とある温泉旅館に対するセクハラクレームだ。
『露天風呂に入っていたところで背後に物音が聞こえ(中略)柵ごしに男性らしき姿が見えたのです。ノゾキですね。柵のつくりが古めかしいからか、隙間があり、その後もおそらく数回覗かれたと思います』
『女湯ノゾキいた…うざい。あれって放置されてんの?』
温泉旅館のレビュー投稿サイトなどにこんな苦情が書き込まれている。まるで覗きの仕方を教えるかのような詳細な記述。これじゃあマネする男が出てくるぞ。
というわけでJR吾妻線「長野原草津口」駅からバスに揺られる
こと30分、「花敷温泉」降り場からさらに歩いて5分の場所にある旅館『S』へ。
この古めいた旅館、宿泊のほかにも日帰り入浴が可能なようだ。
受付のお兄さんに入浴料500円を支払って施設内に入場する。
男湯の更衣室から内湯を経て露天風呂へ。数人の男性客が浸かっている。
露天風呂の真下には川が流れており、川の対岸は一面の山だ。女湯とは柵を隔てただけなので、向こうの声がちょこちょこ聞こえてくる。
さて。あの書き込みからして覗きポイントは間違いなくココ、男湯と女湯の間に立つ柵だ。5メートルほど岩場を進めば行ける距離である。他のオトコに覗くそぶりは見え
ない。警戒してるのか、そもそもそんな目的で来ていないのか。
柵を見に行きたいところだが、男どもの視線もあるし、何と言ってもマジで女を覗くわけにはいかない。ここは全員がいなくなるのを待つしかないだろう。およそ30分後、男湯にはオレ一人が残り、女湯から声が聞こえなくなった。いまだ!
フルチンのままで岩場を歩き、柵へ。隙間を探す…必要はなかった。柵1本1本の間すべてに7、8センチほどのスキマがあるのだ。これ、丸見えじゃん。柵の役割になってないじゃん。目をこらす必要すらないし。
目の前に広がるのは女湯の露天風呂だ。人はいないけど、もしいれば女のカラダが鮮明に見えることは確実だ。いや〜。これはすごいよ。
と、後ろから声が聞こえた。
「今はいないでしょ」
思わず足を踏み外しそうになった。声の主はハダカで初老のおっちゃんだ。
「夕方になったら人が増えるから」
「そうなんですか。もしかして…」
「仲間だって。安心してよ」覗きの人か。良かった。おっちゃんは週に1回必ずここ
にやってきては覗きをしているらしい。
「この柵から見るんですよね?」
「そうねえ。あとはアッチもあるけどさ」
その指は女湯をさしている。どういうこと?
なんでも女湯の更衣室から露天風呂に向かうまでの通路にも柵があるそうだ。そこで覗いたほうが距離が近いため、イイのだとか。
え、それってつまり女湯のエリアに忍び込むってことじゃないか。
マジかよ。
「大丈夫よ。タイミングさえ間違えなきゃバレないから」
おっちゃんは得意げに語った。時間帯は夜の9時ぐらいがちょうどいい。なぜなら人の出入りがそこまで頻繁じゃないから。とにかくシレっと通路まで行って覗き、バレそうになったら間違えたフリをして出て行けばいい、と。勇気がいる行動だ。そこまでしてもあっちの柵から覗きたいとは、そんなに見やすいのだろうか。しかし忍び込んで確認するわけにはいかないしなぁ。
仕方なく風呂を出たところで思わぬ発見が。ここの湯、夜の10時に男女が入れ替わるのだ。これなら様子を見に行けるぞ。
そして夜。さっきまで女湯だった場所に堂々と入る。例の通路は…あった。
露天風呂の背後、約3メートル
の距離だ。同じように柵の間にスキマがある。それ、覗いてみよう。
……いいじゃん。中にはオッサンしかいないけど、さっきよりも断然近いので非常にイイ(と思われる)。もし女湯の時間帯だったら、とんでもない光景なんじゃないの?