会話のタネ!雑学トリビア

裏モノJAPAN監修・会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

メンヘラより金ヅル女と付き合ったほうが楽しい

前回の浮気疑惑は、オレからしたら真っ黒なんだけど、もちろん真由美が認めるわけもなくウヤムヤのままになっている。オレとしても決定的な証拠がない限りは動きをとりづらい。真由美が尻尾を出すまでは傍観しておくことにした。会社にいるオレのケータイが鳴った。真由美からだ。
『どうした?忙しいんだけど』
『ハァ、ハァ』
『ん?もしもし?』
『ハァ、あのね、怖いから早く帰ってきて』
息を切らせてしどろもどろになっている。
『怖いって、なにが』
『尾けられてるの。お願いだからはやく帰ってきて』
は?誰にだよ。会社を出て家に到着すると、ドアにチェーンがかかっていた。いつもはロックも忘れるくせに。真由美が不安げな顔で出てきた。
「外にヘンな車止まってなかった?」
「は?気にしてなかったよ…。いったい何があったんだよ」
「だから、車に尾けられてたの。買い物に行くときに気づいたんだけど…」
 真由美は長々と説明を始めた。
「スーパーの駐車場に入るとき、後ろから一緒に黒い車が入ってきたんだけど、買い物が終わって車を出したら、同じ車が同じタイミングで後ろについてきたの。しばらくしたら曲がってどっかに行っちゃったんだけど」
なんだそれ、ただの偶然だろうが。
「それだけじゃないよ。次は白いクルマが後ろにずーっとついてきて。ほら、スーパーからウチまでけっこう曲がるポイントあるじゃん?それでもウチまでついてきたんだから」
急いで部屋に戻って窓から下を見ると、家の真下にまた別のワンボックスカーが止まっていて、真由美に気付くとサーっと走り去ったそうだ。
「ぜんぜん身に覚えはないんだけど、誰かに監視されてるんじゃない?すごい怖い」
話を信じれば、監視をしている誰かさんたちは3台もの車を使って尾行してたことになる。バカらしい。芸能人じゃないんだから。あきれて言葉も出ないが、それからというもの真由美はいっさい外出しなくなった。夜間はもちろん、昼間もテレビやDVDを見て過ごしているらしい。軽いひきこもり状態だ。しかたないので、日曜日、二人でドライブに出かけてみたが、案の定、尾行してる車なんか見当たらなかった。
「なにもなかったじゃん」
「今日は尾行しない日だったんじゃない? ヒロシ君がいない日を狙ってるのかもしれないし」
なんだよ、こいつ。いよいよ精神を病んできたのか。
休日の夜、義父の良勝からファミレスに呼び出された。
「おう、久しぶりだな。元気か?」
なんだか機嫌が良さそうだ。なにか自慢でもしたいのか。
「週末、ハワイに行ってくるから。お土産なにがいい?」
「ハワイですか?」
「そう。最近ハブリが良くてさ。アイツとよりを戻したから」
アイツとは、金ヅル女のことだ。さんざん金を引っぱったあげくに返金を迫られ、毎月いくらづつか返済していたはずだが…。
「お義父さん、みっちゃんっていう彼女いましたよね? 自殺未遂で病院に運ばれた」
「おお、アイツな。最近連絡してねーんだよ。うっとうしくなってきちゃってさ」
「いいんですか? 別れるならきっちりしておいたほうが…」
「いいんだよ。しょせんグリーで会った女だしな。ガハハ」
コロコロ女を変えて、うらやましい話です。ハワイ土産を持った義父が我が家にやってきたのは翌週のことだった。なんだか浮かない顔をしている。
「あの、何かあったんですか?」
「ああ、わかる? もうタイヘンでよ」
何も言わずにケータイを見せられた。メール画面だ。
〝なんで連絡くれないの〞
〝お腹痛いよ〞
〝連絡を〞
〝もうダメかも〞
〝もう連絡しないでください〞
〝これから手首きります〞
〝連絡を〞
穏やかじゃない文面が次々と出てくる。差出人はすべて自殺未遂のあの彼女だ。
「ハワイから帰ってきたらこんなになっててさ。もうメンドクセーよ」
「連絡はしてないんですか?」
「してないよ。もうムリムリ。怖いもん」
たしかに、メンヘラより金ヅル女と付き合ったほうが楽しいのはわかるけど…。
そうこうしないうちに新しいメールが入ってきた。
〝いい加減にメールしてこい〞
これから何か大変なコトが起こりそうな気がするのはオレだけだろうか。