学生だ。学費は親に面倒を見てもらっているが、毎月のヤリクリは自分でまかなわなければならない。エンゲル係数はバカ高い、冗談ではなく米だけで食いつなく日々もあるほどだ。そんな苦境の中で編み出したのがこれから紹介する《タダメシ》作戦である。内容は、正直、悲しいほどセコイ。が、これも生き抜くためのオレなリの知恵なのだ。
狙いの筆頭はカレー屋「C」だ。
1甘口から五辛まで7段階の辛さ、カツやハンバーグなどチョイスできる組み合わせが無数にあるのが最大のウリで、他にも「13009の大盛リカレーを20分で平らげれば《タダ》なんてサービスまである。
が、それはあくまで成功すればの話。逆に失敗した場合には1400円の請求が待っている。オレが実行するのはもちろん大食いではない。都内某所のCで「うずらカレーLを5割方食べ終えたオレの目に、7cmほどの髪の毛が飛び込んできた。坊主頭の自分の毛ではないことは明らかだ。
「ちょっとコレ、髪の毛はいってるよ」「えっ?」「だから、ここに髪の毛が」
すくに店員へ申し出た。当然だろう。こんなもの、食えるわけがない。
「もっ、申し訳あリません。御代はけっこうですから」
「えっ・」
てっきリ取リ替えてくれるものだと思ったら、金を返してくれるという。オレはタダメシを頂き、一服しながらじっくリ考えた。髪の毛ー本でー食が浮く。この事実は見過ごせない。もちろん、今の店で同じことをやれば怪しまれるだろう。が、Cは全国に店舗を構えるフランチャイズのカレー屋。ならば、他店に出向けばもう一度タダで食えるかもしれない。いや、食わせてくれ。
そう思いつつ1カ月が過ぎ、どうにも金がなくなったある日ついにオレは決断した。
よし、隣駅のCへ行くぞー普段は滅多に口にしない、エビカツカレーに卵とコーンのトッピングを注文。調理するやつの髪の長さを目測し、持ってきた毛を切断。そして、カレーを8-9割食べ終えたところで言い放った。
「ねえ、コレ、髪の毛はいってるんだけど」
「もっ、申し訳あリません。御代はけっこうですから」
うつしつし、成功だー少々、胸が痛むが。
これはオレの勝手な予想だが、メニューや人材管理に限らずトラブルの際のマニュアルも詳細が徹底しているのだろう。新しい店舗を見つけるたびに、オレは髪の毛を持って店を訪ねている。
お次の出番は皆さんもご存知、牛井界の帝王「Y」である。このY、牛井もウマイが「お新香」も抜群。オレはそのお新香ファンで、8割以上の高確率でタダ食いさせてもらってる。しかも、Cとは違い、同じ店で何度も使えるスーパーテクを利用して。と、その手ロを紹介する前に、まずYのメニューを思い浮べてもらいたい。
「並・大盛・特盛」この基本に加えて「牛皿」や「卵」に「味噌汁」と言ったところか。オーダーすると、すくに井がやってきて、食べ終わったら、カウンターのレジで精算。牛井の隣に置かれた卵やお新香の皿も当然カウントされる。ゴマかすのはなかなか難しい。そこで利用するのが「牛鮭定食」だ。
「牛鮭定食」は牛皿、鮭、御飯、味噌汁、お新香(中身がセコイ)の5種類からなるメニューで、これら5つの皿はーつのお盆に載せられ出てくる。ギュウギュウ詰めである。このときのポイントは皿の位置。上から眺めただけでは一瞬では判別できない場所がベストで、井と味噌汁茶碗の隙なんかが好ましい。料金わずか90円。だが、頻繁に利用するYだけに、バカにならない。
ラストに、宅配ピザのタダ作戦をご紹介しよう。ドミノ、ピザーラ、ピザハット。今や出前の定番だが、ー枚頼めば2千円前後の金を取られる。これはかなり高い。ならば、と大学の仲間内で考え出されたのが、ー枚タダでもらっちまう方法だ。やリ方は簡単。ピザを半分食べた後、次のように電話を入れるだけだ。
「えっとさ、今、オタクのピザを半分くらい食べて気づいたんだけど、注文と違うみたいなんだよね。オレはさ、『ガリチョ』とか言うのを頼んだんだ。けど、オーダー表を見たらさ、なんか『ゲッツ』ってやつに似てるんだけど…。ソッチの注文どう受けてますかね」
こうクレームを入れるだけで、すくにもうー枚が運ばれてくる。ピザの単価などたかが知れたもの。サービス重視の大手だったら成功間違いなしだ。ちなみに同じ店舗に同じ手口を使う場合、オレは常に友達の携帯など異なった番号で注文を出す。ピザ屋には電話番号を打ち込むだけで住所が浮かび上がってくるマシンが使われている。同じ電話を使ってれば怪しまれること必至だ。
※この記事は読者様の投稿です。知的好奇心を満たすためにお読みください。実行されると罰せられるものもあります。