会話のタネ!雑学トリビア

裏モノJAPAN監修・会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

都内の高級住宅街のド真ん中に激安の殿堂プラチナ・ドンキが

意識低い系が最もよく利用する店と言えば激安の殿堂ドン・キホーテと相場は決まっている。
正直そこまで激安の印象はないが食品から電化製品、衣類まで幅広い品揃えで営業時間も長い。暇さえあればついつい立ち寄ってあの歌を口ずさみながら店内を徘徊して気が付いたら小1時間経っていた、というのが我々低い系の理想の休日の過ごし方である。深夜になれば灯りに吸い寄せられる蛾の如く、何を買うでもなくわらわら集まってくるヤンキーたちも我我サイドの人間と言えるだろう。
 そんなみんな大好きドン・キホーテだが、リア充の中でも上位カーストに君臨する高級住宅街在住のマダムたちはドンキなんていう庶民の店を果たして利用するのだろうか。そこで調べてみるとなんと都内の高級住宅街のド真ん中に昨年「プラチナ・ドンキ」なるわけのわかんない店が堂々オープンしたという。まずなんと言ってもその店名が凄い。プラチナとドンキというまったく相容れない2つの単語をドッキングさせるという、前後のバランスをまったく無視した乱暴な言葉である。
 本来高級住宅街に何かしらの店が建つとなるとその業種によっては反対運動が起こりやすい。パチンコ屋や風俗店はもちろん、居酒屋やファストフード系も近所が騒がしくなるという理由で却下されるご時世だという。
 そんな中それらを全部足して割ったような存在のドンキが日本有数の高級住宅街にオープンしたのである。つまり金持ちマダムたちがゴーサインを出したとも取れる。
 彼女たちとしてもドンキが近所にあるなんて認めたくない、でも便利だし行きたい、その折衷案としてプラチナという単語を付けることによってどうにかプライドを保ったのかもしれない。「これは貴方たちがサンタのコスプレ買ってるようなドンキとは違いますよ」と。そういう意味がこのプラチナという言葉に重く込められているのではないかと察する。
 早速どんな様相なのか目視すべく、赤羽の立ち飲み屋をあとにして店が位置する都内一等地へと赴いた。
某私鉄駅で下車。閑静な住宅が立ち並び、綺麗にレンガ調に舗装された大通りから徒歩
15分ほどのところにそのプラチナ・ドンキは凛と、それでいてひっそりと存在していた。我々のいつも見ているようなどぎつい赤と青のペンギンのキャラクターの看板も存在しない。すべて白と金で加工されており、周囲の上品な雰囲気にすっかり溶け込み、よく見ないとドンキとすら認識できず、一見すると入口にデカい水槽のあるお洒落な熱帯魚ショップかなと思うほどであった。
 店内に一歩入るといきなり目玉商品としてセグウェイが箱積みで売ってるのが目に飛び込んできた。芸能人がたまにテレビで紹介する程度で実際セグウェイなんかで移動している一般人は自分が住む下町界隈では見たことないが、この店ではいきなり店頭のレジ横に3万2800円で売っているのである。疲れたから帰りはこれで帰ろうかしらなんてマダムが衝動買いするのだろうか。
 それに見とれていると「ちょっとゴメンよ〜」とやたらと髪のボリュームのある初老の店員がモップでこっちに向かって突進してきた。全店共通の黄色のエプロンなどはせず比較的ラフなシャツとパンツで初夏の涼しげなファッションを演出している。さすがプラチナともなれば店員のいでたちからしてワンランク上のようだ。
 さらに奥へ進むと食品コーナーがあり、野菜や肉、惣菜などが陳列されているが、なんとその一角には松阪牛専門のブースがあり、冷凍ケースの中には100グラム3600円という信じられない高値ですき焼き用の松坂牛が並んでいた。
 もうドンキである必要性を感じないが、えらいもんでそこには客はひとっ子一人いない。逆に比較的リーズナブルな国産ひき肉コーナーには頭にグラサンを乗せたマダムが今から黒魔術の儀式でもするのかってぐらいに大量に豚のひき肉を買い込んでいた。
 その脇の酒コーナーでは高級ワインコーナーなるブースがあり、これまた見たこともない高級ワイン&シャンパンが並んでいるがこちらも客は誰も足を止めておらず、別のマダムが壇れいに影響されたのか金麦を箱買いしている程度だった。
 他にも謎の海外産野菜ジュースコーナーなど他のドンキとは一線を画したラインナップなのはわかるが夕方5時半の夕食時にも関わらずそれらの周りには肝心の客がほとんどいない。
 プラチナとか威張りやがって、田舎のうちの親がイオンで買ってるものと同じじゃねーか…と思ってた矢先、なんと還暦過ぎのマダムがレジにセグウェイの箱を持って並んでるのを目撃。思わず二度見してしまったが、間違いなくセグウェイを1台クレカで購入している。残念ながらそれに乗ることはなく2階の駐車場へと向かってしまったが、我々がレジ横のガムをついでに買う感じで、マダムはレジ横のセグウェイを買っていっ
たのである。それをお前はどこで乗ってどこまで行くんだよという疑問も残るが、駐車場から出てきたそのマダムが運転するレクサスを自分は震えながら見送るしか術はなかった。
結局店ではいつものストロングゼロのみを購入。店の外に出て腰に手を当てて一気に飲み干すと震えがぴたりと止まったので胸を撫で下ろして帰路へと着いたのであった。