会話のタネ!雑学トリビア

会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

霊感の強い友達が家に来てすぐに帰ってから電話に出てくれない

携帯が鳴った。母親からだ。ヤツからの電話がいい話だったためしがない。テレビが壊れたから買ってくれとか言うんじゃねーだろうな。
「もしもし。どうした?」
「あのね、美幸が、なんかヘンな人と友達になったの。今夜ウチに来てよ。もう大変なんだから」
美幸は小学6年生の次女だ。以前、豊島マンションに遊びに来たあとに、三男・雄介の受験票を燃やすという奇行に出たことがあるが、以降は落ち着いていたはずだ。ヘンな人と友達になったってどういうこった?実家では、母親がリビングで神妙な顔をしていた。美幸の姿は見えない。自分の部屋にでもいるんだろう。
「どういうことだよ?」
「こないだね、美幸がパソコンいじってたのよ」 
美幸がパソコンに向かってる姿はオレも何度か見たことがある。ソリティアとかのゲームをやっていた気がするけど。
「それでね、ワタシが後ろを通ろうとしたとき、バッって隠したのよ」 
ノートパソコンを閉じて「なんでもない」と、ゴマかしたらしい。
「で、美幸がお風呂に入ってるときにね、あの子の携帯が鳴って。登録してない番号からの着信だったの」
あろうことか、母親はその電話に出てしまった。
「男の子の声だから『誰?』って聞いたら『池田です』って。中学生なんだって」 
池田クンの説明によると、美幸とチャットをしていて意気投合し、連絡先を交換したそうだ。なるほどパソコンを隠したこととスジが通っている。あいつも年頃なんだな。
「そんなに心配しなくてもいいんじゃないの?」
「なに言ってんの。そのなんとかチャットサイト?ってのは自殺未遂する人が集まってるって言うんだから!」
はぁ?なんで美幸がそんなサイトに出入りしてるんだよ。オレまで怖くなってきた。まさか小6が自殺はないだろうけど、最近のガキはませてるからな。悩みでもあるのかも。美幸の部屋をノックすると、無言でドアが開いた。表情が緊張してる。
「聞こえてたのか?」
「うん」
「池田クンとはまだ連絡とってるの?」
「…とってないよ」
ぜんぜん目を合わせてくれない。でも、あまりガンガン言うのも良くない気がする。
「なんでそんなサイト見てたの?」
「え、別に…」
「そういうのとか興味あるのか?」
「ないよ」
「池田クンは悪い人じゃないかもしれないけどさ、みんな心配するから、もうそういうサイトを見るのはやめろよ」
「…わかったよ、ハイハイ」
美幸はふてくされた様子でベッドに入り、頭まで毛布をかぶってしまった。
数日後、また母から電話があった。
『美幸ね、夜、電話で話してるみたいなのよ。絶対あのイケダだよ』
あの年頃だから、中学生の悪っぽい男にあこがれてるだけなら健全だと思う。でももし…。仕事帰りに駅から歩いていると、一人の女性とすれ違った。あれ?
誰だっけ、なんか見覚えがあるんだけど…。 
向こうはすぐに気づいたらしい。後ろから声が聞こえた。
「へ?…もしかして、水野?」
思いだした!小学校の同級生の水野だ。久しぶりだなぁ。
「元気?結婚、した?」
「ああ、うん。お前も知ってる同級生の真由美と結婚したんだ」
「そっか、ああ。良かったね。私は、元気です」
水野は少しばかり鈍い子だ。なんというか、知的障害まではいかないけど、どもったり、急に目線をあらぬほうへやったりするおかしな子なのだ。
「そうだ、じゃあ真由美ちゃんに、これ」
水野はメモを書いて差し出した。住所や携帯番号、メッセージが書いてある。こういうちょっとズレた律儀さもいかにも彼女らしい。
「ありがとう。渡しておくよ。またな」
家に戻ってその旨を真由美に伝えた。
「水野さんってあの?」
「そうだよ。変わってなかったわ」
「会いたいって言われてもねぇ」
ほとんど話をしたことはないのにと真由美は少し引いている。
「今度ウチに呼んでみるか」
「やめてよ〜。なに話せばいいかわかんないもん」
オレはぜひ招きたかった。映画やドラマでも、ああいう少し変わった人は霊的なモノを感じやすいことになっている。このマンションに入って何を思うのか、ちょっと聞いてみたい。
「何か感じる?」
「うん、頭痛い」
週末、水野が春日部コートにやってきた。誘えばすぐに来てくれるあたり、やっぱり水野だ。湯呑みのお茶を一気に飲み干し、そしてまた次も一気飲み。おもしろい子だな。
「真由美ちゃん、久しぶりね。あ、かわいい赤ちゃん、こんにちは」
「ありがとう」
真由美はぎこちない笑顔で応対している。が、しばらく昔話をしているうちに「なんかお菓子用意するね」とキッチンに逃げ込んでしまった。どうにもウマが合わないようだ。では本題に入ろう。
「このマンションって何か感じる?」
「うん、頭痛い」
いきなりそう来るか!お前、さっき入ってきたばっかじゃん。
「頭? マジで?」
「うん、きーんって痛い」 
水野よ、ホントなのか。ていうか、いつも痛いんじゃないのかよ。
「そうですね、うん。もうちょっとしたら帰ります」
「え、誰としゃべってんの?」
「建部くん」
「だよな」
「うん」
なんだこれ、何が起きてんだ。元々がオカシイだけに判断つかないぞ。
「もう帰るの?」
「ちょっと疲れました」
水野はテーブルのお菓子に手をつけずに、そそくさと帰ってしまった。20分もいなかったんじゃないのか。謎の頭痛。急に登場した「ですます」調。その理由を探ってみたい気は山々なのだが、なぜか水野は今も電話に出てくれない。

心中部屋の下の階からの騒音クレームが酷い

会社に向かおうとマンションのドアを開けた瞬間、なにかがハラリと落ちた。ん?
紙きれ?
〝いつも足音がひびいて困ります。少し、少し気付かって歩いて下さい〞
はぁ?なんだこりゃ。まるでウチがドタバタ歩いてるから迷惑してるってな調子で書いてあるじゃん。これを入れたのは同じマンションの人間なんだろうけど、部屋番号が書いていない。いったいどこのどいつだ?嫁の真由美が言う。
「下の階の人じゃない?ちょっと前に引越してきた」
そうか、たしか先週、引越し業者が荷物を運んでたな。タイミングからしてそいつに違いない。まったく挨拶もなかったくせにいきなり苦情かよ。
「昨日は特別うるさくしてないよな?」
「うん、いつもどおりだよ」
オレだって深夜0時ごろに帰ってきてすぐに寝ただけだ。こんな紙キレを挟まれる筋合いはない。文句でも言ってやろう。階段をおりたオレは、問題の部屋のチャイムを鳴らした。すぐに「は〜い」とおばちゃんの声が聞こえてドアが開く。
「508号室です。こんなモノが挟まってたんだけど、お宅ですか?」
「ああ、そう、そうなんですよ」
「別にうるさくしたおぼえはないんですけどね」
「うーん。でもときどきお子さんが走り回ってるでしょ?」
「は?」
「だから夜中とか、お子さんが走ってるでしょ?それが迷惑なんですよ」
…なに言ってんの?ウチの子供はまだ4ヶ月だから走り回ったりできないんですけど。
そう説明すると、おばちゃんは大げさに驚いてみせた。
「ええ〜?だって小走りみたいにドンドンドンって…」
「いつですか?昨日の夜中ですか?」
「ええ、昨日もそうよ。お昼にも聞こえるし」
まったく、どんだけ神経過敏なおばちゃんなんだ。ウチは普通に歩いてるだけだっての
。とりあえず注意しますと伝えて退散したが、どうにも納得がいかない。もしかして犬のレオか?でもあんなに小さな犬が走ったところで下まで響くわけがないよな。
数日後、家族全員で「くら寿司」を食いに出かけて戻ってくると、またもやドアに紙が挟まれていた。この前、突き返した紙キレじゃないか。アイツ、やっぱキチガイか?
下へ降り、おばちゃんの部屋のチャイムを押す。
「あの」
「はいはい。本当にやめてくださいよ。親戚のお子さんでも来てるんですか?」
「来てませんよ。うるさかったのはいつのことですか?」
「さっきですよ、ちょっと前。お願いだから少し注意してくださいよ」
さっきだって?そんなハズないだろ。たった今まで、みんなでくら寿司を食ってたんだから。
「あのですね、ウチらいま帰ってきたとこなの。いい加減なことばっかり言わないでくれますか」
ついつい語気を荒げてしまったことでババアは黙ってしまった。やべ、言い過ぎたか。
「じゃあ誰がドンドン走りまわってるのよ!真上なんだからアナタたちしかいないでしょ!」
ええ〜、逆ギレ?もう頭にきた。
「じゃあ中に入れてくださいよ。どこから音が聞こえるのか知りたいんで」
「ええ、どうぞ」
ババアは部屋の奥に向かい、和室の天井を指差した。この上は、昌子の寝起きしてる部屋だ。
「このへんよ」
「今は静かですよね」
オレはケータイを取り出して、真由美に電話した。
「いま下の部屋にいるんだけど、少し音を立てて歩いてみてよ」
「どのへん?」
「いちばん奥だな。お義母さんの部屋」
「え?わかった」
音など聞こえてこない。
「真由美、ちょっと走ってみて」
直後、天井からほんのかすかにトントンと音がした。耳を澄ませないと聞こえないほどだ。
「こんな音ですか?」「違うわよ、もっとドンドンって」
「真由美、ジャンプしてくれ、何回も」
 それでもまだトントンとしか鳴らない。わかったか、ババア、あんたの耳がおかしいんだよ!
しかしババアは聞く耳をもたない。
「いい加減にしないと不動産屋さんに言って注意してもらいますから」
腑におちないまま508号室に戻ったそのとき、初めてオレは思い出した。 
そうだ、あの天井の真上は心中部屋だった。ここ最近、家族のしょーもない不幸ばかりだったのに、あのババアが越してきたせいで、また摩訶不思議なオカルトがぶりかえしてしまった。ここで死んだ家族たちは、階下に何をアピールしているんだ…。

妖気を出してる謎のメニューを出す飲食店

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餃子の王将よりバーミヤン派なので近所のバーミヤンにたまに行くんですが、メニュー表の最後のページの隅っこにある「さっぱりレモンのオーギョーチ(199円)」なるデザートがいつも気になっていました。中華なので杏仁豆腐とかゴマ団子があるのはわか
るんですが、オーギョーチという名前にはあまり馴染みがありません。もう語感からしてうまそうじゃないし、ナタデココとかミルフィーユなら名前が既にかわいらしくてうまそうな気がしますが、オーギョーチというネーミングは着飾る気ゼロです。化粧っ気がまったくありません。おそらく人気もないのか、バーミヤンのメニュー表でも隅っこにひっそりと表示されている始末です。調べてみるとオーギョーチという植物の実から作られるゼリーのことらしいのですが、そんなわけのわからないデザートをなんとメインメニューとして営んでいるオーギョーチ屋が台東区の某所に存在するというので足を運んでみました。この周辺は下町の観光スポットでもあり、店の前も休日なんかは観光客で賑わっているのですが、この老朽化したオーギョーチ屋から放たれる独特の妖気を感じてか、見事に誰も入店していきません。入店しないどころか、足早に通り過ぎて行きます。
店の前のディスプレイには「台湾産オーギョーチイ」と「オーギョーチイの原料」が飾られています。どちらも茶色い塊で、どっちがデザートでどっちが原料なのかもよくわからない状態です。磨りガラスからは黄色い光が漏れており、暖簾も出ているので営業しているのは間違いありません。会員制のスナック並に入りづらい空気をビリビリと感じたのですが、意を決して「えい、ままよ」と叫び勢いよく店のドアを開けると目の前のテーブルで中年女性が一人、テレビでバンキシャを観賞していました。中年女性はこちらの存在を確認すると、無言で奥の厨房へ入っていき、水の入ったコップを持ってこちらに突き進んできます。その時初めてこの中年女性がどうやら店主であることに気付
きました。
4人掛けのテーブルは5つありますが、客はゼロ。それぞれのテーブルにはメニュー表の他になぜか写真立てが置いてあり、写真には店主のおばさんと誰なのかわからない謎の爺さんが肩を寄せ合って写っていました。メニューにはオーギョーチの他に「氷オーギョーチ」「チークリーム」「チーアンミツ」「チーワイン」「チーウイスキー」「チーブランデー」と記されており、とにかく全メニューがオーギョーチ絡みです。とりあえずオーソドックスに「オーギョーチひとつお願いします」と告げると店主は再び無言で厨房へと消えていきました。ひょっとして台湾人で日本語が通じないのかもと思いつつ、デジカメで店内をパシパシ撮っていると、店主が厨房から顔だけを出し「写真だめね! 撮っていいのはオーギョーチだけ!」と怒鳴られました。約1分後に店主がオーギョーチらしきゼリーが入った皿を運んできて再び「オーギョーチだけ撮っていいから!」と言われました。店主は再び席に着きバンキシャを見始めたので、しょうがないからオーギョーチを様々な角度から撮影して、いよいよ念願の初食です。見た目は薄黄色のゼリーなのでさっぱりしてるのかと思いきや、口に入れてみるとかなり甘く、思ったより食感は固いです。甘い物が好きな自分でもその甘さに驚いてしまってコップの水で流し込むほどでした。このノーマルなメニューでこれだけ甘かったら「チーアンミツ」とか「チークリーム」ではどうなるのだろうと想像したら武者震いがしました。しかもゼリー一つ一つがやたらと大きく、ボリュームがあります。これは完食できないと考え、オーギョーチの前で腕組みをしてどうしようかと考えていると店主がやたらとこっちをチラチラ見てくるようになりました。
これは気まずいと思い、「この写真のお爺さん、どなたですか」と訊ねてみると店主はかなり前のめりになりながら「藤山一郎だよ!」と言ってきました。藤山一郎って誰だっけとアイフォンで調べてみると、なんと「青い山脈」や「東京ラプソディ」などで有名な、国民栄誉賞も受賞したことのある昭和の超一流演歌歌手でした。そんな
人がなぜこの店に来ることになったのか、この店でオーギョーチを食することになったのか、きっと複雑な事情があったのでしょう。店主に「今日は店、空いてますね」と話しかけてみるとバンキシャに夢中なのか、一切返事はなし。
しょうがないから「あけましておめでとうございます」と敢えてこのタイミングで言ってみても返事はなし。オーギョーチもほとんど残してるし、会話も皆無で、これ以上長居したら鬱病になってしまうと判断したので帰ろうと決意し、席を立ち上がった瞬間に「400円になります」とこちらを一切見ずに店主が発しました。バンキシャではおせち通販問題を取り上げており、店主が険しい顔で首を捻りながら見入っているので、400円をテーブルに置いて一礼してから静かに店を出ました。

カーシェアリングで白タクしたら儲かる?

こ最近、「カーシェアリング」なる新しいタイプのレンタカーサービスが、首都圏を中心に増えている。大手業者では「タイムズ」あたりが有名だろうか。町のコインパーキングなんかに置かれている車をネットで予約して、セルフサービスで乗り、また同じ場所へ返すという使い方だ。これのなにが便利かって、車が空いてさえいれば、24時間いつでも使える点だ。普通のレンタカーなら深夜に借りて深夜に返すなんてことはできないが、カーシェアリングならまったく問題ない。しかも料金もヤケに安く、たとえば、
「24時〜翌9時まで:基本料金1500円+距離料金15円/1km。ガソリン代不要」
なんてコースもある。一晩中100キロ走っても3千円しかかからない計算だ。マイカーを持っていない俺はすぐさま会員になり、深夜ドライブに使わせてもらった。 そして閃いた。これで白タクをやれば小遣いになるのでは? 
深夜、都心には終電を逃して困ってる人間が溢れてる。お安く送ってあげますよと持ちかければ、乗ってくる人間はいるだろう。上手に客を掴まえれば…。 週末の夜。カーシェアリングプリウスを借りたオレは、新宿駅西口に向かった。予想
通り、深夜バス乗り場には行列ができてる。八王子駅行き方面は、終点まで行けば3千円かかる。ならば、半額くらいで話をもちかけてみるか。行列の人間たちに声をかけ
ていくと、4人のおっちゃんと話がまとまった。さっそく車に相乗りしてもらい、それ
ぞれの目的のバス停に寄りながら八王子を目指した。結果、40キロ走って、もらった金は合計5100円だった。
八王子からトンボ返りで新宿に戻ると、夜行バスはすでに終わっていた。ならばと今度はタクシー乗り場の人間を狙うことに。 しかし、都合良く長距離客を拾えるものではない。朝5時ころまで粘ったものの、1千円代の客を3人捕まえるのが限度だった。その日の売り上げは、合計9500円。儲けは5千円程度だ。 翌週末の売り上げは1万円ちょい。その翌週は9千円弱だった。 何だかなぁという感じの儲けだけど、マイカーを維持する費用もかからないし、一般レンタカーなら当然必要なガス代や翌朝返却するまでの駐車場代も不要なのは大きい。白タクは犯罪なので真似しちゃいけませんけど。

※この記事はフィクションであり知的好奇心を満たすためにお読みください。実行されると罰せられるものもあります。

娘の男関係で家族が殴り合いに

母親から毎日のように電話がくるようになった。次女が自殺サイト男と連絡をとってるのではと疑っているようだ。なぐさめてやろうと週末にひとりで実家に向かったところ、母親はすいぶん顔色が悪かった。頬もこけたようだ。親子とはいえ女同士というのはどこか関係がギクシャクするようで、まだ本音を語り合ってはいないらしい。ここはやっぱり長男のオレがしっかりしなくては。次女をリビングに呼び、オレは二人を諭した。
「お母さんまだ心配してるんだぞ。あの男とはもう連絡とってないんだよな?」
「とってないよ」
「母さんもこれ以上心配したら病気になっちゃうぞ。信じてやれよ」
「うん、そうね」
次女は母親のほうを見ようともしない。でもあーだこーだ繰り返してもどうせこのままだ。
「じゃあこの話は終わりな。よし、今日の夕飯はオレがオムライス作ってやるよ」
昔から二人はオムライスが大好物なのだ。まったく長男は気苦労が絶えないぜ。
夕方には弟の二人も帰ってきて全員でテーブルについた。オムライスをほおばりながら久しぶりの家族団らんだ。
「食べたらお風呂入っちゃってよ」
夕食後、母に言われたとおりに美幸は着替えを持って風呂場に向かった。シャワーの音が聞こえてくる。…母は何も言わずに美幸の部屋に入っていった。そしてしばらくすると一直線に風呂場へ突進していく。手に美幸のケータイを握って。バチーン!
「このウソつき!!」
大きな音と叫び声が響いた。少し遅れて美幸の泣き声も聞こえてくる。風呂場では素っ裸の美幸が顔をおさえていた。
「なにがあったんだよ!?」
「この子はまだあの男とメールしてるんだよ! ウソついてたの!!」
顔を真っ赤にして怒り狂う母と、泣きながら謝る美幸。そしてさらなる平手打ちが。
バチーン!
そのとき後ろから大きな影が現われて、母親の顔をぶん殴った。
バコン!
次男の健輔だ。
「子供に手を出すな!」
するとそこにまた新たな影が。
バコン!!
「お母さんに何するんだ!」
三男の雄介である。
お、お前ら、どんだけ熱いんだ。兄ちゃん、付いていけないよ。弟たちが殴りあい、仲裁しようとした母もパンチやキックをもろに受けている。もはや美幸がどうこうではなく、まるで普段のうっぷんを晴らしているかのようだ。と、玄関をドンドンと叩く音が聞こえた。
「警察です、開けてください」
マンションの誰かが通報したらしい。血だらけの顔になった3人はようやくおとなしくなった。警察が帰ったあと、鼻を腫らした母親に聞いた。
「美幸の携帯、見たんだろ? どんなメールだったんだよ」
「信じられないよ。『自殺したら楽になるから』とか『不満なんてすぐにどっかにいっちゃう』とか、なんでそんな変な男とメールしてるんだろ…」
そうか、そりゃビンタぐらいかましてやらないとな。にしても美幸、お前ほんとに大丈夫なのか?

オレにはオレの家族がいるので実家ばかりかまっていられない。週末は春日部コートでのんびりお休みだ。いつもは布団の中にいる土曜の朝だというのに、妻の真由美がのんきにおめかしをしていた。
「今日は友だちと会ってくるからさ、夏美を見ててもらっていい?」
高校時代の友だちから久しぶりに連絡がきて会うことになったそうだ。どうぞどうぞ、オレもそのほうが気楽でいいし。真由美は夕方に帰ってきた。
「ただいま〜。見て見て。アタシの顔、なんか違うでしょ?」
「え? どのへんが?」
「よく見てよ」
友人の使ってる化粧品を塗ってきたんだと。そんなん言われても関心ありませんから。
「ノンちゃんさ、その化粧品を自分で仕入れて売ってるんだって。けっこう儲かってるらしいよ」
なんだか怪しげな話になってきた。それってア●ウェイとかじゃないのか?
「私もね、同じ仕事をやりたいなって思ってるんだ」
「は?」
「あのね、私が参加するとノンちゃんも儲かるし、私がまた他の人に紹介するとその分もお金になるんだって」
「やめとけって」
「えー、でももうやるって言ったし」
ダメだこいつは。何もわかっちゃいない。
「とにかくダメなもんはダメだから。認めないから」
強く反対したオレだったが、以来、我が家の洗面台にはよくわからん化粧品が日々、増え続けている。サンプルでもらっただけだと真由美は言うのだけれど。

就活相談の女子大生がビッチだった

就活中の早稲田大学の女のコに会ってやってほしい、と知人に頼まれた。そのコ、出版社が第一希望で、現役の編集者の話を聞いてみたいのだと。ここでエロイ発想になるのだろう。就職の相談に乗りながら、カラダの上にも乗っちゃおうとか。まあ、そんな気持ちもちょっとはある。でも、それ以上に俺は奇妙な使命感に燃えている。相談にきちんと乗ってやり、自分の経験を話した上で、就職に役立てて欲しい、素直にそう思うのである。むふふ、余裕ではないか、俺。やっぱりオトナはこうありたいものよ。と思っていたのに・・・

会って話を聞いてみた。垢ぬけたざっくばらんな子だった。

「学生時代の一番の思い出は?」
「5ヵ国の男とヤリました」と。
本当に彼女には頭が下がりますね。この調子でバンバン世界各国の男とヤリまくってもらって、われわれ日本人の評判を上げていただきましょう。海外には危険なスポットも多数含まれておりますので、遊びに行く際は自己責任で行くしかないですが色々な意味で尊敬すべきお方です。

就活相談だと聞いていたのに説教の一つでもしてやろうとおもいましたが、説教とか言ってるヤツに、絶対にロクなヤツはいない。単なる自己中で偽善者なだけ。他人を注意する前に、まずは自分の行動を振り返ってみろと。そういう意味では、私なんて説教を入れる資格すらありませんので聞く一方で終了しました。

母がフェイスブックで出会ったアメリカ人から求婚された

しかし男の真の目的は振り込め詐欺でカネを巻き上げることだった。

寝ぼけまなこでリビングに起き出したオレの目に、見慣れないオブジェが飛びこんできた。ん?何これ?線香じゃん。なんで朝っぱらから線香立ててんだよ!
キッチンで鼻歌を唄う真由美はコトもなげに言い放った。
「昨日友だちが病院行くのに付き添ったんだけど、その先生がやったほうがいいって言うから」
「はあ?」
「霊が見える人なんだよ」
なんとも要領を得ないが、よくよく聞けばこういうことらしい。友人と一緒に行ったのはさいたま市にある整体なのだが、そこでは普通の診療の他に霊視もやっており、ずいぶん〝当たる〞と評判だそうだ。興味がわいた真由美は自分も視てもらった。
「ウチの近くに川が流れてるでしょって言われたの。当たってるんだよね」
たしかに家の近くに川は流れている。でも汚いドブだし、このレベルの川ならどこの家の近所にもあるわけで…。
「マッサージされながら質問に答えてたらさ、オジサンの霊が憑いてるって言うの」
うーん。真由美は知らないことだけど、過去、この部屋では一家心中が起きている。その中には当然オッサン(お父さん)がいたわけで、そいつが憑いてる可能性は否定できないけど…。
「それで線香をあげろって言われたからさ」
マルチにはまりかけたときもそうだったけど、こいつ、ホントに影響されやすいんだな。そんな適当な霊視に4千円も使うなんて、バカ丸出しだ。
「ヒロシも視てもらったら?この前の車上荒らしもそうだけど、最近ウチの周り、変なこと多いし」
オレに言わせれば、変なことが多いのは最近に限った話じゃない。ずっと前から建部家は変なのだ。さらに数日後。リビングに、また新たな線香立てが増えていた。前で手を合わせているのは、義母の昌子だ。
「…あのー、どうしたんですか?」
「真由美から聞いてない?ワタシも行ったのよぉ」「ああ、霊視とかってやつですか」
「そう。ワタシはね、近ごろ肩が重いから視てもらったんだけど、やっぱり憑いてたみたい」
「なにが?」
「ヘルメットをかぶった男の人だって。だから供養しなきゃいけないの」
義母が過去に旅行に行ったときに、炭鉱で働く男の霊が憑いたそうだ。それも一人じゃなく三人も。昌子はなにかをブツブツ唱えながら手を合わせ続けている。まったく親子そろってバカもいいとこだ。炭鉱夫のせいで肩こりになんかなるかよ。ただの運動不足だっての。なんだか腹が立ってきた。2人にではなく、その整体師にだ。わが家からすでに8千円もむしりとりやがって。毎朝、線香のニオイに包まれるオレの身になってみろよ。ヤツの顔が見たくなってきた。だいたい一家心中に触れてこないあたり、インチキに違いないわけだし。
「真由美、オレも行ってみたいんだけど」
「じゃあアタシもついていってあげる」
真由美はニコニコしながら予約の電話を入れた。
「家はぜんぜん大丈夫です」
そこは病院というより普通の一軒家だった。小さな部屋にベッドが置かれ、そばに先生が座っている。
「ああ、じゃあこれ書いてくださいね」
名前や住所を書き、ベッドに座るように指示される。
「今日はどうしました?」「えっと、先生は霊が見えるって聞いたんでボクにも憑いてるかなって」
「なるほどね。見てみましょう」
オレの肩にタオルをかけた先生は、さきほど記入した紙を手にした。
低い声で住所と名前をひたすら唱え続ける先生。それでなにがわかるんだ。家の景色が見えるってのか?住所ぶつぶつは5分以上も続いた。
「家の近くに道路ない?」
「え、ありますけど(あるに決まってんだろ)」
「そこで…そうだな…草の生えてるようなところかな…交通事故かな…」かな、かな、って誰に尋ねてんだよ。
「女の人、主婦かな…事故にあったみたいです」
「事故?いつごろですか?」
「それはわからないけど…タテベさんが通ったときにくっついちゃったのかな。うん、そうだね。30代の女性が憑いてます」
いつだかわからない交通事故で亡くなった主婦が、オレの肩についているそうだ。インチキくせーー!
「あ、ちょっと待って、あと、そうだな…小さい子、女の子…」
「女の子?」
「居酒屋とかよく行きません?」
そりゃあ行きますよ。さっきの紙の『お酒は飲むほうですか?』ってとこに、はいと答えたくらいですから。
「そこで4才くらいの女の子がついてきたみたいです」
なーにを言ってんだか。ウチにはもっとわかりやすい霊がいるだろうに。
「ちなみにボクの家にはなにかいますかね?」
「というと?」
「いや、霊とかオバケとか」
「いないですよ。家はぜんぜん大丈夫です」
やっぱりコイツは信用できん。軽いマッサージをして診療は終了した。先生は紙になにかを書き記している。
「供養の方法です。明日からやれば霊は成仏されますから」
線香の立て方と、唱えるべき言葉が書いてあった。
『近所の道路で私を頼ってきた女性の方、供養いたしますのでお茶とせんべいを食べて安らかにお眠りください』
翌朝、線香のニオイとともに、リビングから二人の声が聞こえてきた。
『近所の道路で私を…』
信じようとしないオレの代わりに、拝んでくれているらしい。ご丁寧にお茶とせんべいも置いてある。こうやって二人はオカルトにハマっていくのだろうか。とりあえず金の管理は任せないほうがよさそうだ。