会話のタネ!雑学トリビア

裏モノJAPAN監修・会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

ディズニーランド混雑しててもニコニコ笑顔

リア充という言葉が世間に浸透して久しいが、SNSの利用が当たり前になって以降その浸透率はさらに伸びたように思う。
やれ「仕事が忙しくて猫の手も借りたい」だの「ちょっくら恵比寿でランチしてきます」だの自分がいかに忙しく充実した日々を過ごしているかを逐一アピールしている連中のことである。俺はそういう連中が本当に苦手でこれまでの人生でも出来る限り接触を避けてきたし、休日は立ち呑み屋、競馬場、サウナの三大娯楽施設に拠点を置き、リア充とは真逆のいわゆる非リアの生活を送ってきた。
敢えてそれらリア充が集う現場に赴き、その実態を知った上でリア充たちに(あくまで遠巻きに)「くたばれ」と喝を入れていきたいと考える次第である。
東京ネズミーシーというリア充の甲子園とも言うべき難易度の高い場所へいきなり挑
戦することにした。ネズミーにはランドとシーが存在するが、シーのみアルコール販
売があるということもあり、この時期シーにはカップル系リア充が集まる傾向にあるという。そんなところに自分が一人で行って果たしてPTSDにならずに帰って来れるのか少々不安ではあったが、平日昼過ぎ、電車に乗って現場へと向かったのだった。
入場料はなんと大人6900円。上野の立ち飲み屋に何回通えるか思わず計算してしまったが、周りでは女子高生グループも平気でその高額チケットを購入している。高校生で7千円出せるなんてこいつら普段JKリフレかエロライブチャットをやってることは明らか。思い切りスケベな目で凝視してやることで、まずは溜飲を下げてやった。
入園すると目の前に巨大な地球儀のオブジェがあり、いきなり背後から「すみません、写真お願いします」と男女4人組にスマホを渡された。完全に「こいつなら(非リアだから)頼んでもいい」と判断されたようだ。わざと端っこのやつをフレームアウトさせて二度目の溜飲。奥では園内に汽車が走っていた。ふと見上げるとその汽車の窓から乗客がこちらに向かって手を振っている。一瞬知り合いか借金取りかと思って逃げようとしたが、どうやら園内では乗り物に乗ってる側が外の客に向かって手を振る習慣があるらしい。こいつら山手線の窓から俺を見かけても絶対に手を振るどころか目も合せないのにネズミーに来た途端に「貴方も今日だけは私の人生の登場人物の一人ですよ」と言わんばかりに手を振りやがってと怒りがこみ上げてくるも、引きつった笑顔で手を振り返して郷に入れば郷に従う形となった。とりあえず園内で一番人気だという、乗りながら的に矢を当てるアトラクションに向かうとなんと待ち時間170分。しかも乗車時間は5分だという。170分待って5分。完全に飴とムチのバランスが崩壊しているが、リア充たちは嬉しそうにニコニコしながら整列している。こいつらのこの笑顔が嘘くさい。人間170分も嬉しそうに並ぶなんてできるわけがない。亀戸の餃子屋ですらみんなイライラしながらどうにか20分並んでるのに、170分並んで笑顔。お前ら餃子屋の時はそんな顔しないだろと一人一人の肩を揺すっていきたい衝動に駆られたが、揺するわけにもいかずここは我慢。しょうがないから向かいのボートに乗船することにした。キャスト二人がボートを漕いで海を遊覧する園内で唯一の人力の乗り物である。
待ち時間40分を耐える間、前の20代カップルは男が彼女のケツをずっと撫でているし、後ろでは女2人組がやけにでかいボリュームで「海外、次どこ行くぅ?」と会話している。絶対に40分以内に結論出す気のない話題である。列は5メートル毎に折り返しと
なっており、様々なカップルとすれ違いざまに顔を合わせることになる。つまりお互いが連れている彼氏彼女がどんなもんなのか見られることになるのだが、普通なら耐えられないこの状況にもリア充たちは「ウチの相方はこんな感じです」とばかりにむしろ自慢の宝物を見せつけ合ってるようでもあった。何度か舌打ちをしてやることで攻撃したが聞こえたかどうかはわからず。ボートは一隻15人乗りで、カップル6組と女2人組と俺で編成された。最初に船長のキャストが「海に落ちないように頑張ります」と挨拶しただけでボート内は大爆笑に包まれる。ボートが進む中、各々が肩を寄せ合って写メ撮ったり腰に手を回したり、船長に至ってはイタリア語で陽気な歌を歌っている。今ここが日本で最もリア充な空間だと確信した瞬間だった。
さらに船長が「今日誕生日の人いますか」と訊ねると三十路前後の女が一人手を挙げた。ボート内に歓声があがりそこから全員で手拍子をしながらハッピーバースデーを合唱する地獄の流れへ。手を挙げた女は自分で名乗り出ておきながら「そんな滅相もないです」というジェスチャーを両手でしている。「何歳になったんですか」と他の客が訊ねると、三十路女が「永遠の17歳です」と舌を出して答えてまたボート内は大爆笑。こんな低レベルな笑いで爆笑するとは、もしこのボート内にオール巨人師匠が乗っていようもんなら激怒してくれただろうにと夢想にふけるも、自分が師匠にとってかわることはできず、リア充の乾いた笑いに押し切られる形に。
この時期に園内を男一人で歩いているのはかなり珍しいのか、半日だけで5組のカップルからカメラを依頼されて、挙句の果てにただベンチに座っているだけでキャストからは「何かお困りのことありますか」と訊かれる始末。トイレに逃げ込んでも頭にネズミの耳のカチューシャを付けている男が両脇で小便をしており、ここに非リアの居場所はないと痛感。くたばったのは自分のほうだと実感しつつ、尻尾を巻いて帰路へ着いたのであった。