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品薄商法を狙った!?1日3時間しか開店していない謎のラーメン屋

昨今は飲食店にも品薄商法が蔓延しているような気がします。「売り切れ次第、即終了」を謳う有名なドーナツ屋やパンケーキ屋などには長い行列ができ、夕方には売り切れ、店仕舞いなんていう営業形態を多く見かけます。中にはモツが売り切れたとか言
って呑み屋なのに夕方には閉店する店もあり、だったらもっと仕入れておけよと思わずにはいられませんが、そんな品薄商法が流行る十数年前から毎日1日3時間しか開店していない謎のラーメン屋が存在するとの怪奇情報を入手。
 なんでも客が来ようが来なかろうが昼間のみ11時半から14時半までの営業で日曜は定休日というから普通のまともな社会人が訪れることは難しいようです。そこで今回定職に就かないアウトローの自分がその真意を探るべく、現地へと足を伸ばしてきました。
 東京東部、地下鉄某駅から徒歩12分ほど歩くと風情のある小さな川が流れており、その橋のたもとに今にも崩壊しそうな一軒のラーメン屋が佇んでいました。手前の敷地には庭があり、シャツやパンツなどの洗濯物が干してあるのはおそらく店主のものでしょうか。店の前には外にも拘わらず流し場がありラーメンの丼が重なっており、シンクには洗う前の丼が無造作にいくつか放置されています。若干衛生面に不安を覚えながらも店の左側を見るとベンチとテーブルがあり、そこでモヒカンの大男が一人で大盛りラーメンを食していました。そのシュールな光景にやや腰が引けつつも、ドアを開け入店。
 店内は6畳ほどと狭く、カウンターに椅子が5つ、後ろには4人掛けのテーブルが一つ。訪れたのは昼どきの13時半にも関わらず、店内の客はゼロ。カウンターの向こうの厨房では70を過ぎたであろう初老の店主が丸椅子に座り、静かに目を閉じていました。何か瞑想でもしてるのかと思いましたが、「すいません」と声を掛けると小さな躰をビクッと震わせ目を覚ましてくれました。メニューはラーメンが10種類ほど漢字で記されており、迷った末に「雲呑(ワンタン)」を注文してみると店主は「そんなの年寄りが食うもんだよ! 腹が膨れないよ」と言い、驚いていると「炒麺(ラーメン)か湯麺(タンメン)にしときなよ! それでもあんたみたいな若い人は腹膨れないよ!」と忠告を受けたのでしょうがないから炒麺(ラーメン)を注文しました。
 出来上がりを待っている間、ドアが勢いよく開いたかと思うと常連らしきおっさん2人が来店。2人は店主に挨拶して大盛りのタンメンを頼むと、再びガラガラとドアを開けて店の外へ。不思議に思って外を覗くと、流し場からコップを取り、外の給水器で自らお茶を入れていたのでした。
 郷に入れば郷に従え、自分も同じように外に行きお茶を汲み、店に戻ると先ほど注文したラーメンがテーブルに置かれています。恐る恐る一口食べてみるとこれが驚くほどの美味。年季の入った外観からは想像も付かない美味しさでありましたが、やはり店主の言うとおり量が圧倒的に少ないのか、完食したにもかかわらず腹が半分ほどしか満たされず、ラーメン屋でラーメンをもう一杯おかわりするという人生初の体験をすることになりました。すると店主が「だから言ったろ!この前も6歳の子供が親と来たんだけど、その子もおかわりって言って泣き出して、ラーメンとタンメン2つ食べて行ったよ! ガハハハ」と豪快に話してくれて、どんなリアクションをしていいのか困惑しました。
 タンメンを待っていると再びドアが開き、なんと先ほど外のテーブルで大盛りラーメンを食べていたモヒカン男が店内に入ってきたかと思ったら、エプロンをして厨房へ。店主の息子なのか、どうやら店員だったようでテーブルを手際よく拭き始めました。結果2杯目のタンメンでどうにか腹7分まで辿り着くことに成功しましたが、時間は既に14時近く。店が閉まるまであと30分ほどありますが、モヒカン男が食器洗いのスピードを加速させて今日の仕事の集大成に入り始めたので、さらなるおかわりは断念。食べ終わった食器は客が外の流し場まで自ら持っていくとのことで、その作業を終えたのちに外で会計し、帰路へ着きました。ラーメンは美味ながら、営業時間の短さに加えて麺の量にまで品薄商法を取り入れていた前衛的な店だったのでありました。