会話のタネ!雑学トリビア

裏モノJAPAN監修・会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

閉店商法詐欺にご注意を

都内の繁華街で〝閉店商法〞をやっている連中を見かけた。閉店商法とは、路上のワゴンに並べたコピーブランド品(腕時計やアクセサリーなど)を正規品と偽り、かつ閉店セールと称してそれらを千円均一で売りさばく、昔ながらのチンケな詐欺だ。
ひとつ品物を売って、儲けはたったの数百円。いまだにこんなショーモナイことをやってる人間がいるのは意外だったが、それ以上に俺は、ワゴンの周りが黒山の人だかりになっていることに驚きをおぼえた。アホじゃなかろうか。あんなガラクタ同然のブツを喜々として買い求めるなんて。日本人というのは、よほど閉店セールの文字に弱いらしい。 長年、詐欺でメシを食ってきた俺は、その光景に大いに刺激を受けた。自分だったらこの状況をもっと上手く活かし、効率よくがっぽりと稼げるのでは?
家に戻り、ただちに頭を仕事モードに切り替えた。 基本的なアイディアは、閉店商法と同じでいいだろう。路上で「閉店につき在庫を一掃処分するので、大安売りします」とあおり、通行人を呼び込むのだ。 問題は、客に売るためのコピー品も、それを仕入れるルートもないということだ。 ならば、俺が取るべき方法はひとつ。正規品を自分で購入し、それを商品として扱うのだ。むろん、フツーに売ってしまっては意味がないので、客には料金の先払いを要求し、かつ、ブツは渡さない。つまり、宅配便での発送という形をとって、ドロンすればいいわけだ。これなら仕入れる正規品も、見本用にひとつだけあればコト足りる。そうなると、路上に並べる商品は、簡単には持ち帰ることのできない、そこそこ重量のあるものでないといけない。冷蔵庫とか。…いや、それじ
ゃ大きすぎて俺が持ち運べないか。うーん。熟慮の末、ひらめいた。炊飯器と米の組み合わせはどうだろう。定価4万ほどの高級炊飯器を1万円で売り出し、さらに購入者にはもれなく魚沼産のこしひかり20キロをプレゼントすることにするのだ。うん、これなら絶対、持ち帰る気にはならないハズ。イケそうな気がしてきたぞ。 方針が決まれば、あとは材料集めだけだ。量販店で炊飯器を購入し、さらに宅配業者をいくつか回って、大量のカラ伝票をかき集める。 ちなみに、宅配業者は伝票を無料でくれるうえ(ひとつの営業所でマックス50枚)、頼めば「送り主」の欄に好きな社名、住所、連絡先などもこれまた無料で印字してくれる。もちろん記載内容はデタラメでもOKだ。また、宅配伝票を使うことは、犯罪発覚を遅れさせる利点もある。購入客に「お届けまでに約10日は見ておいてください」と言っておけば、マックスで9日間、安心して商売を続けられるのだから。おおよその方針が決まったところで、さっそく行動に移った。 
平日の昼、銀座の某デパート近くにスチール机を並べ、その上に量販店で購入した炊飯器をひとつ、20キロの米袋を3つ置く。その周囲には手書き広告をぺたぺたぺた。
【●●商店涙、涙の閉店セール】
【パ●ソニック製・高級炊飯器4万2千円をなんとわずか1万円で!100台限定】
【購入いただいた方にはもれなく魚沼産こしひかり20キロをプレゼント!】
販売スタート前から、めざとく手書き広告を見たおばちゃんたちがすでに列を作り出した。「ねえ、この炊飯器、ホントに1万円でいいの?」「ええ。お米もつけますのでぜひ買ってください」
「きゃー、すごいわ。娘夫婦にも買ってこうかしら」
炊飯器は飛ぶように売れた。おばちゃんが歓声をあげれば、新たなおばちゃんが吸い寄せられ、またさらに歓声があがる。こうなりゃもうこっちのもんだ。
ただし、警官には注意しておかないと。犯罪を行う都合上、あえて道路使用許可証を取らなかったのだが、目の前をヤツらが通りすぎても、不思議と注意を受けることはなかった。通報でも入らない限り、いちいち目くじらを立てることはしないのだろう。 
そうこうしているうちにも炊飯器は売れに売れ、結局、目標の100台(限定100台と謳っているため、それ以上売れば不審に思われる危険がある)はわずか2時間で完売したのだった。
それから販売を終了するまでの9日間、炊飯器は毎日きっちり100台売れ続け、俺たちは約900万の金を手にした。まさに大成功と言っていいだろう。 俺が言うのもなんだが、商品をその場で持ち帰れないような路上販売には要注意だ。

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