家に居ながら鶴を折るだけで金が稼げるとあって、専業主婦などにはもってこいの内職に思える。関西のある業者の場合、報酬は50羽を一本の糸に通して950円。月60本がノルマで、月収5万7000円にはなる計算だ。ところが、ここにちょっとしたカ
ラクリがある。まず、仕事をもらうには最初に登録料として3万円を払わればならず、しかも報酬は折った鶴が業者側の検品にパスした場合のみ。何度、納品したところで「規定のレベルじゃない」との答が返ってくるだけ。詐欺とまでは断定できないが新手の内職商法だ。在宅ワーカーを募り、仕事を斡旋するには①講習を受けてから、②専用機器が要る、③契約料が必要とお金を編し取る内職商法は、経済産業省の統計によるとパソコン系だけで7700件。前年より1割以上も増えており、被害者の約8割が女性で、その約半数が家事従事者、つまり主婦だ。平均契約額は約72万円に上るという。ここ近年、特に増えているのがパソコンを使った内職商法だ。被害額が大きいのが特徴である。神奈川県横浜市の塚田葉子さん(仮名)は現在、4才と2才の娘を持つ専業主婦。ミッキーマウスのトレーナーにジーパン姿はどこにでもいそうな子持ちの奥さんという印象である。彼女が新聞の折込求人広告に目をつけたのは、4月のことだった。「データー入力急募!月収10万円可。家のパソコンをネットサーフィンに使うだけなんて、もったいない!アナタもSOHOしてみませんか?誰にでもできて将来役立つ在宅PCワークです!」募集広告を出していたのは仙台のSという業者。ちょうど夫が経営する中古車ショップの業績が伸び悩んでおり、家計に暗雲が立ちこめた頃だった。
「お金を稼がなきやって思いはあるんだけど、子供がいるから外へは出られない。だったらウチにあるパソコンを使って仕事をしてみようかなって」
さっそくS社に資料請求すると5日も経たずにパンフレットが届いた。
『研修を受けて社内検定に合格すれば確実に仕事が来ます』
研修費用は総額で52万円。フツーの主婦には大金だが、研修を3カ月以内に終了できれば研修費用の80%が返金されるとの一文があった。
「ほら、よくテレビで宣伝してる英会話学校も似たような制度があるじゃないですか。てっきりアレかなと思って、勝手に皮算用しちゃってたんですね。返金されれば大したことない、月10万収入ならスグにプラスでしょって」
ソノ気になり始めた彼女の元へ、追い打ちをかけるように勧誘電話がかかってくる。
「今月はもうあと3人で研修の定員を締め切っちゃいますが、よろしいでしょうか」
押しつけがましさのない、さわやかな男性の声。どうせ稼ぐなら早い方がいいと決断した塚田さんは夫の許可を得て定期預金を一部崩し一括払いで契約してしまう。1週間後、届いた教材は、分厚い研修テキスト5冊と、5枚のCDROMさっそく意気込んでパソコンに向かってみたところ…。
「まず、研修テキストの文章を入力していくんですが、これがメチャクチャ長くてなかなか終わらないんです。やっと3カ月かけてクリアした後は、Sのホームページで問題に答えるんだけど、研修テキストには書いてない問題なんかがあって全然正解できない。さすがにこの状態が半年続いたときに、おかしいなと」
思い切ってS社にクレームを入れてみると「研修担当者がいない」だの「努力が足りない」だの、はぐらかされるばかり。たまりかねた塚田さんは、ついに地域の消費者センターへ苦情の電話を入れ、解約に向けて動き出す。が、すでにとき遅し。塚田さんが内容証明を送る直前、S社が倒産してしまったのだ。その後、破産管財人の弁護士などによって後に債権者集会などが行われたが、被害者が数千人に及んでいたため、均等分配された金はごくわずか。彼女の手元に戻ってきたのはたった1200円だった。「最初に何十万も払うなんて、ダマされる方も不注意じゃないの」そう思うかもしれない。世間知らずのお人好しなんじゃないか、と。しかし、話はそう単純ではない。塚田さんは、むしろパソコンに詳しい方だった。
「昔、リース会社でOLやってた頃、支店の顧客管理を任されてて、エクセルをバリバリ使ってたんですよ。だからラクショーで稼げるなあって思っちゃったんです」
自分はそこらの専業主婦より遥かにパソコンの知識もあるし、ブラインドタッチも余裕でできる。大金を先行投資したってスグに元が取れる。なんたって8割戻ってくるし…。この過信が警戒心を凍結させてしまった。実はパソコン系の内職で被害に遭った人の大半が有能でしっかり者だ。だからこそ、大金を一活で払ってしまう。ちなみに、この一括前払いが災いを招く。詐欺だとわかった時点で、ローン契約なら途中解約できるのに対し、一括払いは取り返せないことが多いからだ。
「分割でもいいかなって思ったけど、ローンの計算を自分でしてみたら、案外金利がもったいないことに気付いちゃって」
普通の主婦なら金利計算などせず、ローン契約を選ぶハズ。が、リース会社で働いた経験のある彼女は、金利を払うバカバカしさを知っていた。またしても知識が裏目に出てしまったのである。そして決定打は相手の居場所だ。普通、こうした詐欺業者は自分と同じ地域ではあまり募集広告を出さない。
「実はダマされたかなって気付き始めたとき、S社へ直接乗り込もうかとも考えたんですよ。だけど相手の場所は仙台でしよ。そんな旅費も時間もないし」
パソコンワークへの自信、しっかり者の性格、金融の知識、そして業者との距離。こうした一つ一つの要素が絡み合って塚田家の大事な52万円は闇へと吸い込まれていったのだ。「ウチに来る相談で多いのは、複数の業者に続けてダマされるケースなんです。だいたい2,3回ひっかかってますね」
そう語るのは、神奈川県を中心に活動する市民団体、サンフラワーの河合代表だ。彼は多重債務や悪徳商法被害等の生活トラブルを対象に相談や救済活動を行っている。
「単にその人らがダマされやすいというワケじゃないんです。ダマされた分のお金を取り戻そうとするから、次から次へ手を出してしまう。まさに悪循環ですよ」
同団体顧問でもあり、「解約どっとネット」なる被害者サイトを運営する林行政書士も口を揃える。その傾向に拍車をかけているのが、亭主に内緒で申し込んでしまうケース。内緒だから早くダマされた分を取り戻してチャラにしなければ…。そんな焦りが正常な判断を狂わせるのだ。業者の側もこのあたりを熟知しており、「旦那さんには内緒にしとけばいい」と勧誘する。そもそもこの手の勧誘マニュアル自体、主婦の事情や生活スタイルから逆算して作られたものなのだ。
「いままで最高で6件ひっかかっちゃった方もいます。総額で400万くらい取られてました」何度もダマされている人は、同じグループ内の業者からカモにされていることが多い。最近はその残党らが新たな詐欺に手を染めているという。1,2年経った後で「あなたはまだ検定に合格されてませんから、もし続けるのなら更新料を払ってください。解約するなら解約料をいただきます」などと電話で脅しをかけてくるのだ。他にも、被害者団体を弱って「ウチがアナタに代わって悪徳業者に話をつけて解約してあげるから、×万振り込んでください」なんて手口もあるが、現在、急増しているのがダミーの仕事を与え、少額の報酬を出して大金を吐き出させるやり方だ。