会話のタネ!雑学トリビア

裏モノJAPAN監修・会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

有名馬主の馬券の買い方馬主には暗黙の了解ともいうべき階級があった

大学に入るころより、おぼろげながら馬券のスタイルが
確立され、ソコソコ勝ちの味を覚えるようになった。

軸が堅いと確信を持ったレースのみ枠で総流し。
稚拙な方法だが、大負けも大勝ちもない分、長く楽しめたものだ。
大学を2年で中退した後は、外
車の販売会社へ。高校の先輩が勤
めていた都内の大手並行輸入屋に就職した。
車というのは一般的にディーラー価格とよばれる定価がある。そこから割り引いて販売するのが並行のメリットだった。

ところが時代がバブルに突入すると外車を取り巻く環境は一変した。並行輸入車の需要が高まり、一気にプレミアがつき始めたのだ。
この機にオレは暖簾分けのような体裁で独立、都内で外車販売店の経営に乗り出す。取り扱ったのはベンツなら560SEL、フェラーリならテスタロッサなど。儲けは1台数百万から1千万に達し、しかも飛ぶように売れた。

気がつけば、独立わずか1年チョイで通帳には1億円以上の金額が記される。
金も女も手に入れた。あとオレが欲しかったものは、高校のとき
から憧れていたJRA(中央競馬)の馬主株だった。

営業がてら資格を持つ不動産屋連中に話を聞くと、馬主になるには以下3つの条件が必要らしい。
①預貯金が1億円以上
②年収3千万
③不動産の所有
これをクリアした後、親族に前
科者がいないかとか、禁治産者じ
ゃないかなど細かく調査される。
が、重要なのはそこからで、実は
この基準をパスしてもすぐには馬を持てないという。

どういうことかと尋ねると、中央競馬では厩舎の馬房数(馬の部屋)に限界があり、調教師にコネでもなければスンナリ入厩とはいかないそうなのだ。

さっそく、客の1人で馬主資格を持ったK氏に相談してみる。
「オレもそろそろ馬主になりたいと思って。何かいい方法ない?」
「そうか。先生(調教師)になら口は利けるけど。資格自体はどうにもならないなぁ」
「。。。。・・」
やはり通常の手続きを踏むしかないのか。落胆するオレにK氏が言う。
「共同馬主を利用してみればいいんじゃないか」
「共同馬主でまず、実績を作るん
だよ。で、彼らに相談するといい
んじゃないかな。JRAの審査は
厳しいけど自分1人だけでやるよ
り、間に入ってもらえば若干ラクになるからさ」

即行で資料を請求し、入会。間もなくオレは担当者と親しくなり、審査協力の快諾を得た。

が、それでJRAの基準自体が
緩くなるほど甘くはない。1億円
の預貯金と年収3千万はクリアし
たものの、「1億円程度の固定資産所有」という壁にぶち当たったのである。
オレは先のK氏宅を訪れた。
「審査用の不動産なんとかならないかなぁ」
「しょうがない。名義を貸してやるから、それで登録しなよ」
K氏の好意で相場価格2億円の
物件を1年間、名義だけ貸しても
らう。保証金込みで謝礼3千万と
高くついたが、背に腹は代えられない。

こうしてオレは一頭の馬を買い、晴れてJRA馬主の一員となった。栄えある馬主席
で下界の馬券ファンを見下ろす優越感。オレはついに実現させたのだ。

しかし……。
馬主には暗黙の了解ともいうべき階級があった。

それは、酒や女、その他生活費などを除き、純粋に馬道楽にかけられる小遣いの金額
でランク付けされている。
常に数頭の馬を所有し、10億単位の金を動かせる人間が1流とすれば5億前後が2流、5千万円程度が3流という具合である。オレが馬に使えるカネは、どう見繕っても2千万。要は最下級の4流馬主だったのだ。
実際、トップ連中のハデな遊び方を目の当たりにすると、声も出ない。中でもインパクトがあったのは1レース毎に枠番で軸を決定すると、そこから100万ずつ総流しする某有名馬主。

この人の場合、予想の一切をお抱えの専門家に任せていたから驚きだ。