会話のタネ!雑学トリビア

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瓦職人と言う仕事がこんな時代にも減らない理由

瓦職人は、住宅の屋根に瓦を敷くのが仕事だ。一般的にみてダーティなイメージとは無縁の職業だと思うだろうが、俺の住む北陸地方には、昔からかなりタチの悪い業者が結構いたりする。どういうことなのか。そのあたりの内情を、この道15年のベテラン職人である俺が、皆さんにご紹介しよう。そもそも瓦職人というのは、皆さんが想像する以上にお気楽な仕事だ。地域によって多少の違いはあるが、毎年12月から3月までの3カ月間は、いっさい働かずに済むからだ。それも普段の月給の6、7割のカネをもらいながら。冬の北陸は雪や雨の日が多くて仕事にならないため、すべての瓦職人はいったん勤めている瓦工事店から〝形式的に〞解雇される。で、その間は失業保険で生活し、春になればふたたび店側に雇用してもらうという流れが習慣になっているわけだ。
1年の4分の1を遊びまくりながら、その間もある程度のカネはもらえる仕事(俺の場合、失業保険額は月17万程度)。まったく、こんなオイシイ職業もそうはないだろう。とはいえ、安穏とはしていられない。今、この業界は斜陽の一途をたどっており、実際、廃業に追い込まれている業者も少なくないからだ。瓦ぶきの住宅がどんどん減っている状況では仕方のないことかもしれないが、かといってこのまま仕事がなくなり続ければおまんまの食い上げ。俺の所属する瓦屋やいくつかの同業者たちが悪事に手を染めている理由も、まさにそこにある。なのでこんな輩も出てくる。わざと他人の家の屋根瓦を壊してそれを修理してカネを取る、いわばマッチポンプ的な手口だ。
 たとえば、ある民家に屋根の修理を依頼され、現場に向かうとする。当然、その家の修理は普通に行うのだが、もし隣家が留守だった場合は、そのままそっちの屋根にも飛び移り、カナヅチで瓦をたたき割る。で、家人が帰ってきたらシレッと伝えるのだ。
「いまお隣さんの屋根の修理に来てるんですけど、ふと見たらオタクの屋根もかなり傷んでましたよ。もし良かったらついでに直しちゃいましょうか?いま平気でも、雨漏りしだすと木が腐っちゃって余計にお金かかっちゃうからやった方がいいと思いますけど」こう言えばまず相手は断らないし、さらにチャンスがあれば、また屋根をつたって別の家の瓦も壊すことだってままある。とにかくこうすれば、1回の修理依頼で、2倍3倍の料金を稼げるわけだ。従業員がもっともエキサイトするのは、町に台風や大雨などがやってくるときだ。まずは暴風雨の中、車2、3台に分乗して、山の斜面に沿うように建っている住宅街や、裏山のある寺社などへ向かう。言い換えれば、崖の下や道路の下方に建っているような建物のことだ。
そして、4、5キロ程度のやや大きめの石を上から屋根にめがけていくつか落とす。そう、大雨の落石を装って屋根瓦をぶち壊すのだ。ここで気をつけているのは、石が屋根を貫通するような、大規模な破損にしないこと。下手すると市の土木課などがキケンと見なして現地の調査に乗り出すなど、やっかいな事態にもなりかねない。その意味で4、5キロの石というのは軽微な破損に留め、なおかつ住民も大騒ぎしない、手頃な重量なのだ。また現場に落石防止のネットが取り付けてある際は、あらかじめ石やハンマーで叩くなどして、破れ目を作っておくのも重要な細工だ。防止ネットが機能しているのに落石が起きるのはいかにも不自然だし、刃物でネットを切断しては、人的な仕業だとバレバレになる。とにかく、以上のような仕込みをやっておけば、翌日、修繕依頼の電話がじゃんじゃん舞い込むという寸法だ。ホント、田舎の人間は疑うことを知らないから助かる。