昔から街頭での実演販売にはヤラセ、つまりサクラが付きものである。
馬券売場近くに現れる出目本売りしかり、 繁華街で昔はよく見かけた賭け将棋しかり将棋盤の周りで勝った 負けたと騒いでは通行人の目 を引きつけるのが彼らサクラ の役目なのだ。
ところで実演販売といえば、 駅の周辺で外人に売られているピョンピョン人形だ。
この人形、大きさは約10センチほどでピ工口 の絵が印刷されており、足の 部分はゴム。普通なら操り糸ナシでは立たせることすらムリなのに、売り子の声に従って直立し、ピョンピョンとジャンプしたり、挙け句には宙返りまでこなす。
一見、力ンタンなようでもある
最初は何かタネがあるのだろうぐらいにしか思っていなかったが、考えてみればこれもサクラの仕業には違いない
しかし、いったいどういうカラクリなのか。
さっそくある晴れた日曜日、 通りの両端には南米のフォルクローレバントや白塗り の前衛舞踏、弾き語りなどの パフォーマーから似顔絵描き までが熱揃いし、それぞれ通 行人の興味をひいている。その中に\彼らの姿があった。
「ハイ、ジョニージャンプー ハイ、ジョニー腹筋、背筋、 お辞儀ー」
ジョニーとは例のピョンピ ョン人形のことだ。値段はー 体600円、2個でー千円。 実際に売れているかどうかは ともかく、数十人の人だかり が売り子と人形の周りを囲ん でいる。
ただ、今まで目にしていた のと違い、売り子は日本人、 しかもヒップホップ系の格好 をした若い今風の男だ。彼は 自分の半径ーメートルの地べ たにピニールのパッケージに 入っなンョニーを並べ、その 中心で芸をさせる。
品にはお手を触れないで ください
半径内に入って 触ろうとする客に、男はクギを刺した
シカケがあるのは間違いない。 じゃなきゃ、そんな注意などしないだろ
「100年前からあるフランスのおもちゃです。タネもシカケもございます」
アレレ。 いいのか、
「シカケを人形の後ろに貼っ てください。そしてマジック か何かで黒く塗っておきます。 こうするとシカケが見えにくくなります」
糸か何かで操っているのが バレバレである。
「タネがわかったお客様、ニヤッと笑って立ち去ってくだ さい」
僕が仕掛けについて突っ込もうとすると、そうあしらわれてしまった。
が、悔しいというか情けないことに、ハッ キリとした仕掛けがわかりない。
どこかにサクラがいるはずなのだが…
売り子とサクラが 一緒に店じまい
ひとまずその場を離れ、数時間後に再び来てみると、やはりジョニーはビョンピョン 跳ねていた。人だかりもまだ
子様からお年寄りまでお楽しみいただけます
スーバーのアナウンスのような調で男が放ったそのとき
「じゃ、ふたっ」 すかさず20代前半の男が切り出した。
よく見れば キミ、さっきまで売り子をやっていたヒッブホッバーじゃないか。
なんてわかりやすいヤツラなんだよ。
そして、人形のカラクリを暴く動かぬ証拠を発見
取り巻きの最前列に、数時間前に見た渋谷系のニーチャン か同じ位置、同じポーズで立 っていたのだ
右肩にかけた 迷彩模様のショルダーバッグ にずっと手を突っ込み、とさ たま中でかすかにモゾモゾっ と動かしているのがわかる。
「そこのオネーさん、バーンとを撃ってみてくだ さーい」
売り子か目の前に陣取って いた中国人らしき女の子に声 をかけた、ショルダーの男は、 タイミングを逃すまいと、彼 女の一挙手一投足を凝視している
女の子が銃で撃つジェスチ ャーを作ると、バッグに入れ た手が微妙に動いた。
やはり、 人形を操作していたのはこの 男だったのだ
タ方5時、売り子と人形が一緒に ペコリと挨拶してお開きとな った
途端に数十人の人だか りが散らばっていく中、僕は その場を離れななかった。
男がサクラであること確かめねば。 注意深く様子伺って いると、なんと、ヒップホッ バーとトレーナー男、そして ショルダーの3人があいあいと店じまいを始める、最後まで肩すかしな連中だ
「さっきからいる方ですよね。 ひとつ、どうですか」
トレーナーの男が僕に話しかけてきた、聞けば彼ら、ある劇団の仲間で、これは日曜だけの副業とのこと商品はタイから仕入れているらしい。
もうバレちゃってるでしよ うね、立ち止まってもみんな買わずに妻通りですよ
男が苦笑いで言う
そりゃ そうでしょ。3人で6時間粘 って平均7、8干円妙に納得がいく。し ょうがない、売り上けに協力してやるか。
「じゃあ2つください」 「ありがとざいます」
彼は満面の笑みを浮かべながらージョニーを手渡してく れた。 家に帰り、パッケージを開けてみる!中には人形本体とそして釣り糸が入っていた。ビョンピョンジョニーの 力ラクリは、説明書を見てのとおリ