会話のタネ!雑学トリビア

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アマチュアバンドマンを騙す悪質ライブイベンターにご注意

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●聞き慣れない仕事なんで、まず内容をかいつまんで説明してほしいんだけど。
○簡単に言うと、ライブイベントを主催して、そのバンドから金をせしめるってことです。
●バンドから?客じゃなくて?
○ええ。アマチュアバンドのライブって、彼らが自分たちで金払って会場借りてるのは知ってます?
●いや、よくわかんない。
○そうですか。じゃあ基本的なとこから行きますね。素人のバンドマンたちってライブやるときはブッキングってのをやってるんです。オーディションテープをライブハウスに持ってって、じゃあいついつにライブやってもいいよとOKが出ると。
●うんうん。
○でもそれはもちろんダダじゃなくて、ライブハウス側がバンドにノルマを課すんですね。たとえば2千円のチケット30枚はさばいてくれといった具合に。
●その6万円がライブハウスの収入になると。
○はい。ノルマ以上売ればギャラ。
●うんうん。
○はい。ノルマ以上売ればギャラもらえたりもするんですけど、まあだいたい売れ残るから、足りない分は自前で払うわけです。
●小遣い出し合って。
○だいたい同じ日に3バンドは出ますから、1バンド6万円としてライブハウスは18万の儲けですね。
●なるほどね。よくバンドやってる友達にチケット買ってくれとか言われるのは…。
○あれはノルマをこなしてるんです。音楽を聞いてほしいわけじゃなくて、自分たちが懐痛めないで会場借りたいだけだから。
●ふ-ん、でもそれだったら、オーディションなんかしないでどんどん貸してやったほうがライブハウスは儲かるよね。
○そのとおり。だからオーディションってのは形だけで、よっぽどのことがない限りどんなバンドでもOKなんですよ。
●ライブなんてのは、金さえ払えば誰でもできるってことだ。
○で、これだけなら僕が入り込む余地はないんです。バンドとライブハウスが直接契約してるわけだから。そこで考えついたのが、イベントを主催してバンドを集めるという形で。
●それがなんで金になるわけ?
○単純に言うと、僕がライブハウスを借りて、バンドにそれぞれノルマを与えるという仕組みですね。
10万で会場を押さえて、バンドに18万のノルマを課せば8万儲かるじゃないですか。要は、ライブハウスとバンドの間に入るブローカーみたいなもんです。
●ちょっと待って。それなら、バンドにしてみれば自分でブッキングでライブやったほうがいいんじゃないの?小西君のイベントに出れば、会場代以上のノルマがあるんでしよ。
○そこなんですよ。なんでヤツらが僕のイベントに参加するのか。
●うん、なんでよ。
○まず、イベントだからいろんなバンドが集まるわけで、1バンドあたりのノルマはそんなに高くないというのが1つ。
●ボラれてることになかなか気付きにくいと。
○そうです。後、これはすごく感覚的な話になるんですけど、連中はイベントって言葉に弱いんです。

●ほう。
○あの、通常フッキングってのは学園祭の発表会みたいなもんなんですよ。少ない客に自分のマスターベーション見せつけてるわけですよね、要は。
●イベントは違うんだ?
○違いますね。まず普通のイベントっていうのはイベント会社が主催してるんです。ちゃんとコンセプトが決まってて、それなりのゲストを呼んだりしてるから、そこそこ集客も見込めるんですね。だから出演したいと言っても実力がなければ無理なんです。
●つまりイベントに出演することイコール実力バンドみたいなイメージがバンド界にはあるわけだ。
○ええ。しかもイベントだと、知らないお客さんや業界関係者が来てるかもしれないってんで張り切るわけですよ。
●ふ-ん、そういうもんなんだ。でも小西君のイベントは、そんなしっかりしたものじゃないでしよ。
○だから、そこでちょっとしたコツがいるんですけど、それは後で話しますね。
声をかけようと思ってるんだ
●じゃあ具体的にまず仕事は何から始まるんだろ。
○最初は会場を借りるとこですね。これは電話一本です。企画も何もいらない。ライブハウスに日時とイベント内容と出演バンド数を伝えれば、「じゃあ押さえておきます」ってなりますから。

●費用は?
○だいたい地方のキャパ150人程度のとこだと10万くらい。大阪、名古屋で25万、東京の鹿鳴館クラスで30万かな。
●そのクラスでも電話一本で取れるんだ。
○ええ、後墜里皐だと新宿の「ロフト」渋谷の「ONAIREAST」とか。
●へえ、結構有名どころじゃない。プロも演ってるよね。
○そこが大事なんですよ。地方のバンドマン君たちは、そんな有名な箱で演奏できるってことに舞い上がるんですから。
●え、地方から呼ぶの?
○やっぱり田舎モンのほうが引っかけやすいですからね。
●じゃあ、そのバンド集めの話を。
○「バンドやろうぜ」って雑誌知ってます?
●うん、なんか聞いたことあるね。
○アマチャバンドのバイブルみた
いな雑誌なんですけど、そこにバンドの告知コーナーがあるんですよ。いついつライブやるんで来てくれよ-みたいな。
●はいはい。
○地方のバンド君たちが、カッコつけるわけですけど、住所や電話番号も書いてあるんですね。
●ファン獲得のためにね。
○そうそう。それを見てかたっぱしから電話かけるんです。なんとかミュージックとかなんとかコーポレーションとか、適当な会社名を名乗って。
●イベント会社っぽい感じで。
○「新宿のロフトでイベントやるんだけど、ちょっと君たちのことが気になってね」とか。
業界の人から直々に。
○もうそれだけでヤツらにとっちゃとんでもないことですよ。で、ここから出演の約束を取り付けるんですが、当然そいつらの音楽なんか聞いたことないんで。
●写真見ただけだもんね。
○ええ。でも「こういう色のバンドが欲しかったんだ」とか言って持ち上げるわけです。
●色(笑)。
○「どういう音楽やってんの?へえ、怪しい感じなんだ。やっぱりモジュレーション系なのかな。写真から伝わってくるよ」とか。伝わるわけないんですけど。
●まあね。
○「こいつ、めちゃくちゃイケてるねえ。シャズナのイザムみたいにキャラを立てれば絶対売れるよ」っておだてたり。
●ベタなとこ出してくるね。
○ここのポイントは中の1人を軽くけなしとくことです。「ちょっとこいつはヤバくない?」とか。完全にヨイショするんじゃなくて、ちゃんとバンドを分析的に見てるんだってことをアピールしないと。
●けなしたヤシが雷話の本人だったりして。
○ははは、そういうこともあるんですけど、まあそんときはそんときで。
●他は?
○後は、「どのくらい動員あるの?」って聞いたり。だいたい今までで一番入ったときを言ってきますから「へえ、30人か。それだけ入ればイベントも期待できるね」とか、とにかく持ち上げるだけ持ち上げる。
●でもそんなので参加を決めたりするもんなのかな。いくらイベントって言葉に弱いとはいえ、チケットのノルマだってあるわけだし。
○もちろん付加価値を与えてやらないといけないんで、半メジャーぐらいのバンドを出しておくんです。ちよいと有名なバンドなんですけどね。振ろうと思ってるんだ(笑)。
○そう、思ってるだけです。消火器売りの「消防署の方から来ました」と一緒ですね。
●なるほど。
○後、連中は「チケットぴあで発券するから」って言葉に弱いんですよ。
●ほう。
彼らはラルクだなんだのチケットはぴあで買っても、自分たちのライブチケットは手うりしてたわけじゃないですか。
●そうだね。
○それがイベントは「ぴあで発券するから」って言えば、もうラルクと同じ土俵に上がった気になっちゃって。
●そんなことできるの?
○これは意外と盲点で、ぴあって簡単に登録できるんですよ。適当な会社でっちあげて、1万5千円払って登録しておけば、発券して
くれるんですね。1枚につき10円取られるんですけど。
●確かにカッコ良さげではあるような。
○ぴあ発券ってのが一種のブランドになってるんですね。でも実際にぴあで買うヤシなんていないわけですけど(笑)。
●だろうね。
○するとだいたい「他のメンバーと相談します」って返事があるから「後2バンド分しか空いてないから早めにね」とあせらせておけば、すぐ電話してきますよ。
●ほとんどはその「バンドやろうぜ」から集めてくるんだ。
○ライブハウスとか楽器屋のチラシも見ますね。
●路上で歌ってる連中とかはどうなの?
○ああ、ありますね。新宿のコマ劇場前でギター弾いてるヤシらに声かけたことも。
●よくいるよね。.
○「これこれこういうイベントがあるんだけど、出てくれないかな、お客さん入るしさ」って。そしたら「え、いいんですか、俺たちで」とか喜んじゃって。
●ほうほう。
○で、どう聴いても尾崎豊なんだけど「君たち、これオリジナル?あ、カバーなんだ。そっか、それだとキッイなあ」って。
●キッイんだ?
○いや、いったんおち込ませるほうがいいんですよ。その後で「ちょっと掛け合ってみるから」って携帯取り出して1人芝居するんです。「いい子たちがいるんです。センスもいいし、今回だけなんとかなりませんかね。あ、大丈夫ですか。どうもすみません」という具合に。
●落胆させてから拾い上げるのか。考えてるね。
引っかけやすいのはビジュアル系
●でもやっぱりノルマの話を出したら、引くヤシらとかいるんじゃないの
○まあ気の効いたヤシなら、最初の段階で条件は?

って聞いてきますよね。
●通常ブッキングの経験とかで、ライブにノルマがあるのは知ってるわけだもんね。
○ええ。でも「その話は参加が決まってからにしよう」と、まずはさっきの持ち上げトークに引き込んでしまうと。
●でも、いずれはノルマのことも伝えなきゃいけないじゃん。
○もちろん。そこでのポイントはチケットを1枚2300円に設定することですね。
●2300円?
○ええ。1回のイベントにだいたい5バンド呼ぶとして、僕は全部で40万、1バンドあたり8万円取りたいって考えてるんですよ。となると、1枚2千円のチケットだと、ノルマを40枚こなしてもらうことになりますよね。
●そうだね。
○でもアマチュアバンドにとって40枚ってのはキッイ数字なんですよ。ちょっとさばき切れない。
●40人も知り合いはおらんと。
○かといって1枚2500円×枚にすると、それもまた高すぎてキッイってことになる。
●2500円では誰も買ってくれない。
○ええ。だから僕はだいたい1枚2300円の記枚にしてるんです。これだとヤシらもなんとなくイヶルかな?って錯覚するんですね。実際はさばけなくて自腹切るのがほとんどですけど。
●8万×5バンドか…。
○全部で40万。そこから会場代を仮に25万払えば、残り15万が懐に入るわけです。
●ポロ儲けじゃん。
○ただ実際にはその他にも、当日にアンプとかマイクとかの「機材費」を取るからもうちょっとヤツらの負担は増えるんですけど。
●そんなものにまで金かかるんだ。
○いちいちバンドが入れ替わるたびにマイクやアンプ交換してたら面倒じゃないですか。だから、これ使わせてやるから機材費を払えと。元々、ライブハウス備え付けのものなんですけど。
●本来はダダなのに…。やっぱりこういう連中が狙い目だみたいなのはあるの?こんな音楽をやってるほうがいいとか。
○いちばん引っかかりやすいのはビジュアル系ですよ。あいつら頭は悪くないんですけど、夢を追いすぎるとこがあるんですね。逆にゆず系ってのは「十分趣味でやっ
てます」みたいなノリが多いからあんまり飛びついてこない。
●そんなもんか。会場を押さえた、バンドも集まったと。次は?
○ノルマ用のチケットを送りつけて、後は当日を待つだけです。
●イベントの名前考えたり。
○そんなの適当です。ビジュアル系メインなら「サーカス・オブ・エデン」とか「漆黒のアスファルト」とか。
●そりゃアスファルトは黒いよ。
○いいんですよ、それで。ジャンルどちや混ぜなら「OHYEAH-」とか。
ただのかけ声じゃん。どんなイベントなんだよ(笑)。
「オールジャンルのミックスフェスタだよ!」
会場を押さえてバンドをフッキング。ここまでの作業は電話をかけるだけなので、部屋にいながらにして済む。かかる費用も雑誌代のみだ。
しかも彼の話を聞けばわかるように、すでにもうこの段階で収支は計算されている。残る作業は、つつがなく当日のイベントを終わらせるだけだ。

●そんなに手当たり次第に声かけてたら、当日集まったバンド連中は不思議がらないのかな。なんだよこのイベントって。
○それはもう開けてビックリ玉手箱ですよ。ハナからコンセプトも何もないですからね。「OHYEAH!」ですから。
●突っ込まれたりしないの?
○いや、ジャンルがまたがってるからって不審がったりはしません。僕も最初に楽屋で言うんですよ。
「なあ、みんな。今日はオールジジャンルだよ」って

○あ、そうそう。ここでさっきの話に戻るんですけど、ライブの前に各バンドからチケットの余りを回収するんですね。
●チケットを?
○本来は、売れ残りはそのままバンドが持ってても捨ててもいいんですけど「ちょっと当日券が不足したから、余ってたら回してくんないかな」ってもらうんです。
●なんで?
○ここでライブハウスと僕との関係がからんでくるんですよ。さっき電話一本で予約するって言いましたけど、この契約形態ってのは大きく分けて「ホールレンタル」と「チャージバック」の2通りなんです。
●ふんふん。
○ホールレンタルはすごく単純で、1日10万円とか15万円とかあらかじめ決まってて、それさえ払えば後はご自由にってスタイルです。
●規定の金を払って借りたら、後は何をしようが勝手だと。
○そういうことです。盛り上げたければダダで客を入れてもいいし、儲けを出したければチケット売ってもいいし。
●チャージバックは?
○これは売り上げをライブハウスと主催者が折半する形です。たとえばまずハウスに2300円のチケットを200枚作ってもらうとしますよね。そのうち仮に100枚売れたら、売り上げをライブハウス側に渡すと。
●うんうん。
○で、ライブハウスがその半分のをバックしてくれるというシステムです。
●てことは、全然売れなかったらハウスは儲からない。
○そういうことです。でも最低補てんがあって、それは払わなきゃいけないんですけどね。
●つまりハウス側は客が入りそうならチャージバックのほうがありがたいし、見込みがなかったらレンタルにしたいわけだ。
○だからだいたい最初はどこもレンタルから始まって、信用がついたらチャージバックにさせてくれるんですけど、僕はもう何年もやってるんでチャージバックがほとんどです。
●うんうん。
○で、このチャージバックの精算は、売れ残ったチケットを返却することで成り立つんですよ。200枚のうち100枚返すってことが、100枚しか売れませんでしたってことの証明なんです。
●はいはい。もし50枚しか返さなければ「150枚分の売り上げを渡せ」となると。
○そういうことです。
●でも小西君の場合はバンドにノルマを課してるわけだから、必す40万は入ってきて…。
○正直にその収入を「完売しました」って申請すれば、僕の儲けは20万だけど、10万円分は黙っておいて「30万円分しか売れませんでした」って言っておけば、チャージバック15万円プラス10万円の25万円になる。
●なるほど。つまり売れ残りが多いほど小西君の実入りは大きいんだ。それでチケットを回収するわけか。ライブが始まったら何やってんの?
○何もしなくていいです。僕の仕事は、時間を押さないようにするだけですから。
●進行管理ね。
○「はい、よろしく」「はい、お疲れさん」って楽屋で声かけてるだけ。
●演奏見なくていいの?
○いいですいいです。とにかく時間を短くさせることだけ。電話では持ち時間決めてても、ミーティングでちょっと余裕見て20分にしてくれるかな、直前になって「やっぱ今日は1曲削ってくれるかな」って、だいたい1バンド20分くらいに縮めるんですね。
●じゃあそいつらは加分の出演のために8万円払ってるわけだ。
○バカでしよ。メンバー全員で財布広げて、小銭までかき集めて、
「これで8万9千円あると思うんですけど、確認してください」って。さっきまで髪振り乱して歌ってたヤツらが小さくなって。
●払わずにバックれるやっとかいないの。

○いないです。今まで延べ1000組は呼んでますけど、逃げたのは1組もいないですね。往復の交通費なんかも入れたら、すごい出費なんですけど、みんなカッチリ払います。
●有名ライブハウスのステージに立った実績が残るからいいやって。
○そうそう、地元帰って自慢してるんでしよ。