会話のタネ!雑学トリビア

裏モノJAPAN監修・会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

郵便局のお役所対応に激怒してしまった話

みなさんは区役所などを訪れた際、いわゆるお役所仕事にハラをたてた経験はないだろうか。やれ部署が違うだの別の圭最が必要だの、横柄な態度を取られた上に窓口をタライ回し。これでは力チンと来るなという方が無理な話だ。背中に日の丸を背負っているせいか、とかく公務員という人種にはサービス精神の欠けた輩が多い。

が、それをとがめたところでまたタライ回しにされるのがオチ。くだらない時間を費やすなら、その場を我慢した方がラクだろう。オレもかつてはそうだった。しょせんコイツらに文句を言っても効き目はない。あきらめつつ、今までもやり過ごしてきた。

しかし、世の中には我慢できることとできないことがある。オレの地元、M郵便局の対応はまさにその後者だった。

物心ついたころからオレは、,ブルース・リーグッズの収集を生きがいにしてきた。約20年間で集めたブツは百点近く、そのーつーつがプレミア品である。金額にすれば200万は下らないだろう。最初はすぐに飽きるものと思つていたが、飲料水メー力ーに就職、結婚してからもコレクター熱は冷めない。

どころかインターネットの普及とともに一層拍車かかかり、手元にあったグッズを自ら売り始めた。気がつけば週に3-4の小包を"ゆうぱっく"や普通郵便でヤリトリするようになっていたのである。そんなオレが、ヤフーオークションで激レアシングルを発見したのは3月下旬のことだ。

『ブルース・リーのグリーン・ホーネット』キングレコード最低でも2-3万の価値はある一品。もちろん、こんな、お宝をオレが見逃すワケもなく、さっそく入札に参加、格安で落札する。金を振り込んで、2週間後の4月13日午後4時半、仕事から戻ると郵便受けにー枚の不在通知書が届いていた。

ゆうぱっく風間様11時10分頃〇×様より荷物を…M郵便局

「ちくしょう。ふざけんな」

待ちに待った荷物が送られてきたのになぜ怒る、と思われるだろう。が、これにはもちろん理由がある。我が家は共働きのため、午前中、家にいるのはペットの猫だけ。そのため送り主には、オレが仕事から戻る〈夜配達〉を指定してもらっていたのだ。到着しだい、すぐに荷物を受け取りたいと考えるのはコレクターなら当然の心理だろう。

もちろん、発送側の記入漏れの可能性はある。が、郵便局へ荷物を受け取りに行くと、問違いなく時間指定の記載あり。ミスったのは郵便局だ。細かいことには違いないが、オレは心底ハラがたった。というのも、ー週間ほど前にも同様の手違いがあったばかりなのだ。

「おい。ここにキッチリ指定時刻が書かれているじゃないか。キチンと配達しろよ」

オレは力ウンターの若い男に思わず注意した。が、相手は

「すいません」とひとこと言って、後は怯えた表情でうつむくだけ。まったく、ブッたるんでやがる。しかし、そんなことより今はブルース・リーだ。長年探していたレコードがやっと手に入ったのである。一刻も早く現物を見てみたい。オレは舞い上がる気持ちを抑えきれず、一目散で車に向かった。

ん?イヤな予感がしたのは封筒をあらためて持ち直したときだ。ヘフラプラプラと妙な感触が伝わってくる。もしかして・・、大急ぎで中身を確認する。と、なんてことだ。レコードの端の部分が欠けているではないか。我が目を疑うとはこのことだろう。キッチリ梱包されているのに、どうしてこんなことが起こるのか。オレが怒り爆発で局へ戻ったのは言うまでもない。

「おい。配達の責任者を出してくれよ。レコードが割れてんだけど」「えっ?」

「配達された荷物が壊れてたんだっつのー」「ただ今、集配課長は・・・」

「他に誰かいるだろ」「郵便物の破損につきましては、6千円まで補償できます」

「はあっ?おめえ、ナメてんのか。いいから上のヤツを出せっー」

「後で電詰させますから」

ノラリクラリとつぶやく、先ほどの若造。謝罪のーつすらない。が、その日オレはどうしても外せない用事があり、局からの電話を待つしかなかった。
「私の少ない給料から1万円を差し上げます」

4月17日午後4時半、職場からM郵便局へ。対応に出てきたのは酒井課長(仮名)といつオッサンである。「コチラヘ・・」ヘラヘラした態度で、カウンター奥に並んだ机のーつを勧められるや、オレは途端にまくしたてた。

「いいか。あのレコートはだな、オレが何年も探してやっと見つけた貴重なー枚なんだ。それがなぜ割れてるんだ」

「はあ」「おめえ、聞いてんのか?」「あの、この場合、6千円まで補償できますか」「バカヤ口ーまず謝罪の言葉があるべきだろ」

「いえ、あの・・」誰が壊したか知らないが、自分とは一切関係ない。小酒井氏はさもそんな風に高いたけである。

「それに、元々、配達時刻だって無視されてんだよ。これはいったいとういつことなんだ」

「はあ。そうですか。ゆうパックは孫請けの孫請けだからしょうがないんですよ」「こ、の、や、ろー」

心底、唖然とさせられた。聞けば"ゆうばっく"は委託業者に配達を任せているらしいが、そんなことは関係ない。問題は、この課長の言動だ。管理職という立場にありながら、責任感の力ケラも感じられない。じゃなければ、こんな台詞が出てくるワケがない。

「ウチとしては6千円までしか出せません。なお、破損物に対して補償金が支払われるのは風間さんではなく、送り主の方になりますのでー」

「ふざけんなっ」

着いてからすでにー時間が経過。その問、オレは怒鳴りっぱなしである。
「あれがどれだけレコードなのか、わかってんの」「はあ」

「何年かかって探したか。いいか、よく聞けよ・・」

「も、もうカンベンしてくださいよ。私の少ない給料の、少ない小遣いの中からー万円をさしあげますかり」「……」

聞いて呆れるとはこのことだ。言うにことかいて、「私の少ない給料」だと。テメー、殴られたいのかよ。

「あの、私、第二集配営業課課長の吉野(仮名)ですが」

「郵便課課長の島田(仮名)です」新たに2人の局員が現れた。とうやら、オレがあまりにもシツコイので何事かとやってきたらしい。見渡せば、周囲の連中もコチラを遠巻きに眺めている。

「ああ、そうですか。で、オタクらも配達の責任者でしょ。今回の件についてどう思うの」

「いや、あの、コチラとしては謝罪するしか」

「でも、この小酒井さんなんか全然謝りやしないよ」
「そんなことないです」

「ふーん。じゃあなんで歩ない給料の中からー万なんて言えるの」「いや、それは」「わかった、わかった。もうこのままじゃラチがあかないんだよ。小酒井さんがそう言うなら、オレにー人ー万円ずつ預けてよ。もうー度探すから。レコードが5千円だったら2万5千円、ー万円だったら2万円、オツリは絶対に返す。アンタらにも責任もって探してもらうけど。どうかな」

「……」「わかったら名刺の裏にその誓いを書いてくんない」

酒井氏だけは断固として「金は出せますが、レコードなど探せません」と、拒んだ。
翌日、オレは郵便局で酒井氏からー通の茶封筒を受け取った。

「約束の3万円です」「ちゃんとー人ー万円ずつ出したんだよね」

「いえ。私の少ない給料の中から3万円出したんです」

コイツ、また言いやがった。

「約束と違うじゃん。郵便局全体の責任なんだからさ」

「……。金額は同じですから」「ダメダメ」「ううー」「早く」「もう、わかりましたよ。この件に関しては相手の方に損害請求を出すように、コチラで勝手に手続きしますからり」

こういうと、氏はオレの手から茶封筒を引ったくり、奥へと消えてしまった。まったくもってワケがわからない。昨日、「3人で揃える」と約束したばかりなのに、なんでそういう能度になるんだ。とりあえず、現場の責任者があの様子じゃ、ラチがあかない。ここは直接、局長に話をつけるしかないだろ

その後、オレは第二集配営業課の吉野課長に局長に会わせてくれるよう交渉、渋る相手を説得し、何とか約東を取り付けた。面談日は2週間後の4月下旬である。
当日。局長室へ通され待つこと3分、いかにもサラリーマン風情の局長が現れた。

「この度は、うちの部下が失礼な発言をしまして申し訳ありません。これから同じレコードを探すように努力させますので、出所を聞かずに3万円をお預かりください」

「ふーん」

「7月に異動の時期がありますが、後任の局長も責任持って対応にあたらせていただきます」

「わかったよ、もう。もっと早くアンタが謝ってくれりゃあさ。大阪の郵便局は対応よかったよ」「さようでございますか」

実は面会3-4日前、破損したレコードの発送元である大阪の郵便局かり電話が入っていた。驚いたことに局長直々のコールである。

「先日は誠に申し訳ありませんでした。レコードが割れた原因はハッキリわからないのですが」

『はあ』ウチの局員が消印のハンコをかなり強く押してしまったようでして。その圧力で割れたみたいなんですけど「本当に申し訳ありません」

さらに、電話の数日後には謝意を表す直筆のハガキまで届く。ここまでされたらもう文句は言えないだろう。
いちおう謝っての一言に怒りが再燃
それから半年。M郵便局かり「レコード探し」の件で連絡は来なかったが、オレはもうどうでもよくなっていた。局の方も、終わったことという認識なんだろう。そんな10月中旬のある日のこと
カミさんが買い物を終え帰宅すると、玄関前の洗濯機の上に荷物が置かれている。手にとって見ると定型外郵便で送られたビデオである(数日前にオレが注文したもの)。

ポストに入りきらず、無造作に放置されていたようだ。この半年の間にもちょくちょくトラブルはあったか、いずれもイチイチ注意するほどのものではなかった。

しかし、今度ばかりは許せない。よりによって洗濯機の上に郵便物を放置するなんて、そんなバカな話があるか。オレはすぐさまM郵便局に電話を入れた。

「もしもし、もしもし。風間ですけど、吉野課長を呼んでくれる」

「あっ、どうも、おひさしぶりです。どうしたんですか?」

「ちょっと聞きたいんだけど。ポストに入らない郵便物ってのは通常どうやって処理するの?」

「直接家の人に渡すか、不在通知表を置いてから持ち帰ることになっておりますが。それが何か?」

「規則なの?」

「規則です」

「じゃあさ、ウチの玄関横にある洗濯機の上にさ、郵便物が放置されていたんだけど。これって、どういうことかな。誰かに持っていかれたらとうなるの?」

「・・・……」「申し訳ありませんー」

「ふざけんなよ。何回もナメた真似しやがって。いったい、誰がやったんだ」

「早急にお調べいたしますので」

後日、張本人は七海(仮名)という配達員だと判明した。

「七海と局長とアンタ。3人全員、謝罪文を出せ」「えっ絶対だからな」
「それでは後日、郵送させていただきます」

断るものとばかり思っていたが、局側はあっさりオレの要望を受け入れた。ややこしい人間の言うことはとりあえず聞いておけということか。

2-3日後、書留郵便が届いた。やけに早いなと思いきや、差出人の欄を見ると知人から。拍子抜けしながら、印鑑を渡す。

「ごくろうさんです」「そうだ風間さん、今回はすいませんでした」「へっ?」

「いや、上の人間から一応、謝罪しておけっていわれたんで」「ん?」「それでは」「おい、チョット待てよ。ナ二そのいちお?ってのは?」

「いや、とにかくそういつことなんで。忙しいので失礼します」

詳しい事情は知らんが、この配達員、要は上司の命令で言わされているのだ。腹の虫が収まらず、すぐに吉野氏へ。

「今の時間、ウチへ配達する局員はなんて名?」
「えっと。調べるからチョット待ってください。岡村(仮名)です」

「岡村ですじゃないんだよ、バカヤ口。ソイツがウチに来て何て言ったと思ってるんだ」「えっ?」

「上の人間に言われたから、いちお謝罪しますとぬかしたんだ。いちおうってよ」「……」

「お前らは、オレに対してカタチだけでも謝っとけ。テキトーにあしらつとけ。という態度なんだな」

「そっ、そんなことは決してありません」

「現に岡村はそういったじゃないか。もういい。謝罪文だけじゃダメだ。直接、局長に会いに行くから、セッティングしておけ。なるべく早くだぞ」
「我々もヤマトさんを見習い、ヤマトさんに負けないように」
2週間後のオレは再び局長室を訪れた。右手には事前に送られてきた4枚の謝罪文(局長、吉野氏、七海氏、岡村氏)。左手には録意用のカセットテープを持っての来訪である。
金や土下座などの明確な目的があるワケじゃなかった。ただ、連中のフザけた態度を懲らしめて、溜飲を下けたい。オレの心にあるのはそれだけだ。話し合いは、7月の異動してきた友野新局長(仮名)の挨拶で始まった。

「初めまして友野です。この度は申し訳ありませんでした」

「いや、もうさ、そんな言葉は何度もいわれてんだよ。わかる?」

「はあ」「4月にレコードが割れた件も知ってるでしょ。それに対してだって一切連絡ないしさ」

「いや、コチラも探してはいるんですが」

「簡単に見つからないのはよくわかってんの。毎日、オレが探したってムリなんだから。ソッチは月一回でも頑張ってくれれはいいワケでさ。誠意の問題なんだよ。なのに電詰のー本も来ないじゃん」

「そうでこざいますが」

「大阪の郵便局の人なんか頼みもしないのに手紙までくれてさ。この差はなんなの?」
「いや、コチラとしても、2度と事故がありませんように、今後は厳重に注意いたしますので」

「いや、2度も、3度も、4度も、5度もあるからこうして言ってんじゃない」

「……」

「ビデオの件にしたってさ、荷物を送ってくれた人、ジイチャンなんだよ。だから、宅急便なんて発想はなくて、郵便局を頼るしかないの。それが、洗濯機の上に放置とは。なくなってたらとうする気だったの?」

「いや、あの・・」

「このままじゃ信用なくして誰も郵便局を使わなくなるの気つかないのかな。オレは普段さ、自販機の補充やってんだけど、120円入れて中身が出てこなかったら、そのお客さん、もう2度と同じトコで買わなくなるんだよ。この前も、ある缶コーヒーから虫が出てきたとかでさ、全部回収して回ったんだけど。普通の企業だとそれでアウトなんだって」

「そうですね。そこはサービス業の厳しさだと思います」

「ふん。アンタら公務員だから、わかるワケないよ」

「それはわかります。私どももですね、公務員ではありますが、ゆうぱっくや切手などの売上げの中から生活費が出ているわけでして。他の宅急便なとの業者と競争しながら、日々サービスの向上に努めております」

「それは全員、認識してんの?」

「はい。それはもう、営業を通じて職場の活性化を図ろうと努力しております。きちんと売上目標をたて、達成せねば給料が支払われない、という意識の中で頑張っています。これは常々、口を酸っばくしていってることでして・・」

「ふーん。だったら、なんで酒井課長さんは、私の少ない給料の中からー万円出しますとか言うわけ?あの人、課長ってことは管理職でしょ。上に立つ人間が客に対して普通そんなこと言わないよ。公務員だから安泰っていう意識があるから無責任になれるんじゃん」

「決してそんなことはありません。以前は確かに、郵便局といえば売り手市場でした。ですが、現在は厳しい状況でして。職員の意識改革を全国的に実施しております」

「だから、そしたら何で、こんなしょーもないまちがいいが続くわけよ。仕事、ナメてない?宅急便のヤマトなんて、同じ日に荷物が2コあってさ、片方が時間指定だったかりって、6時と8時、わざわざ分けて持ってきたこともあるんだよ。それがここじゃ、並遇の時間指定も守れないんだもん」

「我々もヤマトさんを見習って、ヤマトさんに負けないように」

「負けてんじゃん。負け負け。いい負けっぷりだっつの。何しろオタクらの局ときたら、デタラメはかりだからね、もういいよ。オレの結論は2つしかないから」

「はあ?」

「郵便局の配達を一切やめるか、オレが引っ越すかのドッチ」

「えっどうかそんなことは申されませんように」

「だってそれしかないって。今後、ウチに配達するのは一切やめてね。ただ、手紙や荷物を送ってくれた人に悪いからさ、ーつーつ説明文書を局長が添えて送り返してよ」
「お願いします。再度チャンスを与えてください」

「それじゃあ、オレに引越ししろって言うのかい」
「配達ゃめろ」「考え直してください」の言い合いはさらにー時間続く。正直、オレは疲れきっていた。ラチがあかない。もう帰ろうか。そうも考えた。

が、局長が部下に持ってこさせた煙草を、謝罪文の上に投げ出すのを見るにつけ、やはりオレは許せないと思ってしまう。

「あのさ、細かいことを言いたくないんだけど、なんでそんなマネができるの」

「コホッゴホッ。コホッ。コホッ」

「そういう態度だからさ、誠意だ何だっていわれても、納得できないんだよ」

「そんなことはありません。風間さん、ぜひもうー度、考え直してください」

「もう配達はしなくていいから。その分の経費をどうするか考えておいて」
捨て台詞を残し、その場を後にした。怒りが収まったワケじゃないが、これ以上何をしていいかわからない。しかし、オレはその3日後、再びM郵便局へ出向くことになる。以前、ビデオを放置した七海氏が書留郵便をもって現れ、一言も挨拶せずに立ち去ろうとしたのだ。

呼び出したのはM郵便局オールスターと言える面子である。経緯をあらためて説明し終えると、局長が口を開いた。

「我々はどうしたらよいのか、教えてください。風間様」

「バカヤ口ー。自分で考えゃがれ」「・・…。わかりました」

そう言い残すと全員を引き連れ別室へ消える局長。緊急会議でも開いたのか、15分後再び顔を出すと、局長は予想もしない言葉を口にした。

「風間さんの担当する自販機をここに置かせていただくっていうのはいかがでしようか?」

「バ、バカヤ口。オレの仕事を増やす気かーこんなトコまできたら疲れんだろう、申し訳ありません」

再び別室へ消える局員オールスター。その後ろ姿を見て、吹きだしそうになる。悪ノリしすぎたか。結局、話し合いは前回同様に3万円で委託するというカタチでお開きとなった。もちろんレコードは見つかるまで探す約束だ。

★先日、自宅に戻ると留守電にメッセージが残されていた。

「M郵便局の吉野です。まだレコードは見つかりませんで、申し訳ありません。今度、よろしければお酒でも飲みに行きましょ。」

おいおい、飲みに行ってどうすんだ。オレの“ブルース・リー“論を朝まで聞きたいのか。いい加減な返事をしようものなら、新たにもうー枚、謝非文を書かせるぞ。