会話のタネ!雑学トリビア

会話のネタに雑学や豆知識や無駄な知識を集めました

1時間以上は滞在を余儀なくされる喫茶店

一度入店したら最低1時間以上は滞在を余儀なくされる喫茶店が東京西部に存在するという怪奇情報が有志より舞い込み、その真意を探るべく早速現地へと足を伸ばしました。事前に下調べすると、営業時間は昼13時〜16時の3時間と短いらしく、余裕を持って早めに出発。JR中央線に揺られて辿り着いたのは郊外の某ターミナル駅。そこからさらに15分ほど歩くと豪邸が建ち並ぶ閑静な高級住宅街があり、その中にポツンと「だんご」を謳う一軒の古びた木造の喫茶店がその姿を現しました。何気なくその奇抜な外観を眺めていると、ちょうど近隣の住人らしきマダムが通りかかり、「それ以上は立ち入ってはならぬ」と言わんばかりの鬼気迫る形相でこちらを見つめていたので一抹の不安を覚えました。
 店名が刻まれた木製のドアを押すとキィ〜という不気味な音と共にドアが静かに開きます。壁には複数の石膏像となぜか原発関連の新聞の切り抜きが無数に貼りめぐらされており、この空間の不気味さを演出しています。店内に誰もいなかったので「すみません」と小さく発すると、右のドアがこれまたゆっくり開いたかと思うとやや小太りでオカッパの老婆が「あら? 電話の方?」と言いながらのっそりと現れました。電話なんてした覚えはなかったのですが適当に相槌を打ち、広いテーブル席に着席。メニュー表を眺めると珈琲4百円、団子セット7百円など値段は一般的な様子。とりあえず葡萄酒と団子セットを注文してみると老婆は注文を繰り返したのち「あとで1時間ほど喋っても大丈夫?」と、サラッととんでもない事を訊ねてきました。
 いきなりのことだったので思わず「もちろんです」とわけのわからない回答をしてしまったが最後、満面の笑みで「だったら名前と生年月日をココに書いてね。前世見てあげるからね」と紙と鉛筆を差し出してきました。しょうがないからそれに記入して渡すと「ちょっと待っててね」と奥の厨房へと軽い足取りで消えていきました。10分ほどして老婆は葡萄酒と団子セットを持って再び現れてテーブルの上に置いてくれたのですが、そのすぐ横になぜか福島第一原発の3号機が爆発した時の克明な写真も添えられており、一瞬にして食欲をゼロ近くまで下げられてしまいました。そして老婆はレジ横の棚に寄りかかりながら「1時間ぐらいね」と高らかに宣言したかと思うと、まるで浪曲師の如く啖呵を切って喋り出したのです。まずはいきなり自分の母が十数年前にこの店内で接客中に倒れたこと、その母は病院に長期入院したのちに死去して、それ以来その病院を訪れる度に幽霊を見るようになったこと。それを緩急交えて一方的に語りだすのです。とても団子を食べながら聞くような話ではないような気がしたのですが、
「幽霊は見たことある?」とか「どういう時に金縛りに遭う?」など時折質問を交えながら、オカルト系の話を中心にそこから30分間ノンストップです。これが浜村淳とか古今亭志ん生の喋りなら何時間でも聞いていられるのかもしれませんが、そこはやはり素人のおばちゃんであります。どれだけ聞いてもその話題にまったく興味が持てず「前世と来世」とか「幽霊と生まれ変わり」とかその手の話が延々と続き、眠気はピークを迎え、起きてますよアピールをしようとしてつい葡萄酒を飲んでしまいさらに瞼が重くなってしまいました。そのあと話題は突然「地震原発」に移り、「3・11の地震は政府
が起こした人工地震って知ってた?」と訊ねられました。その話題が30分ほど続き激しい頭痛に襲われて、自分もここで倒れるのではと危惧しました。さらに老婆は都内で放射能の数値が高い地域をいくつか発表。1位の東京ドーム周辺に対して「私は絶対に東京ドームには近づきません」と言ってたのですが、そもそも70前後の老婆が東京ドームにそんなに用事ないだろうと思わずにはいられませんでした。腕時計を何度も見たりスケジュール帳を開いたり閉じたりして帰りたいアピールをしてみたものの、彼女のマシンガントークを止めることは不可能で、ついには1時間オーバー。しょうがないから強引に話を遮るように「ところで私の前世は何でしょうか?」と訊ねると、老婆は目を細めながら手元の紙を眺めて「カリスマ性がある人」とだけ教えてくれました。意識朦朧とした中、会計を済ませて退店。結果的に休憩するどころか疲労は倍増、店を出たあとには思わず一休みできる喫茶店を探してしまったほどでありました。