会話のタネ!雑学トリビア

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治外法権の町、大阪西成で丁半バクチやってみた

パチンコや競馬のようなしみったれたギャンブルなら全国どこにでもあるが、丁半バクチが堂々と青空の下で開かれているのは、日本広しといえどここしかないだろう。
治外法権の町、大阪• 西成で、勝つか負けるか2つに1つのギャンブルにうつつを抜かす。オレのようなただれた人間には天国のような遊びだ。地獄になるかもしれないけど。

午後3 時、御堂筋線動物公園駅から目的地に向かって歩く。
路上でわけのわからんビデオや家電なんかを売っている姿を横目にぐんぐん進んでいくと、周りは酒臭い公園をぐるつと回ってみる。
おっさんや、ブツブツひとりごとを発している老人ばかりになってきた。
西成警察署を過ぎ「1 泊800円」とドヤの看板が目立つ通りを抜け、三角公園へ。先ほどから感じるアンモニアのような刺激臭がいっそう強くなつた。公園をぐるっと回ってみる。街頭テレビの周りで寝転んでる人、道端で座りこんで酒盛りをするグループ。
いわゆるソッチ側のひとびとだ。丁半バクチはこの三角公園の周辺で開かれているというが、それらしき姿がない。もしかしたら定休日みたいなことなのか。
公園の南側の一角に、歩行者にするどい視線を浴びせながら立っている男がいるのがわかった。それも一人じゃない。3人ほどが一定の距離を置いて、まるで見張りをしているような雰囲気だ。たぶんここだ。しばらく待ってよう。
どこからともなく大きなベニヤ板を持った男があらわれた。見張りらしき男たちに挨拶しながら、そばにあるドラム缶の上に板を置く。
板はマジックペンで4つのスペースに区切られ、「丁」「半」の文字が2つずつ書かれている。やった、これだこれ!ゆっくり近づいて行くと、準備をしている兄ちゃんが声をかけてきた。
「いらっしゃいl両替しよか?」
「あ、じゃあお願いします」

千円札と引き替えに彼はカバンの
中から100円玉の山を手渡してきた。1枚、2枚、3枚…あれ、枚数がちょっと多いんですけど。
「サービスや。最初の両替は、100円玉喝枚で交換してんのよ」
景気のいいサービスだ。板の中央には大量のタバコが入った缶があり、これも自由に吸っていいと言う。続々と両替しに人がやってきた。その数十人ほど。否応なしに盛りあ
がってきた。いよいよ青空丁半がはじまる。ルールは簡単だ。ツボ振りがサイコロを同時に2つ振り、出た目の合計が偶数か奇数かを予想するだけ。
たとえば「2.4」なら丁、「2.5」なら半だ。当たれば倍になり、外れたらすべて持っていかれる。
「1.1」「1.6」だけは親の総取りだが、もしここに賭けていた
場合は5倍になって返ってくる。応ツボ振りがフルーツ缶の中サイコロを入れて振り、オッサンたちが丁半それぞれに賭けた。ほとんどが100円玉だ。
「もうないか〜もうないか〜」
ツボ振りが客を煽る。よし、半に100円いつとこう。
「勝負や。よっかいち(4.1)の半』
ラッキー、当たった。100円儲け。だが一喜一憂しているヒマはない。次いこ、次。「勝負や。ぐに(5.2)の半」
今度は負けた。じゃあ次も半が続くか?
「いちご(1.5)の丁や」
あちや1.今度は丁ですか。これでマイナス-00円。取り戻すにはやっぱり倍の200円を張るしかないよな。
こんな調子で張るうちにいつのまにか3千円ほど失っていた。確率2分の1なのになんでこうなる?缶コ—ヒ—を買って戻ると、子が5人ほど増えてさらに盛りあがっていた。盛況の理由は、丁に5 千6円を張ったジイサンが見事1 万円を手にしたせいのようだ。
「ほんだら次も5千円張っとくわ」
ジイサンは再び千円札5 枚を丁に置き、その運に乗っかるように数人が200円、500円と丁に張る。
「もうないか〜。勝負や」
ツボを開くと目はしぞろ(4.4)の丁。ジイサン、やるじゃないか。この大きな賭け方に周りの人間も影響されたのか、板に置かれる金額が一気にあがってきた。千円札が飛び交うようになったのだ。
オレも男、ちまちましたことはやりたくない。千円単位で勝負だ。作戦はひとつ。ジイサンに乗っかるのみだ。
ところがこのジイサン、次の勝負でも5 千円勝ったところで、どこかへ消えてしまった。なんてスマ—卜な遊び方だ。
ジイサンなき後も、場は千円札でヒ—トアップしている。どうしよう。勘にまかせて賭けたらすぐ負けるぞ。弱気になってしばらく『見』に回ったところで重大な発見をした。どうやらこのツボ振り、自在に出目を操れるようなのだ。
「ここは半やで」
「はい、丁や」
缶を才—プンする直前にこんな台詞が飛び出てきて、それがことごとく当たっているのだから。つまり丁半八クチは2分の1の運任せではなく、ツボ振りが何を出そうとしているかを客がよむ、そしてそれをツボ振りがいかに交わすかというゲ—厶なのだ。
そしてもうひとつ重要なことが。
このツボ振り、「半」も「丁」も、5連続以上は出してこない。4 回続けば、次は必ず反転する。クセなのか?
素人にすんなり勝たせてくれるか?
俄然、楽しくなってきた。酔っぱらいのオッサンたちに交じって、現ナマをやりとりするこの猥雑さ。まさにバクチだ。オレは100円チマチマ賭けで様子を見ながら、片側に4 回出目が続いたときだけ、逆目に3 千円を張る作戦に出た。これがうまくハマり、手元には千円札が20枚ほどに。そしてまた丁が4 回続いた。次は半だ
でもなんとなく嫌な予感が。素人にこんなにすんなり勝たせてくれるか?裏をかかれて丁なんじやないの?いったんそう疑い出すともう止まらない。丁こそが正解のように思えてくる。
周りのオッサンたちは大方が半に張っている。合計で3 万はあろうか。
オレは丁に一万円を張った。
「もうないかS 。勝負や!」
…ツボが開かれる(1•6)
出た、ここでかよ!
「じゆうろくさいや。こればっかりは堪忍してな」
ツボ振りは申し訳なさそうにしているが、内心ほくそえんでいるのだろう。チクショー。熱くなったオレは3 千円、5 千円と大賭けしていくもことごとく外し、マイナス2 万で勝負は終わった。
「兄ちゃんもう終わりか?残念やったなあ。また明日きいや」
隣のオッサンに冷やかされながら三角公園をあとにする。貯金を下ろしてもうひと勝負しようかと思ったが、舞い戻ればもう真っ当な人生を歩めないような気がして踏みとどまった。