会話のタネ!雑学トリビア

裏モノJAPAN監修・会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

霊視で有名な整体師にどっぷりはまる

整体師に除霊してもらい、供養までしっかりやったというのに、我が家に安穏な日々が訪れる気配はないらしい。ある日曜の朝のことだ。
オレと嫁は買い物のため車に乗りこんだ。が、駐車場から出てすぐに異変が。
「なあ真由美、なんか変な音聞こえないか?」
「え、なになに?本当だ」
シュー、シューと空気が漏れてるような音が、窓を開けるとさらに大きく聞こえる。
車からおりてタイヤを見るとなんだか見慣れないキズがある。なんだこりゃ。
「何コレ?空気漏れてるのかな」
さほど大きなキズではないが、これ以外に音が出る原因はなさそうだ。縁石にでも乗り上げてついたキズだろう。と思っていたら、持ち込んだ車屋から思わぬ言葉が返ってきた。
「あちゃー、やられましたね。イタズラですよ」
包丁かなにかで故意に切られた跡と見て間違いないそうだ。思い出すのは車上荒らしだ。同じ駐車場でタイヤを傷つけられたのはウチだけだった。誰が誰に恨まれてるん
だ…。そんな折、久しぶりにヨメのお父さん、良勝から飲みに誘われた。こういうときはたいてい、自慢話がはじまるわけで…。
「いやー、新しい女ができてさ、これがまたイイ女なんだよ」
居酒屋のテーブルで、義父は盛大に笑った。この人、義母の昌子とはだいぶ前に離婚し、その後は金持ち女のヒモだったがカネを返済しろと迫られて別れている。また性懲りもなく新しい女を見つけたのか。「すごいですね。でもどうやって出会うんですか?」
「ああ?グリーに決まってるだろ。グリーはオイシイぞ〜」
「ゲームとかで仲良くなって?」
「んな面倒なことするか。爆撃よ。住所が近いヤツに片っぱしから爆撃メールってヤツだな。ハハハ」
爆撃って。そんなの出会い系ヘビーユーザーしか使わない言葉なんですけど。新しい女は40ちょいで、バツ1同士、すぐに気があったそうだ。
「みっちゃんって言うんだけどさ、今度会わせてやるよ」
みっちゃんは気立てがいいだの、純粋な心の持ち主だの、さんざん聞かされて会はお開きになった。 それから数日後の深夜、布団に寝転ぶ真由美の携帯が鳴った。
「もしもし、お父さん?え、なに? 自殺未遂!?」
センセーショナルな言葉に布団から飛び起きた。自殺って誰が?
「わかった、すぐ行くから待っててね、はい」
「誰が自殺未遂だって?」
「お父さんの彼女…。病院に行きたいからすぐに公園まで車を
出してほしいって」彼女?みっちゃんのことか。話を聞くかぎり自殺するようなキャラとは思えなかったけど…。オレたち夫婦は二人で指定された公園に向かった。ベンチには義父と、その膝を枕に寝る女性がいた。苦しそうな顔で目を閉じている。 
救急病院にみっちゃんを連れて行き、オレたちは廊下で事情を聞いた。
「どういうことなんですか?」
「うん…公園を歩いてたらトイレに行きたいって言って。しばらく戻ってこないから見に行ったら倒れてたんだ」 
そばには空になった風邪薬のビンが転がっていたそうだ。一気に飲んだのだろう。
「でもなんで自殺なんか」
「アイツ、もともと精神的にア
レでさ。昔からよくあるらしいんだよ。それは聞いてたんだけどな」
そりゃグリーの爆撃に引っかかるような40才なんだから、マトモな人ではないだろう。幸い、彼女は深刻な容態ではないようだった。義父とみっちゃん、この関係には今後も目が離せそうにない。オレの母親も立て続けに骨にヒビが
悪いことは続くものだ。その数日後に今度はオレの母親から電話が入った。
『ヒロシ君、痛いよ、痛い…』
『は?どうした!?』
『ヒザが痛いの、転んで、たぶん折れてるよ…』
だったらオレなんかじゃなくて救急車を呼べよと助言し、オレと真由美は病院に向かった。母は左足に大げさなギブスをつけて、待合室に座っていた。松葉杖は必要だが、もう帰って問題ないらしい。
「どこで転んだの。折れてた?」
「折れてないけど、ヒビが入ったみたい。家の中で転んじゃってさ」
その2日後、再び母から電話が来た。
『痛い…ぜったい折れてるよ』
『ヒザが?』
『肩から倒れたの。動けないよ』
だから救急車呼べっつーの。診断結果は、またもや肩の骨にヒビ。風呂掃除をしてるときにツルっと滑って、肩から落ちたんだと。帰りの車中で真由美がこぼす。
「最近ホントによくないことばっかりだよね。もっとしっかり御祓いしないとダメかもなぁ」
連日のように病院に付き合わされてるからか、ずいぶん疲れた顔をしている。その晩、真由美は決心したように「よし」と言って、電話しはじめた。
「お父さん?週末空いてる?除霊してもらいに行こう。うん。彼女さんも一緒に」
さらに「あ、お義母さんですか?ケガ大丈夫ですか?よかったら週末、なにか憑いてないか見に行きましょうよ。私も一緒に行くので」
続いてオレにも
「やっぱりまだ除霊しきってないのよ。アタシの信心が足りないのかもしれないし。一緒に来てよね」
日曜日、計5人の乗った車で整体師の家に向かった。全員で5時間、それぞれが女の霊だの、動物の霊だのが憑いてると言われ、2万円(1人あたり4千円なので)を徴収された。真由美よ、ちょっと妄信しすぎてやいないかい?もう止めようよ。