会話のタネ!雑学トリビア

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旅行関係の口コミサイトの評価最低のビジネスホテルに泊まってみた

 

ホテルや旅館の口コミ掲示板には、やたら低評価の宿泊施設がたまにある。
 
5段階評価で、10人中8人が星1つを付け、「最悪です」「二度と泊まりたくありません」といったコメントがずらっと並んでいるような宿だ。
 
悪所探訪は王道テーマである。星1つ宿にあえて泊まってみっか。

 

旅行関係の口コミサイトに、投稿者39人中33人もが星1つを付けている、冗談みたいに低評価のビジネスホテルを発見した。
 
『S』。料金はシングル1泊6千円(食事無し)と周辺相場よりもちと高いが、単に値段が高いだけでは、ここまでボロクソ叩かれないだろう。
 
そもそもサービスなんかに期待されてないはずのビジホでここまで叩かれるってのはどういうことなのか?
 
金曜、予約の電話をかけると、男性スタッフが出た。
「今日ですか。大丈夫ですよ。お一人でしょうか?」
「そうです」
「シングルで6千円になりますが?」
「わかりました」
「では、お名前と電話番号を教えて下さい」
 
ん?普通のビジホではあるはずの選択事項が抜けたような…。喫煙ルームか禁煙ルームかのチョイスはできないシステムなのかしら。オレ、タバコ臭い部屋は苦手なんだけど。
 
夕方。駅から5分ほど歩いて見えてきた『S』は、見るからにくたびれた建物だった。
 
入り口は薄暗く、外壁もあちこち痛んでいる。屋上のネオン看板の文字が歯抜けのように1つ消えているあたり、残念感が際立ってますな。
 
受付には、70代くらいのバアさんがポツンと座っていた。
「予約をした仙頭ですが」

「そうですか。えーと、じゃあここに名前と住所を書いてもらえます?」
 
宿帳が出て来た。…んー、ビジホに愛想を求めても仕方ないけど、最初に「いらっしゃいませ」くらい言ってもいいじゃないの。
 
宿帳を記入し、代金6千円を払う。バアさんがチェックイン手続きをしている間に、ロビーをぐるっと見渡した。
 
全体的にかなりオンボロだ。
天井はところどころ剥げており、フロアの一画は物置きになっている。古くさいにもほどがありますな。
「ここってどれだけやってるんですか?」
「30年くらいですね」
そんなもんなの?
「もっといってそうな感じがするんですけど」
「…いや、まあ、40年以上かな」
 
なんでサバを読んだんだよ。号室のカギを受け取り、部屋へ向かう。他の宿泊客は一人
も見かけず、廊下はシーンと静まりかえっている。今日の客は自分一人なのかな。
えーと、22号室は…2階のエレベーター前だった。さてどんな案配かしら?
シングルでの宿泊だが、部屋はツインだった。気になっていたタバコ臭はしないが、40年以上経っているだけあり、かなり年期が入っている雰囲気だ。
 
まず目についたのは、カーペットのシミだ。靴墨をこすりつけたように汚れており、素足で歩くと黒いモノがつきそうだ。
天井のクロスがあちこちめくれて痛んでいるのも気になる。貼られてから何年経っているんだろう。
何だか車の音がうるさいので、カーテンを開けてみると、窓の外をすぐ幹線道路が走っていた。にもかかわらずガラスは薄い。これじゃダメだよ。
 
電気製品は大丈夫だろうか。テレビは新しい。冷蔵庫は古い。あれ?
ベッド脇のスタンドライトがつかないぞ。コンセントはちゃんと繋がってるし、電球
のヒューズも切れてないってことは、壊れてるようだ。
エアコンは、かなり古そうな機種だ。壁のスイッチを押すと、天井の穴からファンの音が聞こえてきた。…あれ?
 
暖かい風が出てきてないぞ。ホテルなのに、エアコンが壊れてるとか、そんなバカなことないよね?
ところが5分経っても、10分経っても、部屋はまったく暖かくならない。これ、やばくない!?
身体も冷えてきてるし、風邪ひくのは勘弁だぞ。
とにかく身体を温めるため、風呂に入ることにしたが、そこでまた残念なことが…。シャワーヘッドが目詰まりしてるじゃん。何なんだよこの部屋は!
さすがにこれはもうクレームを入れるしかないな。
受付に戻ると、バアさんがいた。
「すみません。エアコンの調子が悪いんですが」
「そうなんですよ。電気屋さんに見てもらわないといけなくて」

そうなんですよって!
壊れたまま放置してるってこと?
「…部屋は暖かくならないんですか?」
「ファンヒーターがあるんで、出します?」 
出すに決まってるだろ!というか、最初から出しといてちょうだいよ!

先に部屋に戻って待っていると、バアさんがファンヒーターを台車に乗せてやってきた。一応ひと安心だが、この際ライトの件も言っとくか。
「それと、枕元のライトもつかないんですが」
「そうなの?」
バアさんがライトをゴソゴソ触りながら首を傾げる。
「私じゃわからないんで。今日は我慢してもらえませんかね?」
 
今日は、って、オレ明日帰るんだけど…。
「…誰かわかる人いないんですか?そうだ、昼間ぼくが予約の電話入れたときにしゃべった男の人は?」
「もう帰ったんですよ。今日は私一人だけなんで…」
 
何だかこっちが無理を言ってるみたいな感じですな。はい、もういいです。
 
ファンヒーターで部屋は暖かくなったが、夜はやはり国道の音がうるさく、寝付きがよろしくなかった。こりゃあ星1つだな。