会話のタネ!雑学トリビア

裏モノJAPAN監修・会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

占い・霊能力=胡散臭いというイメージ

オセロの中島氏が霊能力者に洗脳されてるとかで世間では大騒ぎになっています。ワイドショーでは中島氏の痩せた頃の写真から二重顎の写真までを横にズラリと並べて「一体なにがあったんでしょうか」と毎日話し合っており、最近では内田裕也まで登場してカメラ目線で「俺に相談してほしい」とか言ってわけのわからない状況になっているようであります。
一方この話題で割をくらっているのは世の中の占い師たちではないでしょうか。占い・霊能力=胡散臭いというイメージがより強くなり、街の路上占い師たちにも冷ややかな目が向けられているに違いありません。渋谷の某タロット占い師T氏は以前からネット界隈の口コミで「騙された」とか「恋愛を占ってもらったのに最後に50万の印鑑を買う展開になった」などと散々叩かれていました。
電話してみるとワンコールで受話器が上がり、T氏と思しき女性にタロット占い希望を告げると「今からですか」と食い気味に訊ねてきました。翌日希望を伝えるとすべての時間帯OKとのことで逆にこっちがT氏の将来を心配して占ってあげたい気持ちで一杯になりました。当日指定された渋谷のマンションに向かう道で迷ってしまい電話を掛けるとT氏はかなり親身になって道順を教えてくれて「近くの松屋まで迎えに行きましょうか」とまで言ってくれたので感激しました。
結局30分遅れでマンションの一室に到着。ドアを開けると迎えてくれたのはT氏本人ではなく、弟子と名乗る恰幅の良い健康そうな女性でした。案内された奥の部屋は若干薄暗くアロマが炊かれており、いかにもタロット占いの館のような良いムードを醸し出していましたが、何故か天井に江ノ島神社の商売繁盛の御札が貼られていました。
弟子の女性と向かい合った形で座り、まずは名前、生年月日、住所から家族構成、生い立ち、悩みなどかなり事細かく訊ねられました。「T先生がこの問診表を元に占ってくれる」とのことです。今日占ってほしいことを訊ねられたので明日の競馬の弥生賞の予想をお願いしたところ「け、け、競馬ですか」とかなりドモリながらも「タロットに訊いてみましょう」と了承してくれました。
弟子の女性は「T先生が占う前にまずは私がユニコーンカードで占います」と言い、ユニコーンの絵が描かれたカードの束を取り出し、正月に親戚の兄ちゃんがトランプを切る時みたいに普通にザクザクとカードを切り出しました。それを広げ「この中から一枚選んで下さい」と言うのでカードを一枚引き抜いて渡すと、弟子の女性は「ワオ」と言う高い声を上げ「これは凄い、これは凄い」と連呼しました。「カードには〝Just Be Yourself〞と記されています。つまり〝あなたの思うままに〞という意味です」と説明してくれました。「つまり明日の競馬、あなたの思うままに買えば良いのです」となかなかのザックリとした回答を得ることができました。こちらの納得していない空気を感じたのか、弟子の女性は「もうすぐ先生が来ますので」と部屋を出て行ってしまいました。そこから5分ほどすると急にドアが開き、40代ほどの長髪の女性が入ってきて「Tです。宜しく」と言葉少なめに席に着席して目を瞑ったままタロットカードをかき混
ぜながら「15分3千円になります」と発しました。慌てて3千円をテーブルの隅に置き、競馬予想の旨を伝えると「競馬の具体的な予想まではタロットでは不可能ですが、どのレースを狙えば良いのか占うことは可能です」と早口で説明してくれました。
「目を瞑って下さい」カードが捲られる音がしたのち
「目を開けて下さい」と言われると目の前にはカードが6枚置かれており「関東のレースが狙い目です」と告げられて何の説明もないまま「もう一度、目を瞑って」と言われ、次に目を開けると先ほどと異なったカードが6枚置かれており「午後のレースが狙い目です」と告げられました。T先生は「つまり関東の午後のレースが狙い目みたいですね」とタロットカードを眺めながら納得しているようでしたが、これまたザックリとした回答で腑に落ちません。弟子の占いと総合すると「関東の午後のレースを自分の思うままに買え」というウインズ浅草のオヤジ達と寸分違わぬ考えをタロットを駆使して言われただけでありました。
残り時間が5分ほどあったのでしょうがないから自分の結婚の時期について訊ねてみると、今度は目も瞑らずにタロットを急ぎ早でかき混ぜて次々と高速で捲っていき「13ヵ月後に結婚に向けた行動を開始すると良いでしょう」というガチで役に立たないアドバイスを授けて下さいました。
詐欺に遭った気持ちでしたがまあ3千円だしこんなものかと納得し帰り支度を始めると「競馬や結婚の運気を上げる石がありますよ」と部屋の隅のショーケースをT先生が指差すので覗いてみるとパワーストーンがズラリと並んでいます。5千円から2万円まで様々な値札が貼りついており「特に良いのはこの龍馬ストーン」と薦められたのは黒いブレスレットでなんと3万円。「今日なら無料で私がパワーをこの石に送ってあげます。普段はパワー注入代が1万円なんですが」と先ほどまでの無口が嘘の様に饒舌になり、その後20分ほどこの龍馬ストーンがいかに凄いかを解説され、タロット占いの時間よりもパワーストーンの説明の時間の方が長くなるという緊急事態に陥ってしまいました。そのうちラッセンのイルカの絵とかも売られるんじゃないかと怖くなってきたので「手持ちがないのでまた来ます」と告げマンションを逃げるように脱出。翌日の競馬で自分の思うままに買った馬券はいつも通り、何事も無かったかのように見事に外れたのは言うまでもありません。