会話のタネ!雑学トリビア

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ユーチューブで勘違いして歌をアップしてる奴らを説教した

ターゲット、サザンの歌ってみたバカは、なかなか香ばしい人物だ。大量に投稿して
いるだけでなく、各動画の説明欄に、
『お待たせいたしました! サザンのカバー第●弾。今回も張りきって歌います!』
 といった文言を必ず書いているのだ。勘違いぶりもここまでくれば滑稽でしかない。誰も待ってねーよ!
 例のカラ館に現れたのは、30代後半のちょいとワイルドな風貌の男だった。声をかけると、調子のいい反応が戻ってくる。
「あ、どうもっすー。今日はよろしくっすー」
 見かけによらず、ずいぶんノリの軽い人のようだ。
 さっそくカラオケへ移動し、サザンの曲をいくつか歌ってもらった。本人は桑田佳祐のモノマネをしているつもりらしいが、似てるのか似てないのか判断に困る微妙なレベルだ。
 歌い終わったワイルドさんに話しかける。
「気持ちよさそうに歌ってましたねぇ」
「いやいやいや」
「でも気持ちいいのは歌ってる本人だけですけどね」
「ははは、そうそう」
 チクリと刺したつもりが平然と笑っている。
「ところで動画の説明欄に、お待たせしましたって書かれてますけど、誰かファンみたいな人がいらっしゃるんですか?」
「え、特にいませんよ」
「そういうのって、ちょっとサムくないですか? だって単なるカラオケでドヤ顔してるってことですし」
「ええ〜、ちょっとまいったな。いやぁ、ええ? どうしたの?」
 急にワイルドさんの落ち着きがなくなった。視線が定まらず、せわしなく頭や顔を掻いている。
「歌ってみた動画がうっとうしいから、止めてもらいたいんです。お願いできませんか?」
「いやぁ、嫌な感じだよねぇ。悪いけどさ、もう帰らせてもらうわ」
 うぬ、逃げるか。でもこれだけ狼狽させたんだからヨシとしよう。
 続いては尾崎豊と合流する。
やって来たのは、20代後半の神経質そうな痩せ男だ。挨拶もそこそこにキョロキョロとあたりを見回し、どこか怪訝そうだ。
「あの、今日のカラオケって2人だけなんスか?」どうやら、大人数でのオフ会を想像していたようだ。
「ええ、僕たちだけです。楽しくやりましょうよ」
「どうかなぁ。盛り上がりますかね」
「歌には自信があるようですね」
「まあ、勉強してますから」
 たしかに自慢するだけのことはあった。カラオケに入って尾崎の『I LOVE YOU』を歌わせたところめちゃくちゃ上手いのだ。声もそっくりだし。
 しかし、この陶酔ぶりはいただけない。妙なマイクの握り方も、うっとりした表情もいちいち鼻につく。歌ってみたバカの典型的な精神構造を見せつけられる思いだ。
 そのうち曲が終わった。
「上手い! 目をつぶると尾崎本人かと思いましたよ」
「はは、どうも」
「でも、いくら尾崎そっくりでも別人ですからね。ファンにとっては、あなたの動画なんて無価値でしょうね」
 痩せ男の目尻がピクリと動く。
「…え?」
「だから、ド素人の歌手気どり動画を見せつけられたら、胸クソが悪くなるって話ですよ」
「はあ?」
「とにかく迷惑なんで歌ってみたの動画、削除してくれませんか。二度とそういうことしてもらいたくないんですけど」
 ふいに立ち上がって、痩せ男は部屋を出て行った。反論の余地がないと悟り、尻尾を巻いたか。