会話のタネ!雑学トリビア

裏モノJAPAN監修・会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

LINEを乗っ取られたフリで知人からwebマネーをくすねた男

休日の午後、俺のLINEに一通のメッセージが届いた。相手は学生時代の友人Aからだった。
︿何してますか? 忙しいですか? 手伝ってもらってもいいですか?﹀
メッセージを読み、一瞬で事態を悟った。この文面、いま流行りのLINE乗っ取り詐欺だ。どこかから漏れた他人のLINEのログインメールアドレスとパスワードを使って不正ログインをした犯人が、本人を装ってウェブマネー購入をお願いする手口である。
ウェブマネーカードを買わせるのは、カードに記載された番号を写メで送信させるだけで、その番号をすぐさまヨソに転売できるためだ。現金を振り込ませる詐欺よりも足がつきにくく、ウェブマネーはコンビニで手軽に購入できることから、いま詐欺犯にもっとも利用されている手口となっているのだ。
AがLINE乗っ取り詐欺の被害にあっていることに気づいた俺は、以下のように返信した。︿はいはい。今流行りの詐欺ね。引っかかんないから﹀
すぐに既読がつけられたあと、犯人からの返信が来ることはなかった。俺はカモにならないと判断されたのだろう。
それからおよそ30分後、再びAからメッセージが届いた。
︿ごめん! さっき乗っ取られてへんなメッセージ送ってたみたい!﹀
ん? どうやらこれは本物みたいだ。︿大丈夫だよ。乗っ取りって気づいてたから﹀
︿もうパスワード変えたんで問題ないから。ごめんな﹀
どうやら犯人はパスワードを変更していなかったようで、事態に気づいたAがすぐに自らパスワードを変更して「乗っ取り」をつぶしたらしい。こっちも被害者だから弁償する義務はないその夜、俺はこの出来事を振り返っていた。もしかしたら、あんなことができてしまうんじゃないか?
さっそくその作戦を試してみることにした。LINEに登録している俺の後輩7人ほどに、以下の文章を送りつけたのだ。
︿何してますか? 忙しいですか? 手伝ってもらってもいいですか?﹀
そう、LINE乗っ取りの定型文だ。俺は自分のLINEが乗っ取られたふりをして後輩たちにメッセージを送りつけたのである。
すぐに、1人から返信がきた。
︿詐欺だろ﹀
それから立て続けに、後輩からメッセージが届いた。どれも乗っ取りに気づいた内容
だ。ところが、その中の一人、Xの返信だけは様子が違ったのである。
︿家にいました! だいじょうぶですよ! どうしましたか?﹀
気づいていないらしい。ていうか、LINE乗っ取り自体、こいつ知らないんじゃねえの? ならば…。
︿近くのコンビニエンスストアでweb moneyのプリベイトカードを買うのを手伝ってもらえますか?﹀
実際の詐欺犯が使う文章とまったく同じものを、Xに返信だ。
︿だいじょうぶっす! あとで金は返してくれるんすよね? いまからコンビニいきます!﹀
真剣に返信するXに対し、急かすようにメッセージを続ける。
︿急いでください﹀
︿10000点のカードを4枚買ってください﹀
︿買った後に番号の写真を撮って送ってください。﹀そして、既読マークがついてから2分ほど経過したころ。Xは写真付きでwebマネーの番号を送ってきた。
︿これでいいですか?﹀
ひゃー、ここまで信じ込むヤツもいるんだね。しばらく後、俺はXを含めた後輩に以下のメッセージを送った。
︿ごめん!いまLINE乗っ取りに遭ってたみたい!﹀
続々と後輩から「知ってました」「大丈夫です」というメッセージが届く。しかし当然ながらXからはこんな電話が。
「先輩!俺さっきコンビニで買って写真送ったんですけど」
「バカ!お前、乗っ取りだって気付かなかったのかよ?」
「知らなかったですよ。つーか、俺の金はどうなるんですか?」
「そんなの知らねーよ。騙されたお前が悪いんだから」
「うわあ、マジっすか!」
いわばこっちも被害者なのだから弁償する義務はない。こうして俺は約4万円分のwebマネーを後輩からくすねることに成功したわけである。

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