このワタシ、旅行が好きで年に数度は遠出して日本中のあちこだを訪れております
とは申しましても、新幹線や飛行機を使うと旅情が損なわれますので、移動はもっぱら在来線やバス。目的地に着くことよりも、そこに至る道程での景色や風情などを味わうという、年寄り臭い旅行です。
今春のことです。ワタシは名古屋から紀伊半島をぐるりと1周して大阪へ向かう、ぶらり紀伊半島各駅停車の旅に向かいました。利用したのはJRの紀勢本線です、
名古屋から亀山、松阪を通って熊野、新宮へ。何度か乗り換えをしながら、普段は飲まないビールなんぞ景を眺めるという、なかなかのよい旅でありました。
しかしであります。新宮駅で乗り換えて、紀伊勝浦、白浜方面へと向かったワタシに大問題が襲いかかったのです。
おしっこがしたくなり、車両をうろちょろと動き回ったのですが、トイレがないのです!
もしこれが都心の路線ならば、ワタシも困りはしなかったでしょう。駅のトイレに駆け込み、次の電車を待てばいいだけのことです。
しかしこの紀勢本線、手元の時刻表によれば、いつたん下りると次の電車が来るまでに2時間以上も問が空くのです。いくら道程を楽しむワタシとて、そこまでおおらかなことは言っておれません。
おしっこはしたい。けれどそのために2時間もつぶすわけにはいかない。いっそのこと窓からやってしまおうか。しばらくはそんなことをイライラと思案し続けていたのですが、もうどうにも我慢なりません。
そこでワタシは股間を押さえながら乗務員に突っかかってみました。おいおい、この状況を、どうしてくれようかと。すると意外な答が返ってきます。
次の駅のトイレを使ってくれればいい。少々戻りが遅れても待っているから
電車のダイヤというのは正確に守られているものとばかり思っていたワタシは、正直驚きました。なかなかイキな計らいを見せよるでないの。
駅に到着しドアが開いた瞬間、ホームに駆け下りたワタシは、歩道橋を渡ってあちら側のホームに移り、改札を出て右側のトイレへと滑り込みました。勢いよく尿が飛び散ります。と、おかしなものであのトイレ独特の異臭を喚いでいるうちに、大きいほうの便意までもよおしてくるではないですか。少しなら待つ、という乗務員の言葉を信じ、ワタシは大便器にまたがりました。
するとです。なんとワタシが脱糞に精を出している間に、ホームのほうで物音がしたかと思いきや、電車が走り出してしまったではないですか。残されたワタシはただポーゼンとするのみです。
後日、JR西日本にこの件を伝えたところ、次のような説明がありました。
この路線ではトイレ客のために、発車を多少遅らせる対応をとっているが、待てる時間は状況によりまちまち。たとえば終点に近付けばダイヤの狂いが少ないため少々なら待てるけれど.次の駅で特急の待ち合わせをするなどの場合は、特急ダイヤを狂わせるわけにいかないため、ほとんど待てない
なるほど、ワタシが大便をした駅は、せいぜい1分程度しか待てない状況だったようです。小便ぐらいなら待つけど大便はイカン、そういうことです。
これ、何かおかしくないでしょうか。つまり状況によっては、客に大便させる猶予すら与えないというわけです。いや、トイレに行って帰るのに歩道橋を2度渡らねばならないとなれば、老人や障害者など、移動の困難な者なら小便すらしてはいけないことにもなります(どうにも解せません。)
これもすべて車内にトイレがないことが原因。新宮までの電車にはトイレがあったのに、新宮からはトイレなし。新宮はJR東海とTR西日本の境目であります(つまりこれは、JR西日本がいかに客を無視した悪どい経宮をしているかを証明しているのではないでしょうか。
JR西日本は、和歌山と大阪を結ぶ路線には新型車両を導入したりしているくせに、紀伊田辺l新宮間はトイレなし。地理的にこの辺りは田舎ですから、ついつい田舎者差別をしているのではないかと言いたくもなります。皮肉なことに、このトイレなし電車が運行をスタートした当時の運輸大臣は、問題の区間である和歌山3区から選出されております氏の選挙看板には「紀伊半島にミニ新幹線を」なる標語もありました。利権の絡むミニ新幹線の建設には躍起になっておきながら、車を利用できない高校生や社会的弱者の足となっている在来線については放ったらかし。
このままではますます客足が遠のき、紀勢本線もいつか廃止の憂き目に遭うことでしょう。ぶらり旅愛好者のみなさん、ひとつここは決起しようではありませんか。