会話のタネ!雑学トリビア

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aikoの歌ってみたバカに会ってみた

aikoの歌ってみたバカは、服屋の店員をしている39才の女性とのことだが、実際に会ってみると4、5才は若く見えた。
「こんばんは」
 ぺこりと挨拶するその背中にはギターケースが担がれている。弾き語りしようってのか。つくづくカッコをつけたがる連中だ。カラオケに入ってからは、彼女の独壇場だった。本物のaikoさながらの振り付けで激しく歌いまくり、そうかと思えばギターをつま弾きながらしっとりと歌い上げる。しかし、彼女がaikoに成りきろうとすればするほど、やるせなさがこみ上げてくるから不思議だ。
 マイクを置いた彼女に声をかける。
「いやー素晴らしい」
「あは、ありがとうございます」
「でも、あなたの動画を観た人はきっと僕みたいに誉めてはくれないだろうなぁ」
「……」
 キョトンとした顔がなんかムカつく。
「あなたに悪気はないと思うんですけど、でも、それが問題でもあるんですけど、aikoのファンが間違ってあなたの動画を聴いたら絶対イラっとするでしょうね」
「え?」
「だってあなた、aikoのモノマネしてるただの素人だし。そりゃうざいでしょ」
 彼女は呆然とし、やがて重い口を開いた。
「…でもYouTubeってそういうところじゃないですか。自分の好きな動画をアップしちゃダメなんですか?」
「ダメです」
「どうしてですか?」
「不快だからです」
「…もういいです」
自分の動画を不快呼ばわりされたのがよほどショックだったのか、彼女は唇をかみしめて立ち去っていった。最後のひとり、B'zの歌バカと落ちあったのは翌日の昼のことだ。
 待ち合わせ場所に姿を見せた30男は、スケーター風の服装に身を包み、やたらと目
力があった。鼻っ柱の強そうな気性が見て取れる。ちょいと不安だ。何事もなければいいのだけれど…。
「じゃあ、さっそくB'zを歌ってもらえますか。楽しみだなぁ」
 カラオケに入ってマイクを手渡すと、スケーターがややスカした態度で口を開く。
「んじゃ、適当に好きな曲を順に歌ってくんで。それでOKすか?」
 はいはい、OKOK。
 スピーカーから演奏が流れ出すや、スケーターがビートに乗ってリズミカルに踊り出した。B'zってこんなだったっけ? もしかしてオリジナルの振り付け? あわわわ、ドン引きなんですけど。曲を歌い終えたところで、ソファに腰を下ろしたヤツがぼそっとつぶやいた。
「かー、サイコー」ここまで自分に酔えるなんて、逆にあっぱれと言うほかない。
「いやぁ、すごい。相当、歌い込んでるでしょ」
「ええ、まあ」
「やっぱり、YouTubeに投稿するために練習を?」
「というか、B'zを歌ってると最高に気持ちいいから」
「あ、なるほど。曲を歌うことが一番の楽しみだと。だったらお願いがあるんですけど。YouTubeにうっとうしい動画をアップするのやめてくれませんかね?」
 スッとスケーターの目の色が変わった。
「自己満足の動画をああいう共有サイトにアップされたら検索の邪魔になるんですよね。そんなのを誤って観ちゃった日にゃ、腹が立って壁をぶん殴りたくなるっていうか」
 一拍おいてからヤツが吐き捨てるように言った。
「ケンカ売ってんの?」「まさか。お願いしてるんですよ。不快なナルシスト動画を投
稿しないでくださいって」
 直後、顔面にビールを浴びせかけられた。