薬物の値段は国内外で大幅な開きがある。東南アジアでは大麻マリファナがタダみたいな値段で売られているし、単純に国内に持ち込むだけで、その価値は何十倍にも膨らむというわけだ。
もちろん外国の仲介人を通して薬を仕入れれば、原価はもっと安くなり、利幅は増える。個人で密輸を行ったとしてもかなりの利益が確保できるだろう
個人で密輸して売れるのかという疑問はあろうが、こと薬物に関しては「質」が問題
日本国内で流通しているLSDやエクスタシーは質の悪い、要するに効きの悪いものが多く、特に外国人の手によ って密売されているもののほとん どが粗悪品である。
薬は密造品なので、同じ薬物でもよく効くものと、ろくに効かないものの差が激しい。また、有効成分がほとんど入っていなかったり、ごまかすために覚醒剤やヘ口インが混入されていたりすることもしばしばだ。
そういう薬物が大部分を占めるのだから、個人でも質のいいもの売れば、買い手はいくらでもある。実際、目の肥えている常用者というのは、サンプル代わりに少量を買って味見し、いいブツだとわかればまとめ買いをしてくれる。
というか、粗悪品がまかり通っている現状では、これが薬物の正しい買い方だ
密売人とて大量の在庫を抱えているわけではないし、同じルートから仕入れても品質にばらつきがあるのが常だから、いいブツがあるときにまとめて仕入れるのが堅い買い方とされる。
これが末端ではなく流通ルートになると、よりシビアだ。
冗談みたいな話だが、例えば同じブランド（エクスタシーもLSDも、 絵柄や外見によって商品を区別し ている）でも偽物が出回るので外見だけを頼りに取引するのはアテにならない。
万が一、偽物を掴まされたら双方のカ関係にもよるが最悪泣き寝入りするしかない場合もある。 お互いの信頼関係で取引と言ったところで、取引に信頼関係もクソもあったものではない。モノを言うのは「力」だけだ。
覚醒剤についても質の問題は同じ。よく話題にされるのが混ぜモノ、つまり覚醒剤の粉にいろいろなモノを混ぜて、増すといった方法で、覚醒剤の取引は全て目方（重さ）単位だから、混ぜモノをして増やせば、それだけ儲かるというわけだ。
もっともそうした混ぜモノが流通段階においてのみ行われてるわけではない。
金のある連中は海外に行って買い付け、それを国内に送ったり、 定期的に海外の知り合いなどに頼んで送ってもらったりしているようだ。
そんなことをして税関でバレないのかと思われるだろうが、そこ はお互いの知恵比べ。もちろん税関は密輸を見破るノウハウを持っているが、それを上回る奇策があればパスできるのだ。
ただ、こうした個人の密輸は、それなりの金やコネがある人間にのみ可能なことであって大半の末端購買者は密売人から買わざるをえない。
では、どこでその密売人と接触するか。
一時期、外国人の密売人により白昼堂タと路上で薬物が売買されていた時期があったが、さすがに最近では路上で売られていることはまずない。
現在は、携帯でのやりとりが主だ。密売人の携帯に電話すれ ば、取り引き場所の指示があるの で、そこに出向けばいいだけのこと。値段は要交渉が基本で、売人の言い値で買うのは愚の骨頂とされている。
ではその肝心の携帯番号はどうやって調べるのかといえば、これが意外に簡単だ。薬物常用者の間ではいいブツを安くうってくれる外国人の携帯番は頻繁にやりとりされている。
こうした売人へのアプローチのしやすさが、昨今の薬物の爆発的流行を招いているのだ。 これが薬物中毒者、いわゆるジャンキーともなると、仲間内で売買していることが多い。その方が外国人から仕入れるよりも質のいい薬物が安く手に入るからだ。ジャンキーは薬物の良し悪しについてはうるさいので、そうした知識のある人間に対して粗悪な薬物を売ろうとする者はまずいない。
特に仲間内で顔を知ってる人間に質の悪いもの売りつけたりすると、お互いの信頼関係にヒビが入るのがオチだ。
ただ、こうした薬物常用者であっても、密売人から買い付ける薬物が100％質の良いものであるとは限らない。鑑定ではないが、薬物は外見上、その善し悪しがわからないので、うっかり質の悪いものを仕入れてしまうこともある。
そうした場合は薬物初心者にそれとなく売り付けたり、 もしくは別の密売人に買い取って もらったりする。
よく先輩がジャンキーなので、 その人から分けてもらいましたー なんて言ってる初心者がいるが、そうしたケースでは質の悪いものを売り付けられたと思って間違いない。 別に深く考えなくても、例えば 自分が良質の薬物を持っていたとして、わざわざ他人に良質の薬物の方を売ってあげる人はまずいないだろう。
