セコい詐欺を繰りかえしてるやつがいる。簡単に言ってしまえば募金詐欺だ。
とはいえ、路上に募金箱を持って立ち、「●●地震の被災者への支援をお願いします」という昔ながらの方法ではない。俺が狙うのは日本人ではなく、白人の観光客だ。具体的な手口を教えよう。まず京都や大阪の観光地をうろつき、ターゲットを探す。カップルや単独男性(女性)でも決して悪くはないが、もっとも目を光らせているのは子連れの家族だ。で、まんまと発見すれば、ニコリと笑みを浮かべてこう切り出す。
「うーうーあーあー」
と同時に『Please Donation! Deaf‐Association(寄付をお願いします。ろうあ協会)』
と書いたボードを提示する。そう、ろうあ者のフリをして金をせびろうというワケだ。
なぜ白人に、わざわざろうあを装うのか。むろん理由はちゃんとある。
欧米社会には喜捨の文化が深く根づいている。弱者に対しては積極的に寄付するのが当たり前とされているのだ。ましてそれが家族連れならなおのこと。だって親は、子供の前で模範的な行動を取らねばならないのだから。相手が「OK」とうなずけばすかさずノートを開いて見せる。そこには寄付した人間の名前と寄付金の額がびっしりと記帳されていて、2千円〜2万円の幅がある。もちろんその大半は偽の記載で、つまり最低でも2千円は払ってくれよと暗に強要するためのものだ。
こんなわけで2時間ほど観光地をウロついていれば、それだけで軽く2、3万、多いときで5万は稼げるという。