会話のタネ!雑学トリビア

会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

ワンボックスカーのトランクで 夕方6時から5分だけ売られる高級時計やブランド品の正体

地元の大阪天王寺を歩いていたときに妙なクルマを見かけた。
︿高級時計 本日夕方6時より5分だけココで激安販売﹀こんな貼り紙がワンボックス車の側面にひっつけられていた。駅西口のロータリーに停められており、短髪のおっさん運転手がヒマそうにケータイをいじっている。何事やねん。周囲を歩く人も怪訝そうな顔でチラ見している。激安の文字に心躍った俺は、その夕方6時に、再び天王寺駅に出向いた。いたいた、けっこう人が集まってるやん。ワンボックスの後方ではトランクが開けられていた。中にじゅうたんが敷かれていて、男物女物それぞれの腕時計が並べられている。値札のようなものは見あたらない。よくよく見てみれば、腕時計はすべてロレックスやオメガ、カルティエなどの超一流ブランド品だ。
隣に立っているおばちゃんが時計を並べるおっちゃんに声をかけた。
「そのシャネルのヤツ、いくらなん?」
「これか? せやなぁ、4万5千ってとこか」
俺はそこまで時計に詳しくないのだが、ホンモノなら倍はするはず。てことはパチモンやろ。さらにおばちゃんはひとしきり値段を確認していった。どれも2万から10万程度みたいだ。そしてあたりまえのように先ほどのシャネルを購入して立ち去ろうとする。俺は小声で声をかけた。
「それパチモンやと思うで。返品したほうがええわ」
「いやいや、ちゃうねん。ここはホンマもんやねん」
自信満々な表情だ。なんやこいつ、サクラか?並べられた時計に顔を近づけてみる。まあ真贋の判断なんてつかないけれど、どれもこれもちゃんとしてるというか、精巧に作られている。これならパチモンでもええかもなぁ。
「このブルガリのやついくら?」
「2万2千円」
「けどこれホンマに本物なん?鑑定出してもええ?」
「ふふふ。あたりまえやん。出所は言えんけどホンモノ。嘘やったらカネ返してもええで」
よっしゃ買ったろ。ほんで鑑定してもらおうやないか。オレ以外にも数人が時計を買い、6時10分を過ぎたころで店じまいに。ほどなくして車は走り去った。しかしなんでこんな売り方してるんだか?
後日、質屋に時計を持ち込んで鑑定を依頼したところ、返ってきたのは意外な言葉だった。
「間違いなくホンモノですね。箱と保証書付きなら買い取りますよ」
なんてこった!しかしなんであんな売り方してるんだろう。もっと堂々とやったらいいのに。およそ2週間後、再びあのクルマが天王寺駅前に停まってるのを発見した。︿高級時計 ブランド品〜﹀
貼り紙の文言はほぼ同じだ。ブランド品ってことは今回はカバンとかもあるのか。顔を出すとしよう。例のごとく夕方6時に行けば、人だかりが出来ていた。
「ヴィトンのそのカバンいくら?」
「ロレックスもうちょい安くなれへん?」
オバチャンから若いリーマンまでもが我先にと物色している。商品を並べてるのはこ
ないだと同じ短髪のオッサンだ。どれどれ。ヴィトンのキーケースあるやん。あっちの財布もカッコエエな。そうこうするうちに商品は飛ぶように売れていく。俺も負けじとキーケースを1万円で購入した。それからなんとなしにその光景を眺めていたら、またも6時10分過ぎにトランクが閉められた。運転席に戻るオッサンに声をかける。
「今日も買わせてもらいましたわ」
「ありがとうなぁ」
「せやけど、なんでこんな売り方してるんですか? こんだけ売れるんやったら店出したほうがええでしょ?」
オッサンはニヤっとして、口に手を当てた。
「なあ、誰かに言うたらアカンで?」
「へ?」
「絶対誰にも言うたらアカンで?」
「はい」
「全部盗品なんや。だからこうやって売ってんねん」
一瞬何を言ってるかわからなかった。盗品って、どっかから盗んできたってこと?オッサンはタバコに火をつけて、あらためて語りだした。時計もブランド品もすべて、ここ大阪や神戸、京都などの高級住宅街の家に泥棒に入って集めてきたものだそうだ。
「直接ドロボーしてんのはワシやなくて仲間やけどな」
「マジっすか…」
「でもええやろ? ちゃんとしたもんが激安で買えるんやから」
 ずいぶん得意気にしてるけど、俺らはこれを買って何か問題はないのだろうか。
天王寺だけやないで。難波とか、新大阪とかな。大きな駅の近くで売ってんねん」「『5分だけ』ってのはどういう理由なんすか?」
「アホ、ずっといてたら目立ってしゃあないやろ。面倒起こしたら元も子もないやん」
いきなり売ろうとしても人が集まらないので、当日の午前中や前日に、貼り紙カーを
停車して宣伝しているそうな。ったく、ようやるわ。ここまで話してオッサンは去っていった。あのクルマは今も天王寺でたまに見かける。

※この記事はフィクションです。読み物としてお読みください。