会話のタネ!雑学トリビア

裏モノJAPAN監修・会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

現代にも存在する海賊の実態生き方

海賊の文字からイメージする勇ましさはないが、漁師が略奪を始めたという海賊の起源にはふさわしい場所のようにも思える。
ホテルに腰を落ち着ける間もなく桟橋から漁船で小さな島に渡る。
ここが海賊たちのアジトらしい。
「お久しぶりです。よくいらっしゃいました」

A氏に付いて1軒の高床式の小屋を訪ねると、1人の男が出迎えてくれた。
紺のTシャツに迷彩色の短パン。
肩まで伸びた髪が後ろで一つに結んである。茶褐色に焼け過ぎた肌は、こちらでの生活が長いことをうかがわせるが、渋谷にいても何の違和感もない、いまどきの日本人青年だ。
「こちらへどうぞ」
取材の話はすでに通っているらしく、奥のテーブルへ案内される。
一見、なんの変哲もない小屋だが、隅の木箱にはマシンガンや刀が詰まっていた。
室内には日本人男性の他、現地1人のスタッフが3人。海賊というから強面の男たちを想像していたが、皆、人の良さそうな漁師といった風情だ。
「他の人たちはちょうど漁に出てるんで、気兼ねなく何でも聞いてください」
男の名は高田(仮名)・フィリピンに来て1年半になるという。
なぜ、彼がわざわざフィリピンで海賊をやっているのか。ゆっくり順を追って話してもらおうじゃないか。

日本で海賊って聞くと古くさいイメージじゃないですか。でも実際は、システマチックというかビジネスとして確立してるんですよ
船も日本製の中古にジエットボートのエンジン積んで、コーストガードと追いかけっこしても勝てそうだし、現地スタッフと日本人3人で、キッチリ役割分担も決まってる。
いつ、どこに、どんな船が来るって情報もボスが港湾関係者から入手してます。いや、こっちの公務員ってめちゃくちゃ給料安いから、金次第でほとんど融通してくれるんですよ。
襲撃はほとんど早朝で、停泊してるのを狙いますね。貨物船にピッタリ船を寄せて、ババババババってマシンガンで威嚇射撃する、早い話、オレたちは海賊だ、抵抗するなって知らせるわけですよ。
で、縄梯子をかけてよじ登り、乗組員たちを甲板に集めて後ろ手に縛り、口と目にガムテープを貼る。で、全員をマストにぐるぐる縛り付けるんですよ。まあ、ほとんど抵抗はないですね。
その間に、マシンガンを持ったリーダーが通信室に押し入り機材を破壊して、通信員がSOSを打電したかどうか確かめる。
「イエスかノーか?」
ノーの場合は時間をかけて、それこそ根こそぎ略奪しますね。運んでる荷物はもちろん、寄港地で使うために置いてる現金もいただく。あとは船内に設置してあるテレビとか電子レンジとか、食品が入ったままの冷蔵庫とか、乗組員たちの財布や時計も集めますね。
けど、これがイエスの場合は時間との勝負。コーストガードが来るまで最短15分間として、その間に作業を済ませなきゃいけない。
船長にマシンガンをつきつけて高価な貨物や金庫だけ奪うってのが一般的ですね。
まぁ太平洋とインド洋をつなぐマラッカ海峡は重要地ですから、他に貨物船はいくらでも通りますから欲張りは禁物です。襲撃が終わった後は、もう1隻が出迎え、奪ったモノはそちらに載せ替える。一方海賊たちは、網や竿などの漁業道具を携え漁師に変身。カムフラージュのため実際に魚を捕りに出かけるのだという。

実は、最初の襲撃はフィリピンについた翌朝だったんですよ。いきなりこの小屋に連れて来られて、夜明け前には船に乗ってました。
甲板でブリーフィングっていうか、今日はどこの国の船でどんな荷物が積んであり、どういう役割分担でいくって説明をしてたけど、まったくわからなかった。
だから、ぶっつけ本番ですよ。
現場に着いたら「おまえ、最初にいけ」みたいに体を押されて、おまけに中国人に見えるように「アーイヤー」と「マネマネ」しか口にするなって。もう、パニックでしたね。
で、せかされて梯子を登ったはいいけど何もできない。渡された青竜刀が重くて持ってるだけで手がガクガク震えるし、何がなにやらわからないうちに終わってた。
そしたら、次の日から、みんながオレのことチェリーボーイって呼ぶわけ。頭にきましたね。最低のあだ名じゃないですか。
で、考えた。ああ、真っ先に切り込み、帰りシンガリってことは、オレは盾というか特攻隊として買われたんだなって。だって、武器が青竜刀ですよ。撃たれたら終わりじゃないですか。
もちろん、イヤになりましたよ。
バックれたかつた。けど、もし日本大使館に駆け込んで強制送還されても、あの女の兄貴に半殺しの目に遭うのが関の山でしよ。だからって、マフィアにタテついてフィリピンに住み続けるなんて根性もない。

結局、約束の2年間は、ここでがんばるしかないわけですよ。

そう考えたら吹っ切れたというか、やる以上はベストを尽くそう、みたいな覚悟ができた。現地スタッフの中には軍人出身者が4人もいるんで、この際だから武器の使い方なんかも教えてもらおうかなんてね。

意外と順応性高いんですよ。他の2人はまだ青竜刀ですけど、オレ、サブマシンガン持たされてますもん。たぶんみんなに認められたのは半年経ってサムライって呼ばれるようになったときじゃない ですかね。ま、髪型のせいもあるんでしょうけど。 
ボスには40人の部下がおり、3隻の海賊船が週に1-2度のペースで稼働。それぞれに日本人が配置され、現在、10人ほどが海賊業に従事している。その中には、日本の某組でへタを打ち、日本全国に破門状が回された暴力団員もいるらしい。 
「グループ構成には気を配ってる ね。もしものとき、こういっヤツがいた、あんな人もいたなんてベラベラうたわれたら困るから、日本人を組ませるときは出身地や年令をバラバラにできるだけ共通の話題がなさそうな相手と一緒にや らせてる。みんな本名も名乗っちゃいねえよ」 
ボスと親しいA氏が説明する。 
「なか良くならないよう、様子を見て3、4カ月ごとにシャッアルしてるっていってたしな。ま、連中 にしたらここは刑務所と同じなん じゃないの」 
襲って 悪い船 いい船、 
フィリピンは日本の約8割の面積に7100以上の小島が連なる島国で、一説には毎日海洋で6件の強盗類似事件が発生していると もいう。 その数が表に出ないのは、荷物を奪われたことが不利に作用するかもしれないというビジネス的配慮によるものらしい。 
危ない目ですか?

うーん、特にないですね。だいたい狙うのが韓国とか日本船だから、相手、丸腰じゃないですか。おとなしいもんですよ。 ただ、襲っていい船と悪い船は判断してます。

絶対、襲撃しないのがアメリカとイスラエル船。国家的報復が怖いってのもありますけど、すっごく重装備らしいんですよ。へタに喧嘩を売ったらこっちがコテンパンにのされちゃう。 あと、フランスは自国意識っていうのか国家としてのプライドが高いから、やられたらそれ以上にやり返してくる。少なくともこの3国だけは間違っても襲っちゃいけないみたいですね。 逆にそれ以外なら国を問わないってとこがあって、この前なんかフィリピンの船を襲いましたよ。 さすが慣れてるっていうか、全然、 抵抗なし。簡単でしたねっ

そういえば、日本の海上保安庁が訓練に来ましたけど、意味ないですよ。だって自衛が目的で発砲できないでしょ。その辺は海賊連中も心得てるから、絶対、自分たちから撃たないもん。
あ、発砲で思い出したけど、去年、抵抗したヤシを撃ち殺したことがある。いや、オレじゃないですよ。リーダー。
中国船だったかな、1人バカでかい、アンドレ・ザ・ジャイアントみたいな黒人がいてリーダーに向かってきたんですよ。
最初、威嚇のためにそいつの足を撃った。普通、ひるみますよね。
だって肉がエグれて血がドクドク流れてるんだから。なのにそいつ、立ったまままだ歩いてくる。
で、バンと頭を撃ち抜いた。さすがにその場に倒れて、他の乗組員もシーンとなりましたけどね。あれは怖かったなぁ海賊の仕事は週に1〜2回です。
実働時間は準備も含めて2時間かからないんじゃないかな。
あとはアジトの島に帰って寝たりマシンガンの手入れしたり、時時ボスが本島に遊びに連れて行ってくれたりとか、そんな生活です。報酬ですか?借金をチャラしてもらう約束で来てるから、本来ならギャラなんてないんでしょうけど、襲撃の夜はお金もらえる
んですよ。1回やると日本のお金で平均400〜500万円になるとかで、オレにも何千円かくれるくいや、日本と違ってフィリピンのサラリーマンの年収が30万ぐらいですから、何千円でも凄い額なんですよ。
いま、オレ、タガログ語の勉強してるんですよ。やっぱり毎日顔をつきあわせてる人たちとコミュニケーション取れないのイヤじゃないですか。

まだ込み入った話は無理ですけ ど、日常会話ぐらいなら話せるよ うになりましたね。「おはよう」 とか「ありがとう」なんてね。

「あ、ちょっとこ相談したいこと があるんですが」 
突然、改まった様子でA 氏に話しかける。 
「オレ、あと半年で2年じゃないですか。でも、このままこっちで暮らせないかと思ってるんですけ ど・・」
帰っても自分にできるの はホストぐらいしかない。

ならばいっそのこと、フィリピンで嫁さんをもらい、海賊として生きて行きたい。
「いんじゃねえか。年期が明けりゃ、他の連中と同じように分け前もらえるしなc いいコ紹介してや ろうか?」 
取制の途中で50代と思しき男性が帰ってきた。青森川身だという彼は溜息混じりに言、っ。 
「オレは雪見でえなあ。住んでる ときはやっかいなもんだったけど、 雪みでえ」 
今年、フィリピンに渡った彼が 帰れるのは、再来年の春らしい。 
オレは本気ですよ。ここんとこ ずっと考えてたんですけど、心が決まりました

こっちに来た頃は シニガンって三度三度の食事に 出てくる酸っばいスーフが苦手だ ったけど、慣れましたしね

日本で派手な生活するくらいなら、こ の漁村で地道に暮らそうかと思ってます。あ海賊が地道ってこともないんですけどね(笑)。