会話のタネ!雑学トリビア

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競馬必勝法の張り紙に連絡したらこうなった

先日、新宿の路上で奇妙な張り紙を見つけた(競馬必勝法)
 世に競馬の必勝法なんてないわけで、どっかのバカが考えたお粗末な詐欺だと思われる。何だか文章も稚拙だし、『1000万円後払本の著者となります』なんてクダリもよくわからないし。まぁ普通ならさっさと素通りだ。
 が、何となく引っかった。儲け話を信じてみようと思ったわけではなく何が飛び出してくるのか見てみたいだけの好奇心だ。記載されていた電話番号にかけてみる。
「張り紙を見て連絡をしたんですが…」
「そうですか。まあ、私の方法は確率だけを見てるんですが」
 たどたどしい声の男が出た。
「本当に儲かるんですか?」
「儲かります」
 じゃあ何で自分でやらないんだ、という突っ込みはあえて飲み込んで聞いてみた。
「会って教えてもらうことはできますか?」
「はい。こっちに来てもらってもけっこうですよ」
 どうだろうこの展開は?
 夕方、電話で教えられた住所に向かった。ファミリー層がたくさん住んでいそうな大きな市営住宅だ。怪しい雑居ビルなんかを想像していたが、意外とフツーの場所である。さて、どんな輩が出てくるやら?インターホンを押すと、上はTシャツで下はパンツというラフな格好の、60 代後半くらいのジイさんが顔を出した。その後ろにさらに高齢のバアさんも…。あれ? 部屋を間違えたかな?ところが、ジイさんはニヤニヤ笑っている。
「どうも、お待ちしてました」
 電話の声の主だ! しかしバアさんのほうが何だか困惑した表情で言う。
「あの、申し訳ないんですがご飯を食べてるところなんで…」
「せっかく来てくれてるんだからいいじゃないか、お母さん」
 ジイさんがバアさんの言葉を打ち消した。てか、お母さん!?
「散らかってるし、お母さんイヤなんだよ」
「ダメ。早くして。お母さん」
 この2人、親子か! にしてもこのジイさんの幼稚な感じは…。とりあえず入ってみるか。部屋に他に人間はおらず、彼ら親子は2人だけで住んでいるようだった。6畳間に通され、すぐにジイさんの解説が始まった。競馬新聞『エイト』を開き、
12レースの出走表を指差す。
「これは、12だから。1と2で3。つまり300万円の出目なんです」
「…はぁ」
「この馬、前々回が3着、前回が6着。で、9ってのは一番強い数字、大当たりの数です」
しょうもない話だろうとは思っていたが、ここまで無茶苦茶とは。そもそも言ってることが日本語としてデタラメすぎる。これで金を取ろうとしてるなんて、大丈夫かこの人?適当に相槌を打って聞いていると、台所のほうからバアさんがお盆に缶コーラを乗せて持ってきた。
「コーラ、ここに置いとくんで。…適当に聞いてやって下さい」
 ボソリと呟き、台所のほうに引っ込んでいくバアさん。自分の息子がおかしいことがわかってるんだ。何だかキツイなぁ。しかし、ジイさんはそんな母親の気など知る由もなく、チンプンカンプンな確率論を再開。そしておもむろに文字で埋まった原稿用紙の束を取り出した。
「私のこの話は、もう原稿を書いてるから、出版社に持ちこんで本にしてもらおうと思ってます。本ができたらあげますよ」
 本気なんだ、このジイさん。こりゃある意味、単なる騙し野郎よりも手強いぞ。かくして愚にもつかぬおしゃべりが続くこと1時間ほど、ようやくジイさんが話をやめた。
「じゃあ説明はしたんで、私に3万円貸してくれますね?」
「…いやぁ、ちょっと…」
 さて、どうかわそうかな。
「いまいち理解できないんで。申し訳ないですけどお金は…」
「払ってもらわないと困ります。約束なんで!」
 ジイさんの視線がガツンと飛んできた。怒ったのか?まさか暴力とか使ってくる?ふと見ると、部屋の入り口にバアさんが立っていた。
「資格もないのに、お金がどうのこうのとか、そういうこと言っちゃダメ」
 見かねて子供を叱りにきたようだ。資格の話を出すのは違うだろとは思うけど。対してジイさんは頭をくしゃくしゃかきむしっている。
「…おかーさんの競馬嫌いは本当に困ります」
「そんなこと言うと、お母さんしょーちしないよ!」
 親子喧嘩が始まっちゃったんだけど…。
「お母さんだって、ペンションをやるときに、ちゃんと試験に受かったんだから」
「知らないよ」
「競馬はもう止めて、ちゃんとしなさい。あなたも整体の仕事をやったときは、3万円くらいは稼げてたでしょ?」
「そんなに稼げなかったよ!」
2人は今や互いにモノを投げ出してもおかしくなさそうな雰囲気だ。てかオレの存在って…。そそくさと玄関へ向かう。
「…すみません。ぼく、そろそろ帰ろうと思いますんで」
 言い合っているジイさんバアさんを残し、部屋をあとにした。何だったんだこの体験は?