外が騒がしいので様子を見に出てみると、引越し業者がせっせと荷物を運んでいた。隣室、507号室に誰かが入るみたいだ。そういえば空き部屋だったんだよな。夜になって、新住人が挨拶にやってきた。
「隣に越してきました、笹川(仮名)と申します。こちらが妻と娘です」
旦那さんは30代後半くらいで、ハキハキと話す明るい人だ。2人の娘はウチの夏美と同じくらいの年齢だろうか。「これ、つまらないものですが」奥さんが引越し挨拶のタオルを渡してきた。…スゲー美人じゃん。昔の鈴木京香みたいだ。ちくしょー、ウチのヨメとはえらい違いだ。
真由美は笹川家とすぐに打ち解けたようだ。翌日、仕事から帰ったオレに写メを見せてくる。「ほら、遊んでもらったんだよ」
夏美とアチラの姉妹が近所の駐車場で遊んでいる。
「涼子さん(奥さん)とも仲良くなっちゃった。今度子供たちを連れてお買い物に行くことになってさぁ。ダンナさんね、仕事が夜勤なんだって」
「へー」
「だから涼子さん、ダンナさんがゆっくり休めるように、昼間はなるべく子供たちを連れて出かけるようにしてるみたい。すごいイイ夫婦だよね」
ほう。あの美人そんな気遣いができるのか。それに比べてウチときたら…。隣は今日、ダンナ一人だったはず
日曜日、目一杯ダラダラしてやろうと午前中から出かけることにした。パチンコ行って、ラーメン食って、サウナにでも行こうかな。ビデオボックスも捨てがたいよなぁ。
「ちょっと出かけてくる。昼メシはいいから」
「いってらっしゃーい」
せっせと掃除をしている真由美を置いて、オレの自堕落な旅はスタートした。と、駅近くの交差点でお隣の美人奥さんと子供を見つけた。
「どうも〜」
「あ、なっちゃんのパパさん。お出かけですか?」
「ええ、そちらも?」
「ちょっと実家のほうに行くんですよ」
もうちょっと話をしたかったけれど、知り合いにでも見られて、嫁にチクられたら大変なことになるしな。さて、パチンコだ〜。
2時間後、オレのテンションはどん底まで落ちきっていた。2万5千円負けってどうよ。 ビデオボックスにも行けないのでさっさと家路についたところ、真由美も夏美もいなかった。買い物にでも行ったのか? ふぁ、昼寝でもしよっと。玄関のドアが開く音で目が覚めた。真由美と夏美が帰ってきたみたいだ。
「お帰り。どこ行ってたの?」
「うん、お隣」
そっか、仲の良いことで。…あれ?奥さんは実家に行くとか言ってたよな。ふつふつと疑惑がわいてきた。隣は今日、ダンナ一人だったはず。何してたんだ?子供の前でまぐわったとか?
こいつ、前科持ちだし、ひょっとして…。
そろっと家を飛び出したオレは、507号室のチャイムを鳴
した。あのクソ男、ただじゃおかねーぞ。
「隣だけど、ちょっといいかな!!」
「はーい、いま行きます」
旦那の声がしてすぐにドアが開いた。髪の毛が濡れている。シャワー浴びてたのか?それってつまり…。
「どうしました?」
ああーーーー!! …なにも言えなかった。真っ黒な状況証拠を目にして、心が砕けてしまったのだ。真由美、いいのかお前。オレも奥さんに手を出すぞ。