ミクシーの『西川口コミュニティ』に妙なクレームが載っていた。
『おじさん(店員だと思う)にヘンなこと言われて傷つきました…セクハラっていうか…』さらに店名でネット検索したところツイッターにも。
『●●●って居酒屋、フラフラしてる店員のおっさんがいきなり「おっぱい大きいねぇ」とか言ってきた…大丈夫ですかこの店?』この居酒屋の店員、女性客にな
にかヒワイな言葉を投げかけているみたいだ。そんなことありえるのか。
こんな苦情を見たスケベ男はこう考えるに違いない。セクハラされて顔を赤らめたオンナが見れる居酒屋だって?
行くっきゃない!
さっそく西川口に足を運んだ。駅西口を出て、ロータリーから線路沿いに南に進んで7分ほど。右側ビル内にその店『T』が見えてきた。
「いらっしゃいませ〜」
低い声の男性店員にカウンターへ案内された。ここは焼き鳥がウリらしく、目の前には汗を垂らして串を焼くオジサンが見える。他にも女性店員が一人。席はカウンターが5つ、テーブル席が4つだ。
肝心のセクハラ店員は…こいつかな?店内中央に立ち、あたりをキョロキョロする50がらみのおじさんが怪しいぞ。
ビールを飲みながら彼に注意を払う。店内にいるのは数人の男性客と女性客2人組だけなので、彼女たちに近づいたときに何かアクションを起こすはずだけど…。
少ししてから女の子が「すいませーん」と手をあげた。例のおっさんが近づいていく。
「レモンサワー一つと、あとは串盛りください」
「あいよ。(もう一人に向かって)お姉さんは?」
「あ、大丈夫です」
「そう。もっと飲んだほうがおっ
ぱい大きくなるよ」
「え?」
「(厨房に向かって)レモン一つと串盛り〜(そのまま席を離れる)」
マジかよ。普通におっぱいとか言ってるし。
いきなりそんなことを言われた彼女、なにか唖然としたような表情をしたのちに友達とヒソヒソ話をはじめた。きっと「なにあれ」とか言ってるのだろう。
そして彼女らが注文した串焼き盛り合わせを持ち、再びおっさんが近づいていった。
「お待たせ〜。ねえ、おっぱい大きいよねぇ」
「…いやぁ」
またおっぱい! 彼女も困ったような表情だ。
「いいなぁ。うん。いいなぁ。じゃあごゆっくり〜」 オッサン、自由すぎるだろ。
新たな女性客2人組が来店し、おっさんは嬉々とした表情で案内している。
2人組ちゃんたちは間もなくして帰ってしまった。よっぽど耐えられなかったのだろう。入店したばかりの2人組が手をあげた。オッサンが近づいていく。
「あの、すいません…」
「あれ?AVとか出てない?すごいエッチな顔してるよね」
「…いや」
「その顔!それだけでオジサン興奮しちゃうなぁ」
このオッサン、ちょっとヤバくないか? 女の子も固まってるじゃん。
オッサンは注文を受け、すぐにまた酒を手に戻ってきた。
「お待たせしました。ねえねえ、オレ固くなっちゃったよ。どうしよっか?」
「いや〜、知りませんよ」
「そうだよね。ちょっと自分でシテくるね。それとも目の前で見てくれる?」
「……」
驚異的だ。あの2人、お通夜みたいに静かになっちゃってるじゃん。一人なんか耳が真っ赤だし。横で聞いてるぶんには良いオカズとも言えるけど、この店の行く末が心配だ。まあいいや、メシでも食うか。
「すいませーん」
おっさんが近づいてくる。
「……」
「あの、カラアゲください」
「……」
おいおい、男女で態度変わりすぎだろ!
その後立て続けに客が入ってきた。おっさんはカップルの女性にはセクハラ発言はしない。やはりオトコ連れだといいづらいのだろう。
だが女子3人組にはしょっぱなから暴走だ。
「あのさ、もっと前かがみになってくれる。胸の谷間見たいから」
「こっちの子はクチでするの上手そうだよね。オジサンの、どう?」
もはや、客に対する言説ではない。キャバクラでも眉をひそめさせるレベルだ。
3人への口撃は続いた。
「キミは貧乳だよね。でも乳首感じるでしょ?」
と言って顔を真っ赤にさせたり、
「そっちの子は愛人タイプだよね。性感帯は、そうだなぁ、アソコでしょ(股間を指差して)」
と言っては顔をゆがませたりしている。
客が来なくなって潰れることのないよう、おっさんには適度に頑張ってほしいものだ。