会話のタネ!雑学トリビア

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レース鳩の育成をし出してから姉が変わった

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毎朝毎朝、鳩小屋の周りか鳩は延々とまわりっづける。だいたい2時間くらいだろうか。ご苦労なこった。姉ちやんは、鳩を空に出したスキに小屋掃除を始める。

フンカキという小さなクワみたいな道具を使って、床に落ちたフンを掻き集める。俺も時々手伝ってやるけど鳩ってのはなんで毎日あんなに大量のウンコをするんだろ、昨日きれいにしたはずの床が念朝はもうぬるぬるでくさいんだ。

鳩を飼い出して5年たった姉ちやんは、もっいっぱしの鳩飼いさんだ。今日のフンはいい。状態が上がってきてる(業界用語で鳩の調子が上向きということらしい)とか、「このフンの色とニオイがおかしい。」

病気を指で糞を触って鳩の状態をチェック鳩は毎朝空を飛ばさないといけないらしい。鳩小屋の掃除は大変だ。窓の目の細かい金綱にはふわふわの羽毛がびっちりっいているし、あらゆる物にうっすらと白く脂粉(鳩の羽にっいている白い粉)が積もっている。それを丁寧にふきとって、時には消慧木で内部を全部拭き清める。それだけで俺にはオドロキなのに、姉ちやんはもっとたまげるようなことをけろりとやるんだ。

「板をバーナーで焼いて消毒した方がいいのよね、きっと」

さて、拭き掃除が終わると全度は餌やりだ。姉ちやんが鳩笛を吹くと鳩が窓から一斉に入ってくる。お前ら単なる鳩のくせに姉ちやんによくなっいてるなあ。感心するよ。姉ちやんは帰って来た鳩に餌をやる。乾燥したコーンや大麦や麻の実やナッッみたいが入ってるとか、指先でこねながら批評するんだ。

「姉ちやん、汚いから止めろよ」と言ったら

「何いってんの。指でフンを触って状態を見るのが一番なのよ」

ってうっすらと鳩臭い姉ちやんが、俺の横を通っていった。

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前はきれいにマニキュアしてプアゾンの香りをさせて、色っぽかった。ところが、今は年がら年中作業服に鳩掃除用の白衣を着て、香水なんて絶対つけない。

「動物はね、規則的な生活が健康の基本なんですよ。餌やるのに、毎日、朝9時とタ方6時の時報に合わせて餌を蒔くんですよ。私が優勝できたのはそのおかげだと思います」次の日から姉ちやんはコードレス電話を鳩小屋に持ち込んで、いわれたとおりにし始めたんだ。俺は目頭が熱くなったよ。学校の勉強もそのくらい熱心だったら、きっときっといい暮らしできてたと思うよ姉ちやん……。

でも、勉強していた頃の姉ちやんより今の姉ちやんの方がはるかに幸せそうだ。俺はおやっさんに言った。

「おやっさん、鳩のおかげで姉ちやんもすごく幸せになったみたいです」

「お前はバカだなー。そういう風に単純に見ちやいけないぞ。俺はなあ、セイコのために鳩の世話させてるんじやないんだぜ。慈善じやないんだ」

おやっさんのいい分はこうだ。鳩は飼いたい。でも目分で世話する時間は無い。妻も動物が嫌いである。どこかに場所を借りて誰か人を雇えばいいが金がすごくかかるからいや。

「セイコに頼めばタダでやってくれるだろ?セイコだってなんだかんだ言って歳をとってきた。若い娘にわしを取られるのではないかとしばらく前から焦り気味だったんだ。だから頼めば二っ返事で鳩の世話をしてくれるに違いないと踏んだワケだよ」そんな計算があったのか。