会話のタネ!雑学トリビア

裏モノJAPAN監修・会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

渋滞を狙った当たり屋で一儲けしてる輩にご注意を

栃木の片田舎には、さして有名ではないものの、たくさんの初詣参拝客が集まる神社がある。まあ、全国どこの地域にもある光景だろうが、年明けから数日はどっと人が押し寄せるわけだ。そしてその神社には大きな駐車場が併設されている。都会の初詣は徒歩で向かうのが一般的だろうけど、田舎はクルマがないと何をするにも困ってしまう。
当然、初詣も車で乗り付けるのが普通だ。独り身のオレが10年以上も初詣に足を運んでいるのはコレに眼をつけたからに他ならない。これだけクルマでやってくる人間が多くて、しかも神社内の出店や屋台で酒を売ってるわけだから、飲酒運転も多いに決まっている。早い話が当たり屋で一儲けできると考えたわけだ。最初は大晦日の深夜(年明け早々)に、駐車場で待機することから始めた。参拝を終えて車に乗りこむ人間を見つけたらこっそり近づいて、車が発進したところで車体側部にカラダをぶつける算段だ。さっそく現場仕事系の兄ちゃん2人組を発見した。こういうのは飲んでるに決まってる。2人を尾行してワンボックスカーに乗り込んだのを確認。そろりと近づいたところでエンジンがかかった。そのまま車がわずかに動き始めたところで、ドン!助手席側のドア付近にカラダをぶつけて痛がる演技をしたところ、2人が車から降りてきた。
「何やってんすか?」
「いやそっちがいきなりクルマを発進させたんでしょ。酒でも飲んでるんじゃないの?」 
…運転手が眉間にシワを寄せて顔を近づけてきた。あれれ、酒くさくない。
「飲んでねーよ。妙なコト言ってんじゃねーぞオッサン」
「…あ、じゃあいいよ」
すごすご退散だ。次に狙ってカラダをぶつけた車は、運転手から酒のニオイがした。これは儲けモンだ。
「酒臭いよね。警察呼ぶね」
「あの、今は飲んでないんすよ。昼間飲んでたから」
「でも飲んでなかったら接触事故なんか起こさないでしょ?」
「あー、めんどくせー。これで勘弁してよ」
財布から5千円を投げ渡し、車は猛スピードで去っていった。いちおう成功だ。これを年明けから毎日4日ほど続けていたのだが、どうにも効率が悪い。意外にも酒を飲んでないドライバーがけっこういるからだ。翌年の初詣ではターゲットを絞る方法を試すことにした。名づけて『出店待ち伏せ法』だ。神社内で酒を売ってる出店付近に立ち、酒を購入したヤツをマークする。そのまま車に向かい発進させたところで前回のようにぶつかるわけだ。
出店の前で観察していると、飛ぶように酒が売れているのがわかる。最初のターゲットに選んだのはギャルママグループだった。子連れ母二組で酒を飲み干したあと、そのままクルマに戻っていくのを尾行する。彼女たちが乗車してすぐ、他の車に隠れるような形で待機する。エンジンがかかり、急に動きだしたので慌てて激突だ。
ドンっ。運転手側のドア付近にぶつかったオレは大げさに駐車場内に倒れこんだ。慌てて女が飛び出してくる。
「大丈夫ですか!?」
「イテテ、どこ見てんだ!歩行者見てねえのか!」
「…すいません」
ここからは飲酒を問い詰める流れだ。
「ん?酒クセーな。オマエ飲酒運転かよ!」
「いえ、その…」
「とにかく警察呼ぶから。飲酒運転なんてとんでもないわ」
ケータイをポケットから出そうとしたところで女が泣きそうな顔になった。
「それだけは勘弁してくさい」
「だって飲酒でぶつけられたんですよ?勘弁なんて無理」
「これで、どうかお願いします」
女が財布から出したのは2万円。よしよし、許してやろう。続いて別の神社へ向かった。同じ場所で立て続けにやるのは危険だからだ。同じように出店前で張って、家族連れのオッサンが酒を飲んだのを見て、車に戻るまでを尾行。発進と同時に体当たりだ。
「イテテ、あれ、アンタ酒くさいな。飲酒運転か!」
「…いえちょっと、大声出さないでください」
「警察呼ぶから動くなよ」
「これでなんとかおさめてくれませんか?」
皆様、初詣の飲酒にはくれぐれもご注意を。