都内在住の男で、地元の仙台に帰省するたび、いつも新幹線をキセル乗車している友達がいる。一度、誘われて一緒に新幹線で彼の地元に行ったとこがあるが、そのときもヤラかしてくれたものだ。まずは行き。東京駅の新幹線の入口改札は入場券で通り、自由席に乗車。
「車内検札は前方の席から順番に行われるから逃げやすいようにしようや」と、後ろの席に陣取る。そして実際、車掌の姿が見えるとさっと便所へ立って検札をかわした。仙台駅に着くと、新幹線の出口改札に向かってズンズン歩いていく。
「この駅は、改札の外に忘れ物受付所があるんで、それを利用する」とのことで、改札の駅員にこんなふうに声をかけた。
「すみません。新幹線の車内にバッグを忘れちゃって。その中にキップも入ってたんです」
大ウソもいいとこだが、なんと駅員は「それでは忘れ物の受付所へ行ってください」と、すんなり改札を抜けさせてくれた。
そして帰り。例のごとく、仙台駅の入口改札
は抜け、車内検札もかわし、東京駅に到着。改札はまた忘れ物作戦で抜けるのかと思いきや、今度は駅員にこう言う。
「東海道新幹線の改札に入るつもりが、間違って東北新幹線のほうに入っちゃって」
違うキップでどう改札を通ったのか、そもそもキップも見せずにそんなこと言っても無理なのではと思ったが、これまたすんなり改札を抜けてしまった。呆れてモノが言えなかった。