会話のタネ!雑学トリビア

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弁護士の力量が最も端的に現れるのは交通事故

弁護士の力量が最も端的に現れるのは、交通事故だろう。東京在住のC氏は、赤信号飛び出しの自転車青年を蝶き、業務上過失傷害罪に問われた。事故当時は運送業で、過去に数度駐車違反やスピードオーバーなども犯していた。当局から見れば、典型的な悪質ドライバーである。
「やることはやってみますが、覚悟しておいてください」
知人に紹介された弁護士は心もとなそうにC氏に言った。が、言葉とは裏腹に仕事は迅速だった。被害者の青年が信号無視で路上へ飛び出してきたという証拠収集のため、外部の専門業者に目撃者探しや車のキズの鑑定を依頼、同時に被害者との示談交渉を締結。さらには取調官の横暴な様子を耳にするや、留置期間のほぼ毎日、接見にやってきて、C氏を励まし続けた。
公判当日。検察側は交通刑務所への禁銅1年を求刑した。これに対し弁護側は真っ向から無罪を主張、証拠の束を裁判官に渡し、熱弁を振るい続けた。その態度に胸を打たれたのは他ならぬC氏だった。自然と涙が溢れ出て、それが裁判官に届いたのか、結果は無罪。不利な状況を完全に覆してしまった。人の一生に、一度あるかないかという逮捕、そして裁判。どうせなら練腕弁護士に助けを借りたいが、肝心の費用はいくらかかるのだろう。
一応の相場を紹介すると、逮捕から勾留、処分決定、執行猶予まで持ち込んだとして、着手金が10〜15万、報酬金20〜35万円の合計40〜50万。不起訴の場合は、期間が短い分、安く上がる。注意すべきは、良心的な基準を一切無視する恐ろしい金欲弁護士だろう。泥酔状態で他人を傷つけ、警察に連行されたり氏の例を紹介しよう。事件直後、彼の奥さんは、インターネットの広告や評判を頼りに3軒の弁護士事務所を回った。1軒目は、地元でも名高い大手法律事務所。大先生に1時間5千円の相談料を支払い、話を聞くと、「すべて込みで、150万円ですわ。難しいですから」
直感的に高いと感じ、2軒目の事務所へ移動、話を切り出すと、今度はなぜか1軒目の費用を執ように聞かれる。
「××さんでは、いくらと言われましたん?150万?だったらウチは100万円で請けますよ」半ば呆気にとられながら3軒目へ。と、そこでまた耳を疑うようなことばが。
「こんなもん、よくある案件です
から20〜30万で結構すよ。奥さん、どんな事務所に行かれたんです&弱者の足元を見るのは、ヤクザの世界だけじゃない。弁護士の料金や対応に不安を感じるときは、複数の事務所を訪問すべきだろう。最後に国選弁護士について触れておこう。
国選弁護人とは、被疑者が起訴され、被告人になったあと、国が指名する弁護士のことだ。費用は一切税金でまかなわれるため、金のない者にはありがたいが、その分期待はできない。彼らの意識は、被告の側につく介添人程度のものだ。ヤル気がないだけならまだマシで、ときにトンデモナイ先生も。窃盗罪のF氏は、その恐怖を味わった1人である。3年前のこと。私選弁護士を雇う金のなかったF氏の前に現われたのは、白髪頭の80才。耳毛と鼻毛がボンと飛び出し、擦り切れたスーツの肩口にはフケが溜まっていた。2度の接見で何とか意思を伝えたものの、耳が遠く、どう見ても理解は半分。そして、あろうことか初公判で、検察側の熱弁の最中居眠りを始めたのだ。コクリコクリと動く首に裁判長が反応する。
「弁護人、何か意見や異議がありますか?」
夢の中でフランスのニュース番組でも見ていたのか、先生は寝ぼけ眼で起立後、法廷に想像もできない言葉を大にする。
ミッテラン!……いえ、ありません…」
直後に公判は終了。検察側の主張どおり、懲役2年が言い渡された。せめてもの救いは、弁護士の熟睡中、被告が必死に泣いて謝り、執行猶予が3年付いたことだろう。
余談ながら、福岡の一家4人殺害事件では、被疑者の国選弁護人を『あみだくじ』で決めていたらしい。間違っても、国選弁護人を選ぶようなことはすべきでない。