会話のタネ!雑学トリビア

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競馬WIN5で億の金を狙う

宝クジじゃない。競馬だ。競馬で100円を1億4千万円にした人間がいるのだ。この恐ろしいほどの配当は、「WIN5」で飛び出した。1票100円で、指定5レースすべての1着を当てるという、とんでもなく難易度の高い馬券だ。1レースの1着を当てるのも難しいのに5レース全部なんて至難の業。億の配当がつくのも時間の問題だとは言われていた。おそらく1票だけでズバリ当てたのではなく、いろんな組み合わせを買っていたのだろうが、たいした投資じゃあるまい。まったくもってうらやましい限りだ。わずか20万が億に化ける!億の金、俺も手にしたい。なにか当てるためのヒントはないだろうか。手がかりを見つけるべく、過去のWIN5、全6回のレースデータ(表参照)を並べてみる。
……ン? ちょっと待てよ。ずいぶんはっきりした傾向があるじゃないか。ということは、だ。億のカネを狙うためには、3つのレースで1〜5番人気を選び、残る2つのレースは全通りチョイスすればいいんじゃないか?どうせ1票たったの100円なのだから、大量の組み合わせを買っても大きな金額にはならない…
……と思ったら、大間違いだった。
仮に全通り買うレースが16頭立てだとしたら、買い目は5×5×5×16×16=32000
3万2千通り。つまり320万円。絶対に1億になるわけでもないのにそんなギャンブル、とてもムリだ。う〜ん。考えかたは間違っていないはず。ならば少し修正してみればどうだろう。荒れるであろうと予想した2レースのうち、自信の持てるほうのレースだけは1点予想にするのだ。
これならば買い目は5×5×5×16×1=2000
投資額20万円なら、出せない金額じゃない。これで億が期待できるなら絶対やるべきだ。1レース目は必ず荒れる!
日曜の朝。目が覚めるや、コンビニで競馬新聞を購入した。
本日は東京、阪神、新潟の三場所同時開催で、WIN5は、次の5レースを対象に行われる。
1レース目阪神10レース(安芸ステークス)
2レース目東京10レース(ホルコンJTC)
3レース目新潟10レース(やまぶどう賞)4レース目
阪神11レース(垂水ステークス)
5レース目東京11レース(安田記念
心がざわついた。荒れるレースが2つある! ばっちり億馬券の条件じゃないか。荒れる2レースとはずばり、1レース目の安芸ステークスと、5レース目の安田記念である。まずは1レース目。
このレース、驚くべきは、『休み明け(休養明けの馬)』の多さである。普通は休み明けなんて1レース2、3頭がせいぜいなのに、なんとこの安芸ステークスには、16頭の出走中、7頭もいる。馬が休む理由はケガだったり、リフレッシュのための放牧だった
りとさまざまだが、いずれにせよ休み明けのレースは、まずロクに走れない。
今回は、その走らない馬の中に、5番人気までの馬が2頭も含まれているのである。こいつらは間違いなくコケる。残る人気馬3頭も1着になれるほどの力は持っていない。せいぜい2着がいいところだろう。16頭という頭数の多さも、荒れる根拠を後押ししている。競馬の常識として、馬の頭数が多いと、
×他馬が前を塞いでしまい、人気馬が抜け出せなくなる
×走行中にドロをかぶって、ヤル気をなくす
などなどの不確定要素が生まれ、荒れるケースが増えるのである。1レース目は必ず荒れる。自信アリアリだ。次に5レース目の安田記念。まず、もともとこのレースは荒れることで有名である。過去10年間で、5番人気以下が5回も勝っているほどだ。過去のデータだけでは、心許ない? もちろんだ。心配はいらぬ。個々の馬も、大荒れレースを予言している。ダントツの一番人気、現役最強牝馬の呼び声が高いアパパネ。こいつがまずコケる。根拠は、3走前のヴィクトリアカップである。彼女はその前走の秋華賞を征し、ダントツの1番人気で出走してきたのだが、結果は3着の惨敗だった。なぜか。オレは秋華賞の激走がたたったのではないか、と見ている。デリケートな牝馬だけに、回復までに時間がかかり、本調子ではないデキだったのだ。そして今回の安田記念は、当時のレースとダブるのである。前走のヴィクトリアマイルを激戦の末に勝っているのだ。彼女の体力からいって、今回の中3週というローテーションは短すぎる。走れない。
2番人気のダノンヨーヨー。これも来ない。前2走、勝っておらず、調子はイマイチ。GⅠの安田記念で勝てる器ではない。
3番人気のスマイルジャック。ない。前走のマイラーズCで6着の惨敗では期待するほうがバカだ。
4番人気のシルポート。来ない。こいつは逃げ馬なのだがGⅠで逃げ切れる力はない。
5番人気のストロングリターン。ありえない。あまりにグレードレースの経験が不足している。
以上、5番人気内の馬が総コケすることは火を見るより明らかだ。
さて問題は、共に大荒れの安芸ステークスと安田記念、どちらを1点買いにするかだ。
5レース目、安田記念である。
オレはこのレースに穴馬を見いだしたのである。
8番人気のクレーバートウショウだ。この馬は前走の京王杯SCで5着に敗れている。そのときの上位4頭が、こぞって安田記念に出走してるのだから、人気がないのもムリはないだろう。しかし、それは間違っている。京王杯SCの走りは、ただ実力を発揮できなかっただけなのだ。あのレース、クレバートウショウは絶好のスタートを切った。レース途中も6、7番手あたりのいいポジションに付けていた。最後の直線に入ってからもイイ走りで着順を上げてきた。しかし結果は5着だった。オレは見逃さなかった。最後の直線でアクシンデントが発生したことを。前が2頭の馬でふさがり、抜け出ることができなかったのだ。あの5着はヤル気をなくしてしまっただけのことで、オレに言わせれば、まったく参考にならないレースなのである。だとすると、見るべきはその前
のレース。なんとこれが5戦中、1着2回2着2回という好成績なのだ。そのうちの一つには、安田記念と同じ1600メートル、GⅡマイラーズカップの2着も含まれている。ちなみにこの馬は母の父がトウショウボーイ、父がフジキセキという超良血馬だ。GⅠレースの一つや二つ、あっさり取っても不思議ではない器なのである。
昼すぎ、後楽園ウィンズにやってきた。WIN5はネットからしか購入できないため、ノートパソコン持参である。WIN5の締め切りは、午後2時40分。30分前にパソコンを立ち上げ購入フォームに接続する。まずは1レース目。これは荒れるから、すべての馬にチェック。2〜4レース目は、現在のオッズを確認しながら、それぞれ1〜5番人気の馬をチェック。そして最後の5レース目、安田記念はクレバートウショウだけにチェック。購入金額はジャスト20万円だ。
『投票と金額を送信してもよろしいですか?』
あらためて確認されるとちょっと怖い。オレの理屈にどこか落ち度はなかったか? 見落としはないか? えーい、クリック!「投票を受け付けました」これで20万円は口座から消えた。いくらに化けるのか。億か、ウン千万か。あるいはゼロか。オッズは出ない。配当がわかるのは全レース終了後だ。1レース目
阪神10レース
このレースは全通り買っているので、ハズレはない。ただ億の金を手にするには、荒
れてもらうことが大事だ。人気馬、まとめてコケてしまえよ。レースがスタートした。1番人気の馬は…あいつか? 2番人気はあれで3番人気があれ。4番と5番はどこだ? なんだかよくわからんな。
結果 1着 5番人気馬
馬券はハズレてないが、ヨミはハズレたことになる。これで億を取る可能性はかなり減ったか。いや、まだ数%は残ってるはずだ。ていうか、千万単位でもいいし。
2レース目東京10レースこのレース、5番人気以内で決まればクリアだ。まず大丈夫だろう。パドックで、1番人気は気合いの入った様子で首を上げ下げしている。調子はよさそうだ。
2番人気は…落ち着いてるので、まずまずか。3番人気は…イライラしてダメっぽいなあ。4番と5番は…。とにかくみんな頑張れ!結果 1着 3番人気馬
なんとかクリアした。
3レース目 新潟11レース
出走8頭のうち、上位5頭をすべて押さえているのだ。確率から考えても、まず負けるわけがないだろう。レーススタート。余裕のよっちゃんである。こんなとこで負けるようじゃ、ギャンブルから足洗ってやるよ。結果 1着 2番人気馬ふ、当然よ。
4レース目阪神11レース
だんだん足が震えてきた。やけに順調じゃないか。こんな調子で大金を手にしていいのか。いや、20万円分も買ってるんだから、ここまでは当たって当然だよな。山はこの4レース目だ。荒れるなよ。順当に順当に。レース、スタート。よしよし、ああ、よし、ああ、うん、よしよし、そのまま行け、走れ!
結果 1着 4番人気馬
ついに来た。4レース目まで見事に取った。残すは最終5レースのみだ。やべー、マジで緊張してきたぞ!5レース目東京11レース安田記念
8番人気クレバートウショウが来れば、オレには大金が転がり込む。
 本日のWIN5の結果は、
1レース目 5番人気
2レース目 3番人気
3レース目 2番人気
4レース目 4番人気
ここに、5レース目 8番人気が加わると、過去の配当から予想しても800万は超えるだろう。億だってないとはいえない。億!15時30分、すでに全馬がターフに出て、それぞれ足慣らしをしている。4番のクレバートウショウは、心なしか落ち着き過ぎているようにも見える。もう少し気合いが入ってもいいように思うが。ほどなく各馬がゲート前へ移動した。我がクレバートウショウ号も、すんなりゲートへ。何の問題もない。15時40分、スターターがスタート台に立ち、場内にファンファーレが鳴り響いた。クレバートウショウ4着。長い競馬人生の中で、ここまで強烈に勝ちたいと思ったことはなかった。そしてレース後、ここまで自分を責めたこともなかった。なぜ最終レース、もう1頭選んでおかなかったのか、と。1着は9番人気の馬だった。荒れるというヨミは当たっていたのだ。