会話のタネ!雑学トリビア

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サワーを日本一取り揃えている店

居酒屋好きとしていつも気になるのはやはりメニューの原価ですが、どのマスターに聞いても一番儲かるのはサワー系だと口を揃えます。たしかに安い焼酎を注いであとは市販の飲料と氷で割るだけなので原価なんて100円以下でしょう。そんな理由もあってか最近はどの店も「柚子サワー」やら「シークワサーサワー」などサワー系のメニューをやたら豊富に取り揃えておりますが、その中でも群を抜いた品揃えの店が都内某所にあるという有志からの匿名情報が届き、早速馳せ参じてきました。
 某駅から徒歩5分、店の近くまで行くと大通りに煌々と光る看板を発見しました。「日本一飲み物の数が多い店」とハッキリと記されており、看板にはぎっしりとサワーの種類が並んでいます。「すっぽんサワー」「かぼちゃサワー」「キムチサワー」など珍しいものばかりで、中には「上戸彩サワー」「榮倉奈々サワー」など人名のサワーまで存在し、その数なんと140にも及ぶようです。
 抜き足差し足で恐る恐る店の前まで辿り着くといきなり店内から激しく怒鳴るような男の声が聞こえてきました。引き返そうかと思いましたが勇気を振り絞りドアを開けると目の前に電話の受話器を握り締めた髭の男が仁王立ちしていました。
 男はこちらに気付き「あ、お客さん来たからもう切るよ」と言うとニッコリとえびす顔になり「好きなとこ座ってよ」と優しい口調で挨拶してきました。店内はテーブルが4つあり座席数は15前後。手前のテーブル2つにはそれぞれ客らしきオバサンが一人ずつ座っており何やら得体の知れないサワーをチビチビと飲んでいました。さすがサワーを日本一取り揃えている店だと感心して、よく見たら店主らしき髭の男はオバサンの真向かいに座りビールを飲んでおり、お前はビールを飲むんかいと思わずにはいられませんでした。
 壁一面には先ほどの看板には書き切れなかったであろうサワーのメニューが大量に並んでおり、まるで心霊スポットに貼られたお札のようでもありました。あまりの数に目移りしながら迷いつつも一つずつ頼んでいては数をこなせないと思い「綾瀬はるかサワーと上戸彩サワー、両方にしようかな」と言うと店主は「お兄さん、そうとう女好きだね」と不敵な笑みを浮かべて厨房へと消えて行きました。
 そしてすぐに焼酎の入ったジョッキ2つと爽健美茶オロナミンCをテーブルにドンと置きました。一瞬なんのことかわけがわからなかったのですが、よく考えると確かに爽健美茶綾瀬はるかオロナミンC上戸彩がそれぞれCMをやっていたので、そういうことかと合点がいきました。それぞれ割って飲んでみると、焼酎が薄いというかほとんど酒の味がせず、ただ爽健美茶オロナミンCをそのまま飲んでいるように感じました。これだけアルコールが薄いと何杯でもいけそうです。
 あっという間に飲み干し、メニューを眺めると「テツコサワー」なるものが目に入ったので「あれはどういうサワーなんですか?」と訊ねると店主は「あー、それは、えっとね…」と言って天井を見つめて長考に入ったあと「もうそういうのは答えないようにしてるの。頼んでからのお楽しみだからね」と早口で言われたので、黙ってそれを注文しました。テツコというから恐らく黒柳徹子だろう、でも黒柳徹子は飲料のCMなんかやってたっけと考えていると、再びジョッキと飲料缶を持って店主が現れました。
 その飲料缶には「TETSUKO」と記されており、鉄分補給と説明がなされています。どうやら「TETSUKO」という飲み物らしいのですが初めて見るものでした。ダイドーの自販機でも見たことがありません。焼酎で割って飲んでみましたが、少々酸っぱく感じるだけで、相変わらず焼酎の味は皆無です。
 ここは一旦仕切り直そうとトイレに行くとなんとトイレの個室の壁にはこれまた紙がビッシリと貼られており「惚れた女ぐらい守れよ」「前園、タクシー運転手を殴る蹴る」「インターネットは怖い」など人生の格言や時事ネタ、店主の日記らしきものが規則性なく細かい字で書かれていました。えらいもんで、さっきまで漏れそうだった尿意もピタリと止まりました。席に戻るとなぜかオバサンが謎のサワーを飲みながらカラオケで中森明菜を涙目になって熱唱していました。よく見ると脱衣カラオケというものらしく、点数に応じて画面の中の女が脱いでいくというシステムで、画面の女の乳首が見えると店主がバンザイするというカオスな状況になっていました。