会話のタネ!雑学トリビア

裏モノJAPAN監修・会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

麻雀においてビギナーズラックはあるのか

神はそのへんを見逃さない。つまりビギナーズラックを利用して儲けてやろうという本企画そのものが矛盾を抱えていることになる。
だから次なるテーマ、麻雀においては「勝った金はお前に全部やる」と吉田に約束することにした。もうオレ個人の収支は考えず、ビギナーズラック神話の有無のみを純粋に問うてみたい。またもおざなりのディナーをおごってやった後、オレは肩を抱いて誘った。
「麻雀に付き合ってくんない?」
「えー、またですかぁ」
「後ろで見てるだけでいいから。1時間で終わるよ。勝てばそのカネ全部使ってプレゼント買うよ」
1時間後にホテルで抱かれるシーンを思い描いてか、吉田はふてくされながらも腕をからめてきた。向かうはレート・テンゴの大衆雀荘だ。勝っても負けても2千円程度。もはや金儲けはどうでもいいのだから、この程度の店でかまわない。
2人で店に入り、卓が空くのを待つ。30分ほどでようやく声がかかった。
「こちらにどうぞ」
3人のメンツは、赤のネルシャツ、黒のネルシャツ、ちょいデブだ。「よろしくお願いします。この子、ギャラリーなんで、後ろに座らせていいですか」
「どうぞどうぞ」
闘牌が始まった。ところで、麻雀のことなど何も知らない吉田をどう利用するかだが、オレにはひとつの考えがあった。ある条件が揃えば、彼女の純真無垢さが役に立つはずだ。その局面が訪れたのは、南1局の親番、14巡目だった。どちらを切るか。どちらを切っても、テンパイである。麻雀の常識に照らせば、右を選ぶところだ。
しかし、この局面は下家の赤シャツからすでにリーチがかかっており、どちらも危険牌なのだ。
通るのはどちらか?
オレは背後を振り向いた。
「これどっち切ったらいいと思う?」
「わかんないですよ」
「カンでいいから、好きな方を指さしてみて」
「じゃあこっち」
牌を切った途端、赤シャツがぼそっとつぶやいた。
『ロン』 
リーチ一発、裏ドラまで乗っていた。ハネマンかよ…。