会話のタネ!雑学トリビア

裏モノJAPAN監修・会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

もしやマッチポンプなのでは。元アデランス社員が経営する床屋で円形脱毛症が多発する理由

私の住む北陸の田舎町に1軒の床屋がオープンしました。もともとこのあたりは、商店街の中に昔ながらの床屋が1軒ひっそりと営業していたのみ。そんな中、新しい床屋ができたのですから、目立たないわけがありません。興味半分、私はその店、Xに出かけてみることにしました。「いらっしゃいませー」
店内は、散髪台が二つだけのこじんまりした作りでした。50代と思しき店主の男性が1
人でやっているようです。カット3千円とお手軽価格だったので、私は長く伸びた髪の毛を整えてもらうことに。店主が髪を切りながら、ぼそっともらします。
「実は私、元アデランスの社員でね。脱サラして床屋を開業したんです」
「へー」「髪のことならなんでも任せてくださいよ。いつでも相談に乗りますんで」
「ええ、もしものときは頼みますよ」
なかなかの腕前だったこともあり、以降、月に一度はXで散髪をするようになりました。評判が評判を呼び、私の経営する町工場の従業員にもちらほら通う者がいたようです。頭頂部に5、6コの十円玉ハゲが
昨年末、店主にすすめられるまま白髪染めをしてもらった後で、頭髪ケアの薬を頭に塗られました。紫色の小瓶に入った液体です。続いて、トントントントンと頭皮マッサージを施し、髪の毛を乾かせば、なんだか若返った気分です。さすが元アデランス、髪のことは何でも知ってるようです。しかしそんな努力もむなしく、数日後の朝、鏡を見て腰を抜かしました。なんと、頭頂部を中心に5、6コの十円玉ハゲができていたのです。なんじゃこりゃ〜!
小さな町工場とはいえ、経営者のストレスは大変なものがあります。積もりにつもって円形脱毛症になったのでしょう。「見てくださいよ、この頭。どうにか治らないですか!」頼れるのはこの店主さんしかいません。なんとかゴマかせる髪型にしてもらわないと。「これはひどいですねえ。ちょっと手に負えないですよ」
「ほ、本当ですか?」「ええ。頭頂部だから、ごまかしようがないんです」
どん底に突き落とされたような気分でした。このヒドイ有様をもし女子社員に見られたら、笑いものになること間違いナシ。どうすれば…私が頭を抱えていると、店主は店舗の奥から小さなカツラを持ってきました。ひとまずこれをかぶってごまかそうというのです。部分カツラといって、頭頂部のみピンポイントで隠すことができるとか。頭に当ててもらうと、なるほど確かに地毛と見わけがつきにくい。カツラには抵抗があるけど、生えてくるまでの応急処置としては仕方ないのかもしれません。で、おいくらなんですか?「育毛剤とセットで13万円になります」「えっ!?」「これは中国人の髪の毛を束ねた高級品ですよ。安物だとハゲがバレバレですからね」
背に腹は代えられません。私は近くのATMから金を下ろし、その場でカツラと育毛剤を購入することにしました。話は続きます。同じ時期に、我が社の従業員が数人、同じ
ような悩みを打ち明けてきたのです。
「ハゲてしまいまして。これ、カツラなんですよ」彼らはみなXの利用客で、店主に相談した結果カツラを購入していました。もしや…。不審に思った私が聞いたところ、やはりというか、彼らは全員、以前に白髪染め&頭髪ケアをセットで受けていました。
…偶然にしてはできすぎではないか。あの店主は、客を円形脱毛症にしてはカツラを買わせるマッチポンプ商法をしているのではないでしょうか。髪のことなら何でも知ってる彼にすれば、それぐらいの細工はお手のモンでしょう。細々と散髪するより、ハゲの
劣等感を突くほうがカネになることも知ってるはずです。本来なら店主に問いただす
か、警察に相談するのがスジなのでしょうがこの狭い田舎町で下手に波風を立てると、
こちらがダメージを追いかねません。新たな被害者がコトを荒立ててくれるのを待ちながら、泣く泣くカツラ生活を送るしかない私です。