会話のタネ!雑学トリビア

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お客に急いで食べさせるラーメン屋

埼玉県入間市にやってきた。目指すラーメン屋『J』は、入間市駅を南下し、県道463号線にぶつかったところにあった。カウンター6席のみの狭い店だ。食事中の人たちの背後に客が並んでいる。なかなか繁盛してるみたいだ。
 食券を購入し、先客4人が並ぶ後ろにつく。わずか5分ほどで、ほぼ一斉に席が空いた。やがて出来上がったラーメンが客の前に置かれていく。いただきまーす。けっこうウマイけど、何か問題が起こる気配はない。スープが熱々で食べ進めるのもひと苦労だが、1人、また1人と席を立つ客が出てきた。みんな食べるの早いなぁ。席についた6人のうち、オレともう1人のおっちゃんが残った。まだ食べ始めて5、6分だ。
「あの、待ってるお客がいるんで急いで食べてくれません?」
 タオル巻きの店主がオレとおっちゃんに向かって低い声を出した。ええっと…。
「急げってどういうことですか?」
「だから待ってるお客がいるから急げってこと。そのまんま」
 どうやらこの店、カウンター6人分のラーメンを一気に作り、全員が食べ終えたところで次の6人と交代させるシステムのようだ。
「いやいや、こんな熱いの、数分で食べれるわけないでしょ。そんなのって勝手過ぎませんか?」
「ウチのルールなんで勝手じゃないっすよ。早く食べてくれないと待ってる人に悪いでしょ?」
「だったら、もっと効率的にお客さんをさばく方法を考えたほうがいいですよ。客が食べてる途中で急かす以外にやり方はたくさんあると思うんですけど」
 どうだ、はっきり言ってやったぞ。隣に座るおっちゃんも心なしか嬉しそうな顔をしている。
 だがこの店主には響かない。
「ウチのやり方なんで。できないなら帰ってもらっていいっすよ」
 でたよ。こいつらバカのひとつ覚えみたいに帰れって言うよな。
「カネ出して食ってるんだし帰るわけないでしょ」
「迷惑っすよ。だったら急いで食べてくださいよ」
「別にわざとゆっくり食べてるわけじゃ……」
 ヒートアップしてきたところで隣のおっちゃんが席を立った。丼を見ればまだ食べかけだ。
「ほら、おたくも早く食べて帰ってください」「客に向かってそんな言い方ないと思うんだけど」
「はい、わかりました。お急ぎください」
 このあともこんなやり取りを続けたが、店主が譲歩の姿勢を見せることはなかった。おまけに誰一人として俺に加勢してくる客もいない有様だ。ラーメン好きってのはずいぶん従順だこと。