会話のタネ!雑学トリビア

裏モノJAPAN監修・会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

損保会社の常勤理事ってホントにおいしい商売

コトの始まりは昨年9月、学生時代からの友人・青木から入った1本の電話だった。
「保険会社の理事をやってくれって頼まれたんだけど、おまえどう思う?」
いつになく真剣な声だ。とりあえずその日のうちに待ち合わせ、話を聞くことにした。
青木は郊外で手広く事業を展開する金持ちのボンボンである。若いころは放蕩息子と言われもしたが、いまじゃ遣り手の二代目として評判もなかなか。オレとは大学のヨット部で知り合い、今でも年に何度かは一緒に酒を飲む仲だ。
その日、料理屋の個室に腰を落ち着けると、青木は「オヤジの代から取引のある金融機関の話なんだけど」と前置きした上で、事情を話し始めた。
1カ月ほど前、当の金融機関に設立3年目の損保会社から融資の申請があった。審査すると、事業内容は申し分ないのに業績が上がっていない。よって、経営陣に問題があるのだろうと一度は融資を断った。
それを聞いて損保会社が泣きついてきたそうだ。このままじゃ倒産も否めない。何とか融資を可能にする方法はないかと。
「そこで担当者が考えたらしいんだ。このまま潰すのはもったいないから、誰か事業実績のある人間を理事として送り込んで経営を立て直せばいいんじゃないかってさ。で、オレに白羽の矢が立ったわけ。佐島、おまえ保険に詳しかったよな。どう思うよ」
「引き受けるよ。こんなウマイ話、断ったらバカだぜ」
仕事柄、保険屋とのつきあいは深い。それを見るにつけ、保険ほど儲かる職種はないと思い知らされる毎日だ。なんたって他人の金を集め、それを元に利殖に励めばいいのである。
昨今は大手保険会社が破たんするなど珍しくもないが、すべては欲をかき、多角経営に乗り出した結果だ。地道にやれば損をするはずがない。
それに何よりその会社は、JAの共済を扱ってるというのである。ご存じのとおり、共済は民間の保険商品とはまったくの別モノだ。
通常の保険会社は、入ってきた掛け金に対しどれだけ保険金が出て行くかのりスク計算が必要不可欠だが、共済は国や自治体(または一定の地域や集団)の相互扶助が目的。よって、代理店は契約を取れば掛け金の中から手数料を引いて上部組織に納めるだけ。
加え、共済は民間の保険に比べ掛け金が安い。「あなたが今入ってる保険と同じ補償で、掛け金がこんなに安くなるんですよ」と営業すれば、他社からの切り替えや上乗せ契約も取り放題だ。
「つまり、共済は保険会社側にいっさいのリスクがないんだよ。おまけにこの不況だろ。共済への切り替えが流行ってるからバヵスヵ契約取れるわ、取ったら取っただけ儲かるわ、後で保険金を支払う必要ないわで、こんなウマイ商売はないんだって。保険代理店はみんな共済をやりたがってるけど、認可が取れないから仕方なく民間の商品を売ってるわけ。オレだったら二つ返事で引き受けるよ」
保険業界の仕組みを一からレクチャーしてやると、この話がどんなにおいしいかわかったらしい。
「よし、実家はオヤジに任せて保険屋をやってみるか。でもオレは保険に関しちゃ素人だから、佐島、おまえも理事として名前を貸せよ。ときどきアドバイスしてくれりやいいからさ」
こうしてオレは、損保会社の非常勤理事となったのである。正式に理事としての辞令が下りたのは今月1日だった。といっても、オレは非常勤。会社に通う必要はない。
「社員は全部で8人なんだけど、みんな前職は食品会社に服飾メーカー、貿易とてんでんバラバラ。どんな経緯で集まったんだろうな」
出社初日、青木はオレを呼び出して会社の様子を愚痴った。共済を引っ張ってくるだけのコネや力はあるはずなのに、会社としてのまとまりはゼロ。想像以上に酷い職場らしい。
「その道のベテランばかりだから、なかなか気持ちの切り替えができないみたいんだろうな。ちょっと調べただけでも保険と関係ないことばかりやってるんだ」
貿易会社に泌年勤めてた社員は、海外から安い雑貨を輸入するも、販売先を開拓できず会社の倉庫に在庫を山積みにしていたらしい。その上を行くのが元食品メーカーの課長をやってた専務で、なんと会社直営のファミレスをオープン。赤字続きで、今は開店休業状態なんだとか。
「誰か止めるヤツがいなかったのかね。まったく3年持ったのが不思議なぐらいだよ。本当なら全員クビを切りたいとこだけど、いきなりリストラもできないしな」
「なあ、田中と宮本、それに渡も理事ってことにしてブレーンになってもらおうぜ」
税理士の田中と、某国会議員の縁戚に当たる宮本、現職市議もヨット部の同期で、昔からツルんで遊んだ仲間だ。それぞれの場所で経験を積み、それなりに知恵も付く。
「オレがセールストークを考えるから宮本や渡のコネで大口契約が取れそうなとこ紹介してもらえよ。で、田中が帳簿のチェックすりや完壁だろ」
正直、オレはそれほど期待していたわけじゃない。理事とは名ばかり。仕事らしい仕事などせず、飲み屋の個室を会議室代わりに酒を飲みながらああだこうだと勝手なことを言い散らかすだけのこと。遊びの延長というか、昔の仲間で騒げてラッキー程度の認識だった。
が、さすが青木は金融機関が全幅の信用を置く青年実業家だった。おっさん社員たちの尻を叩きつつ、翌月にはなんと1千万近い売上げを記録したのだ。
「佐島の言ったとおり、保険ってのは簡単だな。急激な業務展開は無理だけど、やればやっただけの結果は出るもんな。まあ、最初はこれだけしか出せないけど…」
いつもの飲み屋に集まったオレたちに、青木はそう言いながら5枚の万札が入った封筒を寄こした。
同じ店の子を愛人にすれば経費が節約できる
まったく持つべきモノは友である。今年になって社費を着服していたおっさん社員の肩を叩いて4人を円満退社に持ち込み、代わりに若い営業マンを確保。会社は順調に実績を伸ばし続けている。
オレは1度も会社に顔を出したことなどないのに、5万だった理事手当が4月からは10万円に倍増した。
な-んだ、たったの10万か。そう思うかもしれないが、理事のウマミは現金じゃない。接待費だ。保険という仕事柄、取引先を接待するのは当然のこと。我々5人が飲み歩くぐらいの金はいくらでも融通が利く。
「今日、理事会やるか?他の3人も顔を出すってさ」
夕方になると、青木から携帯に電話が入る。カミさんには手当をそのまま渡し、理事がいかに大変な仕事かをコトあるごとに吹き込んでおいたので嫌な顔をされることもない。
最初のうちはそれこそキャバクラだソープだとハシゴして歩いた。領収書さえ出れば全部、経費で落ちるのだ。
そんなある日のこと。宮本が、
「オレの知ってる店に行こう」と言い出した。どこに連れていってくれるのかと思ったら、繁華街のど真ん中にある韓国クラブである。20才になるかならないかの女の子がニコニコと我々を出迎え、宮本の横で世話を焼く。どうやらヤツの愛人らしい◎
「5人が別なとこにオネーチャンを作ったら5軒ハシゴしなくちゃならないだろ。どうせならここ1軒で済まそうぜ」
確かに若い愛人を固りのは男の夢だ。しかも宮本の言うとおり、特定の子を作った方が金もかからない。だからといって、韓国娘でなくてもいいような気もするが…。
「別に嫁さんを探そうってわけじゃなし、そんなに考える必要ないって。嫌になったら別れりやいいんだし」
それから3日間、オレたちは店に通い詰めて登録してる女の.をチェック。それぞれ気に入った.にアタックを開始した。
オレが選んだのは中国と韓国のハーフというの学生だ。アジア人にしては彫りの深いエキゾチックな顔つきがそそる。3日目、閉店まで粘り「ボクの彼女にならないか」と誘うとあっさり領いた。
保険会社の非常勤理事としてオレがもらう報酬は、現金10万円。
プラス、オネーチャンの家賃に小遣い。その他、本業の客を連れて行って飲む金もすべて経費で落とすから、しめて月に100万近くはいくだろう。
昨日の理事会では、オネーチャン同伴の慰安旅行について話し合った。ハワイに行きたいと皆が主張したのに、宮本の彼女がオーバーステイということでボツに。
「いっそのこと、フィリピン娘に乗り換えないか」
「いや、ロシアの方がスゴいらしいぞ」
いや-、非常勤理事ってホントにおいしいい商売だ。