会話のタネ!雑学トリビア

裏モノJAPAN監修・会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

タバコ屋に怒鳴られた経験は初めてだ

町のタバコ屋と言えば、お婆ちゃんが店先で鎮座してる昔ながらの風景が思い出されます。タバコを買ったついでに缶コーヒーを飲みながら店先のお婆ちゃんと世間話ができる、そんな町のオアシスがいつまでも続いてほしいものです。一方、東京北東部の下町に長閑なタバコ屋のイメージを180度覆した店が存在すると有志からの怪情報が舞い込み、半信半疑ながら「嘘であってくれ」と願いつつ現地へと確認に急ぎました。
地下鉄を乗り継いでやってきたのは、荒川沿い近くの某巨大ターミナル駅。夕方の帰宅ラッシュ時のためか大変混雑し、駅前には多くの居酒屋やフーゾク店が軒を連ねた歓楽街があります。
そこから徒歩15分ほど進み、小さな商店街を抜けた先にある閑静な住宅街。訊いた住所では確かこの辺だったはず…とスマホの地図を見ながら歩いていると、前方の小さな交差点に交通安全と記された旗を持った小汚いオッサンが立っているのが見えました。
師走の夕方、もう辺りは薄暗いのになぜかグラサンを掛けており、その時点でもうこっちとしては「交通安全」をおびやかされているのですが、恐る恐る近くまで行くと
「はい! 止まって!」と大きな声で呼び止められました。明らかにクルマなど滅多に通らないような住宅街の小さな交差点なのに…と不審に思いつつ左手を見ると、その交差点の角に該当のタバコ屋が佇んでいました。
 店の前には男女の石造らしきものが飾られ、壁のあちこちに「大小便 禁止」という貼り紙が。入り口脇には大きな鳥かごがあり、中から大きなオウムがこちらを睨み付けるように佇んでいます。不気味な雰囲気のその店に近づき、鳥かごを覗き込んでいると後ろから「おい! なんだよ!」と大きな声で怒鳴られたので振り向くと先ほどのグラサンを掛けた交通安全のオッサンがいつの間にか真後ろに立っていたので思わず「ヒィ」と声を出して仰け反ってしまいました。「何の用だよ!」と続けざまに怒鳴られたので、どうやらこのタバコ屋の店主だと気付きました。「いや、このオウムが見たくて…」と咄嗟に言い訳をすると、「こんなもんはな! 焼いて食べると美味いんだよ!」といきなりとんでもないことを言って店の奥へと消えていきました。えらいもんでオウムもその言葉には絶句したのか、言葉をマネて発声することはありませんでした。オウムの写真を撮影するフリをしつつ店内の様子を覗うと、入り口右手には日本人形が飾られおり、その上には船の模型、左にはゴリラの縫いぐるみ、いまいちコンセプトが掴めないまま天井を見上げてさらに驚愕しました。なぜか「執念」と筆で記された大きな紙が貼ってあり、ナイフや人形がぶら下げられているのです。奥には「忍耐」や「挽回」「真剣勝負」と記された文字もあり、謎の顔写真が無数に貼られていました。
 全身に鳥肌が立ち、早く帰ろうと踵を返した瞬間オッサンが再び奥から現れ、こちらに気付き、「おい! おめえ、なんだよ! さっきから! 何の用だ!」
とまた怒鳴ってきました。生まれてこの方、ここまでタバコ屋に怒鳴られた経験は初めてだったので、震える声で「いえ、タ、タバコを一本、くださいな」とわけのわかんないことを言ってしまい、
「タバコ欲しいのか? タスポ貸してやるからさっさと自販機で買えよ! おめぇ」とまた怒鳴られました。一緒に店先の自販機の前に行き、震える手で500円玉を投入。慣れないタバコの自販機にオロオロしていると
「早くしろ! どれだ! どれにすんだよ!」
 と急かされて、慌てて適当にボタンをタッチ。結果、ジャルム・スーパーという聞いたこともない銘柄のタバコを購入する羽目になってしまいました。何がそこまでオッサンの琴線に触れたのか興味がわき「店の中で一服して行っても良いですか?」と訊ねるとオッサンの目が一瞬テンになり、「なんだと、おめぇ! 外でぇ! 向こうの駐車場でぇ!員並のオーバーリアクションで叫ばれました。
「店の前では吸うなよ! おめぇなんか向こうの駐車場で吸えば良いんだよ! ほら、早く向こう行って吸え!」と啖呵が止まりません。さらに100パー怒鳴られるとは分かっていましたが「火を貸してくれませんか」と言ってみたら、その怒りはマックスに。文字通り怒りの導火線に火を付けてしまったらしく、呂律の回っていない言葉を浴びせられて、結果ライターも買う羽目に。オッサンは再び交通安全の旗を持って交差点に立ち、自分は慣れないタバコにむせながら涙目になって帰路に着きました。