会話のタネ!雑学トリビア

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気に入らない客には売ってくれないチケットショップ店

東京・水道橋駅から靖国通り方面に向かい、ガソリンスタンドの角を左折してすぐの雑居ビル内にある『T』なる店だ。右から左にチケットを流すだけの店に、こだわりのガンコ親父がいるとは考えにくい。どういうことだろう。
 東京ドームの巨人戦が始まる少し前に店に足を運んでみることにした。ミッションは当日券を買うだけ。問題など起きそうにない。当日、店が入居するビルの前で妙なことが起きていた。チケット屋の立て看板がひっくり返っているのだ。まさかキレた客がやったんじゃないだろうな。だとしたら強敵だぞ…。気を引き締めなおして店内へ。様々な野球グッズ、プロレスグッズで埋め尽くされている奥に店主はいた。パソコンとにらめっこしており、いらっしゃいませの言葉もない。
「すいません、今日の巨人戦のチケット欲しいんですけど」
「……」
 聞こえなかったのか、店主は目を閉じている。えっと…。
「あの、巨人戦のチケット」

「…何枚?」
「えっと、3枚で」
「1枚残っちゃうんでできないんですよー! !」
 げっ、なんでいきなりそんな大きな声を出すんだよ。
「ムリですねぇ。奇数はムリ、ムリですねぇ!」
 首をカリカリかきながら答える店主。この人、大丈夫か?
「あの、なんでそんなに怒ってるんですか?」
「いやオレはねぇ! 売らないものは売らないんだから!」
「いやその…」
「あのねえ、アナタには売りたくないんだよ! さっさと帰って」
チケットはペア席のほうが売りやすいのだろうけど、3枚欲しがっただけでこの扱いはいかがなものか。店主は立ち上がり、店内をウロウロしはじめた。相当お怒りの様子だ。
「あの、僕には売らないってどういうことですか?」
「売らないっすよ!」
「他の客には3枚でも売るんですか?」「いや売らないよ! !いまここにアナタしかいないんだからそう言っただけだろ!」
「客として来てるのにそんな言い方は…」
「客? カネ払ってから言えよ」
「だからカネ払ってチケットを買おうとしてるんでしょ?」
「だから売らないって言ってんだからそれで終わりじゃねーかよ!」
「売らないならなんで店なんてやってるんですか?」
「そりゃオレの勝手だろうよ! 勝手じゃんオレの。自分の勝手じゃん、アハハ」
「なんすかそれ」
「好きなお客さんに売ってるだけ。もう終わった話だから、オレここからアンタの話を一切無視するから」
 無視って、子供かよ…。再びパソコンの前に戻った彼はオレの言葉に返事もしなくなった。そのタイミングでお客さんが入ってきた。店主がすかさず俺を睨む。
「他のお客さんいるから帰ってくれ!」
「いや話は終わってないです」
「これ以上アレだと営業妨害でアレだからな!」
「いや話を聞いてくださいよ」
「もういい、いい! 帰れ!」
 モヤモヤしたまま外に立っていたら、先ほどのお客さんたちが店から出てきた。
「やべーよアレ」
「オカシイだろ」
 この店、チケットを売らずにどうやって経営していけてるんだろうか。