会話のタネ!雑学トリビア

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歯が痛いから覚醒剤・どこまでもダメな女たち

歯が痛いから覚醒剤

一般的に女性の刑事事件は少ない。つい最近ニュースをにぎわせた、福岡県の看護婦グループによる計画殺人事件(あれはスゴイー)などもあるにはあるが、傍聴している感じでは全体の2割もない。とくに暴力絡みの事件はめったにないから、凶悪事件を起こすと世間は驚くのだ。

では、数少ない事件を起こすのはどんな女たちなのか。共通項はあるのか。今月はそこに焦点を合わせてみたい。女性が起こす事件の多くは覚せい剤取締法違反か窃盗。覚せい剤関係が数的に圧倒している。ただし、こんな小事件を狙っているマニアはいないだろうから事前の情報収集は不可能。片っ端から見ていくしかない。

朝イチで地裁へ行き、公判予定をチェック。やはり女の被告は少なく、スケジュールを組むのに一苦労である。有望そうなのを発見すると、他のと同時刻だったりするのだ。貴重な女の事件、裁判所はもう少し散らす配慮がほしいね。手始めに手近な覚せい剤から傍聴しようと529号法廷へ入室。

検察官の女は眠そうだし、弁護士は遅刻するし、早くもダレた雰囲気がいっばいだ。被告席には呑気そうな顔をした女が座っていた。どうやら執行猶予中にシャブをやったらしい。実刑確実だから弁護士も力が人らないんだろう。女はシャブと免許証偽造、詐欺で前科3犯。あとはいかにムショ入りの年数を少なくするかの攻防である。

この女、スナックに勤めているときに客から勧められてシャブ初体験。その後、ヤクザな男とできちゃった結婚し、子供ができるとすぐ離婚したくせに、執行猶予後は別の男(こいつも逮捕されている)と同棲を始め、再びシャブをやって御用。免許証偽造や詐欺も、自ら企てたと言うより男に命令されてやっている。主体性ゼロ。すべてが受け身なのだ。そのくせ妙に裁判慣れしているのか、シャブをやった理由からしてふざけている。

「アゴの骨の手術をしたんですが、そのせいで歯が痛くてたまらなかったんです。医者は相手にしてくれず、仕方なく覚せい剤を使いました」

おいおい、何が仕方なくだ。でもこの女、女検察官のネチネチした尋間をのらりくらりかわし続け、子供でも見破る嘘に固執するのだ。

「とにかく歯が痛くて痛くて」だと。やりたくてやったに決まってるだろうが。百歩譲って歯が痛かったとしても、すかさずシャブに走るなんて依存性の高さを裏付けることにしかならん。まったくだめだな。犯罪者だからだめなのではない。立ち直るなり、開き直って悪の道一直線に進むなり、逮捕をバネに人生の新しいステージに突き進もうとする気配がまったくないのである。

ま、この女は特別。次はもっと骨のある女をリポートできるだろうと思った。女だてらにガッツある裁判を展開し、傍聴席を熱くさせる役者がいるはずだと。しかし、現実はきびしい。次に見た女も、離婚歴ァリで前科2犯仮釈放中。出所後すぐにシャブを再開して捕まった確信犯だった。しかも持っていたシャブが1袋か2袋かでモメている。

「私は2袋買った記憶ありません」だって。ラリッていたら記憶も飛ぶってもんだ。ぼくが断言してもいい。間違いなくアンタの袋だよ、2つとも。

公園の便所で注射し子の目の前で逮捕。ガングロ女はマリファナ所持で捕まった。初犯でもあり、シャブに比べたら罪は軽い。執行猶予がつくケースだ。でも逮捕時、持っていた量が異常。7キロである。売人の男を手伝っていたらしい。

「彼が売人とは知らずに、遊び半分で吸ってしまいました」

1、5グラムもあればタバコ1本分くらいの量にはなる。7キロでざつと4600本分。どこの素人がそんなに持ち歩くんだ。不審に思わないとしたらアホである。

「男の名はマイケルで間違いないですね」

かー、出たね。この女、いわゆるシスターてやつですか。

「彼のことを信じていたので、まさか売っているとは・・」

よせよせ、マイケルにくっついてクラブで自慢げに一服している姿しか目に浮かばないよ。地味なスーツを着て化粧を薄くしても無駄。たぶん尻にタトウくらいは彫ってるね。
即判決が出て執行猶予3年。マイケルとは別れるそうだ。その間に就職でもし、顔を白くして適当な日本人と結婚でもするんだろうか。両親とともに廊下に出てきた女は、さっきまでの殊勝な態度はどこへやら、親を無視してさっさとエレべータに乗って去ってしまった。

へタするとどんどん堕ちていきそなタイプだ。堕ちるとどうなるか。その直後に典型に出くわした。歯痛女を3倍強力にしたようなシャブ中である。ルックス、ムード共にダウナー系っていいますか、法廷の雰囲気もどろりと暗い。

ざっとプロフィールを紹介しよう。恵まれない子供時代を経て、19才で覚せい剤デビュー。これまでに3回結婚して娘が4人いるが、前科を重ね、何年も獄中にいたためまともに育てた年数はわずか。今回も仮出所中だというのにシャブに手を出し、立ち直るチャンスを放棄して半年で塀の中へ逆戻り。すでに入生に疲れているのか、外見は34才とは思えないほど老けている。

入手ルートはテレクラ売春で知り合ったヤクザだ。セックスして1万5千円もらうところをー万にするかわりにシャブをもらっては打っていたという。ちっともイイ女じゃないから、相手の男はラリった女相手のセックスがおもしろかったか、シャブをさばくルートとして利用しただけだろう。
しかも、その中毒ぶりがだめすぎる。子供の一人を連れて歩いているとき、どうしてもガマンできなくなって、公園の便所で注射。ふらふらになって歩いているところを職務質問され、子供の目の前で逮捕されたのだ。なんちゆう母親だよ。吐き気がしそうだ。これじや、「今後は絶対やらない」と誓っても誰も信じはしない。弁護士は育ての親から今後の更正に責任を持つという上申書をもらったが、前回も同じパターンだったのに、出所後会いに行くどころか電話すらしていないのでは説得力なし。

しかも、向かった先がテレクラなんだもんな。聞いてて呆れる。それでも母親失格の被告は必死で情状を求めるのだ。

「クスリはもうやめます。自分のカラダ……いや子供のことを考えて、これからはマジメになりたい」

どうだろうこれ。ロ調はすごく真剣なんだけど、具体的なアテは皆無。将来の生活設計を尋ねられると途端にロごもり、「なんとかします」とわけのわからない答。何も考えていないのがバレバレだ。検察官が冷静に突っ込む。

「手に職はない、就職はむずかしい、経済カも弱い。これでどうして、なんとかなると一言えるのか」

そのとおり。お先真っ暗である。またクスリに頼ろうとしたとき、やつれ果てたこの女を頼るのはどんな男なんだろう。考えているうちに、こっちの気持ちまでヘビーになってしまった。

シャブ夫とヨリを戻すのか被告の名がカズミだったんで息せき切って駆けつけると坊主頭の凶悪そうな男だった。カンベンしてほしい。が、裁判が始まってしまった。しょうがない、見ていくか。

覚せい剤で前科ー犯、仮釈放中の再犯で実刑確実。しっかり離婚歴アリ。子供もふたり。それでも、言い訳はなし。腹をくくって罪を認め、服役する覚悟はできている。うんうん、男はわかりやすくていいわい。
しかし、気になることが。派手めな服装とメイクの女が、心配そうに被告を見つめつつ傍聴席に座っているのだ。妹か、現在の彼女か。違った。元妻が証人として来廷したのだ。でも、なんのために。尋問役の弁護士によれば、元妻は半年前、被告の暴力に嫌気がさし、離婚に踏み切ったとのこと。いわば離婚ホヤホヤである。それなのに、被告に面会すること20回。差し入れなど献身的に面倒を見てきた。
別れたとはいえ元夫婦だ。男の将来を案じる優しい気持ちの表れなのか。子供の父親ではあるわけだから、立ち直ってもらわねばと思ったのかな。きっとそうだ。根っからのシャブ中ではないと言いにきたんだ。ところが元妻は、とんでもないことを言い出したのである。

「出所したら、彼と再婚してもつ一度やり直します。そのためにも、しっかり更正してほしい」

耳を疑った。なんでそうなる。イカンよ、その選択は問違いだ。もし愛情が残っていたとしても、ここで突き放さなければまた同じことの繰り返しになる。アンタはそれでいいだろうが、子供が可哀想じゃないか。

そもそもアンタは仮釈放のシャブ使用すら防げなかった女だろう。目先の人助けとか同情とかで、うかつに寄りを戻すなんて……。