会話のタネ!雑学トリビア

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引きこもり勉強会で副業が出来た話

50万人以上もいるといわれる「引きこもり」は、大きな社会問題になっている。かくいう俺も数年前までちょっとした引きこもりだった。大学卒業後、最初に入った小さな資材会社を2年でクビになったのがきっかけだ。
そこの上司に「お前みたいに使えないヤツは初めてだ」と言われ、その後も何度か転職にトライしてみたが、見事に失敗し続けたことで自分の存在価値もわからなくなり、働くことがバカバカしくなってしまったのだ。人と会うことが面倒で元々友達も少なかったこともあり、食事や小遣いをせびるとき、母親と交わすわずかな会話以外に口を開く機会はゼロ。毎日部屋でネットを見るだけの生活になった。
両親には早く次の仕事を探せとせっつかれていたが、引きこもりが2年目に突入したところで我慢の限界を越えたらしく、「引きこもり勉強会」なるものに参加するハメになった。さもなくば家を出て行けと父親に脅されたのだ。仕方あるまい。
勉強会の会場は、隣町の町民センターの会議室で、参加費の3千円はもちろん母親持ち。会場には30人以上もの参加者がいた。引きこもりってこんなに多いのか。主催者の男性による簡単な挨拶が終わると、参加者たちがそれぞれ抱えた現状の問題を語り始めた。来場しているのはみな引きこもりの子を持つ親たちで、引きこもり本人が来ているのは俺だけ。みな、自宅から一歩も外に出られない子供のことで悩んでいて、中には子供が30 年近くも引きこもっているという80代の老夫婦までいた。近所のコンビニに買いに行ける程度の俺が、引きこもりだなんて言うのはおこがましいレベルだ。さて、この勉強会、引きこもりの権威が講義を始めるわけではなかった。ただ参加者同士が語り合い、主催者の男がそれらの意見をまとめて発表するだけのもの。確かに深刻な人たちの話が聞けてためにはなったけど、主催者はラクしすぎじゃないか?
そこでふと思った。この勉強会の参加費は3千円だ。30人以上も参加者がいるってことは、主催者は9万円を手にしたことになる。公民館の会議室なんて安く借りられそうだし、自分でやってみたらいい小遣いになるんじゃないか。今まで何もする気が起きなかったのに、不思議とやる気が沸いてきた。帰宅後、自分の部屋に戻ると、俺は引きこもり勉強会の「商売」を算段した。内容は今日の勉強会と同じでいいだろう。参加費は3千円にして、開催日と時間を決めて公民館を予約すればいい。あとはネットで「引きこもり」のキーワードで出てきた掲示板に、片っ端から参加募集の書き込みをしていけば、そこそこの人数は集まるはずだ。
『引きこもり勉強会、参加者募集。この勉強会では引きこもりをしている子供のご家族が、どのように本人と接していけばいいのか学んでいくための勉強会です。現在の状況や抱えている不安などを共有し、自由に意見交換し、共に学んでいきましょう』
参加した勉強会のチラシから丸パクリした文章を書きまくったところ、なんと、わずか1週間で20人以上から参加の申し込みが入った。勉強会当日、会議室にはおよそ30名の男女が集まってくれた。

「それではこれから引きこもり勉強会を始めたいと思います。まずは、お話ししたい方からで結構ですので、自分の抱えている問題をお話してください」
こんなに大勢の前で司会をするなんて初めての経験だったが、どうにかうまくしゃべることができた。会は2時間で終わりなので、参加者に1人ずつ話させ、後半に参加者同士で議論させてしまえば、こちらはほとんどやることはない。たったこれだけで9万円の小遣いだ。
「では時間になりましたので、勉強会はこれで終了といたします。皆さまありがとうございました」
2週間後、再び近隣の別の公民館を借りて、勉強会を開いた。集まったのは25人。これで月収16万円になった。わずか月に2日の労働で、会社勤めしていたときとほとんど変わらない稼ぎだ。
現在も相変わらず半引きこもりの生活は続いているが、毎月2回の勉強会開催は、3カ月目に突入した。まさか引きこもりがきっかけでこんな仕事が得られるなんて、人生何がおこるかわからないものだ。