会話のタネ!雑学トリビア

裏モノJAPAN監修・会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

合いカギが移動するのは隣人トラブルか心霊現象か

合いカギが勝手にドアの外へ移動したミステリー。
「何者かがずいぶん以前から第三の合いカギを持っていて、脅しをかけてきている」
という推理を導き出したオレだが、まだドアの鍵は取り替えていない。いま犯人をシャットアウトすれば何もわからぬまま終わってしまう。ここは犯人を泳がせて確たる証拠を得るべきだろうと考えたからだ。
あれからのオレは、毎日出かける前にドアの外からセロハンテープを貼るのが習慣になっている。ドアが一度でも開けば、つまり人の出入りがあれば、その痕跡が残る仕掛けだ。が、特に収穫はないまま日日は過ぎ、毎朝のテープ貼りも惰性の作業になっていた。7月頭、いつものように帰宅して、ドア下部のテープを取ろうとしゃがむと、右半分がくるっと剥がれていた。この現象は初めてのことだ。急に体が冷たくなる。
鍵はかかっていた。ゆっくりと部屋の中へ入り、ざっと見渡してみる。異変はない。
テーブルの上に無造作に置いておいた商品券もそのままだし、パソコンを起動された形跡もない。隠し場所を移動した合いカギも、ちゃんとそこにあった。あらためて剥がれたテープを見てみる。単に粘着力が落ちただけだろうか?
もともとこのトラップは、犯人に感づかれないよう、ふんわり緩めに貼っている。ちょっとしたことで剥がれてもおかしくはない。微風や振動、湿度などで。部屋に異変がな
い以上はそう考えるのがスジだろう。
次の日。帰宅するとまたテープが剥がれていた。 
二日連続。が、このときの心情は恐怖ではなかった。むしろホッとする気持ちだ。二日連続だからこそ、最近の高湿度や気温の影響大と思えたからだ。やはりドアの鍵は閉まっていて、室内にも不審な点はなかった。
(やれやれ。シャワーでも浴びるか)
服を脱ぎ、風呂場へ。蛇口をひねって……と、そこで違和感が。なぜかシャワーが下のフックに掛かっている。いつもは必ず上のフックに掛けているのに。そんな動作は意識的なものじゃないので、昨日たまたま下に掛けただけの可能性はある。しかし意識的ではない動作なんて、常に同じ動きになるだろうに…。(侵入者がシャワーを?)
あわてて風呂場の床に手をつけてみた。濡れてはいない。なぜだ、なぜシャワーが下
のフックに。俺がやったのか?昨夜は酔ってたっけ?思い出しながらシャワーを浴び、何の気なしにヘッドを戻す。やはり手は自然と上のフックに向かっていた。残骸は取り除かれたのでは?翌日からセロハンテープトラップが剥がれることはなく、気温や湿度のせいにできなくなってしまった。さてどうしたものか。こうなると、シャワーの一件が気になってならない。次の異変は、とても小さな、しかし非常に気になる種類のものだった。シャワー事件から数日後、コンビニ弁当を部屋のレンジで温めていたときのことだ。ブイーン…ギギギギ…なんだこの異音は?
回転の仕方がおかしい。波打つような感じで回っている。よく見ると、レンジの皿を支える棒が一本破損していた。別にそれはいい。不思議なのは、壊れた残骸がまったく見当たらないことだ。熱で気化した?まさか。セロテープとシャワーはまだ思い過ごしで済ませられる。でもレンジの残骸の消滅は、物理的にはありえない現象だ。人為的な力が加わったのなら話は別だが。そう、残骸は取り除かれたのでは?ならばレンジはいつ壊れたのか。最後に使ったのは1週間ほど前だから、この数日のいつかだ。その数日間には、シャワー事件当日も含まれる…。おかしな侵入者がいたものだ。レンジを壊して残骸を掃除し、シャワーを使って、何も盗らずに出ていくなんて。そんなバカげた空想で心を落ち着かせようとしたが、現実にそんなヤツがこの部屋にいたのだとすればやはり身震いがしてくる。やはりドアの鍵は付け替えた方がいいのだろうか。