東京の某所に、笑点ファン(55才)と新喜劇ファン(52才)のお二人に集まってもらった。二人は共に、年齢が近いので、世代による感性の違いは考慮しなくていいだろう。
本日は司会者の俺を交えて3人でざっくばらんに語らい合い、両者それぞれがどれほどショーモナイことで笑うかをチェックすることで、沸点の差を計測してみたい。
●では始めさせていただきます。
笑点 よろしくお願いします。
新喜劇 よろしゅう。
●今日は愛想笑いは一切しないようにお願いします。逆に無理に笑いをおさえるようなこともしないでください。
新喜劇 せやね。ちゃんとオモロかったら笑ったらええんや。
笑点 了解〜。
●まずはお互い、敵の番組をどう感じているのか聞きたいんですが。
笑点 正直言って新喜劇はあんまり観たことないんだよね。こっちじゃ放送されてないし。でもやってることはなんとなく知ってますよ。なんかドタバタ走り回って、「アホ」とか「なんでやねん」とか言ってるでしょ? 下ネタも多いよね。あんまり好きな
笑いじゃないかなぁ。
あと、「パチパチパンチ」って新喜劇だよね? あれとか、よくわかんない。勢いで笑わせようとしてるんだろうけど。俺はもっとヒネったっていうか、考え込まれてようやく出た一言で笑うようなのが好きなんだよね。
●なるほど。
新喜劇 なんやそれ、めっちゃ的確に分析してるやん。
笑点 ああ、そうですか。
新喜劇 でもパチパチパンチは伝統芸やからね。オモロくて笑うっていうか、客が笑うところまでがセットやねん。
笑点 はぁ。
新喜劇 だから笑ってもええやん。まあ下ネタもときどきあるけど、オモロかったらええねん。素直にわろたらええんやから。
笑点 そりゃ面白かったらね、笑うけどさぁ。
新喜劇 大阪の客はキビシイで?しょうもないギャグは笑えへんから。オモロイものしかウケへん。あたりまえやけどな!
笑点 まあ、そりゃあそうだけど。
新喜劇 笑点、観たことあるで。いやー、まあ大喜利やんね。あの人ら、なんやウマイこと言ったみたいな顔で答えとるけども、ワシらから言わせたらそんなにオモロ
イとは思えへんわ。「どや、オモロイやろ」みたいな顔で答えとるけどなぁ。
お笑いって難しいこと言ったほうがエライわけちゃうねん。客とかテレビ観てる人が笑えばなんでもええんやで。
あの人らの笑いっちゅーのはスッキリせえへんねん。もっと「ドガ〜ン!」って一発で笑えるようにせんとアカンわ。新喜劇とは真逆やと思うな。
笑点 そうかなぁ。
新喜劇 せやで。もっと単純やねん。笑いって。
笑点 笑点だって考えさせるようなのだけじゃないけどね。木久扇(林家)さんなんてベタもいいところだし。いまは休んでるけど。
新喜劇 ああ、ああいうのはええよ。ぜんぜんエエわ。
●木久扇さんは好きなんですね。
新喜劇 まあまあやな。
笑点 皮肉利かせた笑いもいいと思うけどなぁ。
新喜劇 悪いとは言わんけどねぇ。まあ、ワシが好きやないっちゅーことや。
のっけから火花の散る戦いとなった。大阪人も扱いに困っているであろう「パチパチパンチ」を代表例にされ、新喜劇側に動揺が見られる。
一方の笑点側は、木久扇さんの存在に助けられた形か。
もちろん今回の目的は番組の罵り合いではないので、この論争はあくまで導入にすぎない。座談会を続ける。
●ではざっくばらんに雑談でもしましょうか。
新喜劇 なに話そうか。
●そうですねぇ。テレビ番組とか、他はどんなの観てます?
笑点 まあ、ニュースとかばっかりだけど。
●へえ。
新喜劇 ワシはあんまり観ないなぁ。
●新喜劇ぐらいですか。
新喜劇 せやねぇ。オモロイ番組ないからな。
笑点 まあねえ。それはオレも思うよ。
●じゃあ僕から話題出しますね。
新喜劇 なに、話してみいや。
●あの、ちょっと前に中華屋でご
飯を食べてたんですけどね。
笑点 うんうん。
●その店に突然ヘンな人が入ってきたんです。で、「おばちゃん、トイレ貸して!」って言うんですよ。その人の格好がね、真っ白なスーツで、黒いサングラスかけてて。
頭もじゃもじゃで。クリスタルキングのボーカルみたいな感じなんです。
笑点 ふふっ(微笑)
●そんでトイレ借りて出てきたんですけど、食事はしていかないんです。ああ、そうかぁと思ってたら、その人がおもむろにサングラス外して、オバチャンに言ったんです
よ。「トイレ、ごちそうさん。お代はこのスマイルでいいよね?」って。
笑点 ぶはっ!(爆笑)
新喜劇 んふふ(微笑)
●ニコっとして言うんです。でもオバチャンもたいしたもんですよ。「20円足りない」って返したんですから。
笑点 ハハハ(笑)
●で、クリスタルキングが「ダメかぁ」って言いながら20円渡したんです。コイツらのノリなんなんだよって思いましたね。ってか、ここトイレ借りるのカネ取るんだって。
笑点 ぶはっ! はははっ!(大爆笑)
新喜劇 ふーん。
笑点 なんだそりゃ(笑)
新喜劇 はぁ。
●ホントなんですよ。びっくりしましたね。
笑点 面白いねぇ。
新喜劇 なんやねんそれ。
●ほんと、謎でした。
新喜劇 ワシもなぁ、それと似たようなことあったで。
笑点 へえ。
新喜劇 なんやったかなぁ。あったのはあったんやけど。
笑点 言わないんですか(爆笑)
新喜劇 ああ、言えへんわ。
●言わないんですね。
新喜劇 言わん言わん。
●なんですかそれ。じゃあ次の話
いきます。
笑点 いいよ、いいよ。
●出張で大阪に行ったときの話なんですけど。夜中に歩いてたんですよ。そしたらめっちゃスタイルのいい女性が歩いてまして。で、いきなり向こうから声をかけてき
たんです。「なぁ、映画見に行かへん?」って。
新喜劇 ええやん、ええやん!
笑点 それで?
●あの、逆ナンかと思ったんですけど…。
新喜劇 逆ナンってなに?
笑点 オンナが男性をナンパすることですよ。
新喜劇 ほぉ。
●逆ナンかと思ったら、まあ案の定、青ヒゲのオカマだったんですよ。
新喜劇 なんやそれ!(笑)オカマかい!(爆笑)
●アハハ。それで、いいからどっか行けって追い払おうとしたらめちゃめちゃ逆ギレされたんです。
「なんやと! ワシかてお前なんかじゃよう立たんわ! 嫁はんでもよう立たんのに! 死ね!」って。オッサン、そんな格好しといて嫁さんいるのかよって1人で爆笑しちゃいましたよ。
新喜劇 あははは!(大爆笑)
笑点 へえ。気持ち悪いねぇ。
新喜劇 おるおる! 大阪のオカマってそんな感じや! わかるわぁ(爆笑)
●そうなんですよ。
笑点 へえ〜。
新喜劇 ええやん。兄ちゃんオモロイ話もっとんなぁ。
●しかもそのあと走って追いかけ
られましたからね。「このアホが!」って。
新喜劇 プププ!(爆笑)
笑点 フフ(微笑)
新喜劇 オモロイなぁ。やっぱり大阪はオモロイで。
●まあ僕の話はそんなところですかねぇ。
自分でも決して爆笑モンとは思っていなかった話に、二人が食いついてきた。しかしこれ、新喜劇氏は、大阪の話題にのみ反応を示しているので、形を変えた大阪自慢なのかもしれない。