会話のタネ!雑学トリビア

裏モノJAPAN監修・会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

河川の氾濫が頻発し地盤がゆるい地域の生活

かつて、悪土と呼ばれた町。由来は「悪い土」からきているらしい。河川の氾濫が頻発していたようで、地盤がゆるいためにこう名づけられたのだ。地図を確認しよう。北側に流れる大きな川と、西の森林に囲まれた一帯が旧悪土地域だ。東には国道、南にはゴルフ場があり、中心には民家がぽつぽつとある程度で世帯数はあまり多くなさそうだ。
 いざ現場へ。地方によくあるパチンコ店やサラ金のATMが点在する国道から森林方面に向かう。田舎道を進むも、なかなか人とすれ違わない。ときおり地方特有の古びた大きな一軒家などは見えるのだが。しばらく歩いていたら平屋があらわれた。看板には「公会堂」とあるが、扉は閉まっており人の出入りは見えない。遠くから自転車が近づいてきた。ヘルメットをかぶった男子中学生だ。
「こんにちは」
「はい」
「この辺に住んでるの?」
「はい」
「大雨のときに川から水が溢れて大変、みたいなことってある?」おそらく現在ではそういったことはないと踏んでの質問だったが、意外な言葉が返ってきた。
「はい、ときどき」
「え、川から水が流れ出たりとか?」
「はい。それで学校の近くが通行止めになったりするんで」
「へえ。危ない目にあったりしたことはある?」
「僕はないですけど…」
「そうなんだ」
「でも台風のときとかは学校から『絶対外に出るな』って言われてます。川に流された人がいたんで」
 つい昨年、台風の時期に川が氾濫し、学校の先輩(男子生徒)が流されたという。すぐに自力で堤防まで上がったために大事には至らなかったそうだ。先を進もう。次第に周囲は大きな木に覆われ、森の入口にたどりついた。そばには小川があり、透きとおったキレイな水がチロチロ流れている。しゃがんでその流れを見ていたら後ろから声が飛んできた。
「気をつけてよ!」
 振り向くと『監視員』のベストを着た男性が立っている。
「転んで落ちないように、気をつけないと」
鬼気迫る表情のワケをたずねてみれば、この小川では、遊んでる子供たちが足を滑らせて落っこちることが多々あるらしい。この取材の前日、ここらへんは一日中雨が降っていたそうだ。そしてオレがいま立っている川べりがその影響で崩れてしまう可能性があるため、注意したのだとか。なるほど、すぐ近くに看板が立っている。
〝入ってはいけません〞
たしかに事故が起こっている証拠と言えよう。この男性は、森の中にあるバーベキュー場の監視員さんなのだが、ときどきこうやって小川の付近まできて、見回ってい
るのだ。そのまま森の奥へ。川沿いのバーベキュー場が見えてきた。お客さんはいない。いや、正確にはバーベキューをやってる人はいないが、川に入って遊んでいる親子連れがちらほらいる。水着姿で遊ぶ子供達と、それを見守る親御さんたち。微笑ましい光景だ。川で遊んでいて危険なことはないかたずねたところ、「雨の日は危ないから近づくわけない」とのことだ。
 ここで先ほどの監視員さんがまた近づいてきた。
「危ないからバーベキューをやる人は少なくなったよ。何人も川に流されてるんでね」
 このポイントは毎年1、2人が川に流されている危険な場所なのだと言う。『この先台風・豪雨時 冠水のため通行止め』の看板もしっかり立ててある。森から引き返して悪土の中心部へ。広い田んぼで腰をかがめて作業中のおばさんに声をかける。
「このへんは土が悪いって聞いたんですけど、そうなんですか?」
「ええ? まあ、悪いよ。水はけが悪いよ。ホント」
「田んぼは大丈夫なんですか?」
「まあ、なんとかね。でも農家は昔っから少ないね。いまはウチともう1、2軒くらいじゃない。水はけが悪いんだよ」
 この田んぼもヨソから土を持ってきて固める、みたいな措置をしてなんとかやれているとこぼすおばさん。さらに、おばさんは苦々しい顔をしながら語ってくれた。
「床下浸水もときどきするしねぇ。あ、昔、外から来た人に『こんな危ないとこ住んで
たらダメ』って言われたよ。あくど、あくどってバカにされてさ、頭きちゃうよ」